とんま天狗は雲の上

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E=mc2のからくり☆

 アインシュタインの有名な数式「E=mc2」。これまで特殊相対性理論量子論などの初心者向け説明本は何冊も読んできたが、本書を読んで初めて、「場」についてわかったような気がした。「E=mc2」がそのまま「場」の理論というわけではないが、「E=mc2」が表す、エネルギーと質量が等価という意味は、エネルギーから物質が生まれ、物質が消えてエネルギーに変化するという意味であり、それを説明するには「場」の概念を理解しなくてはならない。

 いや「理解」という言葉を使うのは恐れ多いが、真空には物質はないけれど、「場」は存在し、「場のゆらぎ」からエネルギーが生まれる。そして理解しなくてはいけないのは、「場」自体はみることはできないということ。数式を解いていくと現れてくる。だが一方で、観測されるエネルギーがあり、計算されるエネルギーとの差をまだ現代物理学は説明できていない。「アインシュタインが生涯をかけて探求に取り組んだエネルギーEと質量mには、まだまだ深い謎が隠されている」(P249)。

 なるほど、面白い。そして山田克哉氏の説明は非常にわかりやすい。山田氏のブルーバックスには「量子力学のからくり」や「時空のからくり」など、「からくり」シリーズが多数刊行されている。これらも追々読んでいこう。「ブルーバックスを代表する人気著者の一人」というのも大納得だ。

 

 

○一般的には、エネルギーとは「物体に物理的、または化学的な変化を引き起こす源となるもの」を指します。エネルギーにはさまざまな形態があり、熱エネルギー、化学エネルギー・・・。/これら各形態は、他の形態に移り変わることができます。・・・さて・・・私たち人類にも、とうてい成しえないことがあります。それは、いかなる形態のエネルギーをも創り出すことができないということです。すなわち、エネルギーは決して「無」からは生じないのです。(P49)

○電場が現れても、真空空間が真空であることに変わりはありません。つまり、「電場そのものは物質ではない!」のです。・・・電場は、接触なしに電気力を伝えます。先ほど、「なんらかの媒質を通して力が伝わる」と説明し、その「なんらかの媒質」が「場」とよばれることを話しました。ここでの「媒質」は「真空」であり、「電場」は真空を埋め尽くしますが、真空は変わらず真空なのです。(P94)

○注意が必要なのは、電磁波は電子からできているのではない、ということです。では何から? 何からもできていないのです!/そして電磁波は、エネルギーをもっています。エネルギーそのものは物質ではなく、構成要素や色、形などはありませんが、「量」で表すことができます。電磁波のもつエネルギーも量で表すことができますが、物質ではないので電磁波の重さは正確にゼロです。(P109)

素粒子には内部構造が存在せず、空間的な広がりのない“点粒子”として扱われています。点の体積は正確にゼロです!・・・原子の構成要素の一つに「電子」があります。・・・原子は、電子、陽子、中性子の3種類の粒子から成り立っているわけですが、このうち電子は内部構造をもたず、素粒子そのものです。(P121)

○光子は、電磁波が量子化されたものです。電磁波は、電場と磁場の振動の伝播であり、どちらの場も質量をもっていないため、光子の質量も当然、ゼロになります。・・・興味深いのは、質量ゼロの光子が、あたかも質量をもつ粒子のようにもふるまえる事実です。これは、質量がゼロであっても、光子が「エネルギー」と「運動量」、さらには「スピン角運動量」をもつことからくる性質です。/“光子”とは、実に謎に満ちた粒子です。(P179)

○完全真空の定義は、空気分子をはじめとするその他いっさいの「質量をもつ物質粒子」が一つもない空間です。この、「物質粒子が一つもない」というところが重要なポイントで、すなわち、「物質でないもの」なら、真空に存在してもよいことになります。/実際、電磁波に代表される「力の場」は、完全真空中でも存在しています。・・・そして「力の場」はエネルギーをもっています。・・・真空中の場がもつ最低エネルギーは、「真空のエネルギー」ということになります。(P213)