とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

ウィニング・ストーリー

 「スカサカ!ライブ」の中の対談コーナーから書き起こしたインタビューと、対談後の筆者によるコメント(エッセイ)を並べた。対談相手は全部で12名。若い順では、昌子・大迫から反町監督まで。現役選手もいれば、監督・コーチもいる。プレー後や練習後、その意図を聴くこともあれば、これまでの半生をインタビューすることもある。

 それぞれが「○○から学ぶ『◇◇』」という章名がついている。例えば「中村憲剛から学ぶ『雑草の生き方』」。他に、「環境に適応する能力」「上達する流儀」「コンディショニング術」「抜群の吸収力」「失敗を生かす力」「聞く姿勢」・・・。誰から何を学んだのか。大迫からも学ぶ。昌子からも学ぶ。その姿勢がすばらしい。「岩政大樹から学ぶ『学ぶ姿勢』」。

 そして、総じて多く語られるのが「バランス」。聞いて、取捨選択できる己の強さ。これは昌子の章につけられた小見出しだが、大迫も阿部も内田も興梠も森重も中村憲剛も同じ。そしてそれで自分を見失わないバランス感覚。そして「人間の変わる力を信じて成長を促す名伯楽」は曺貴裁の章につけられた小見出しだが、指導者からも学ぶ姿勢は岩政のもの。

 どの章も面白かった。改めて文章が巧い人だなと感じた。岩政ほどの経験者がサッカーを言葉にできるということはすばらしい。

 

ウィニング・ストーリー 一流サッカー選手・指導者の自己実現術

ウィニング・ストーリー 一流サッカー選手・指導者の自己実現術

 

 

○「チームに有益でなければいけない」/そのために自分にできることとは?/それがボールを止める、蹴るに「こだわる」憲剛くんや、いかにして相手にマークされずにプレーするかを「考える」憲剛くんにつながった。彼の言葉は、才能だけで夢の在りかが決まっていかないことを教えてくれる。むしろ、「こだわる」ことや「考えること」こそが夢への道を切り開くキーであることを強烈に示している。(P030)

○うまくなりたい。勝ちたい。点を取りたい。この気持ちは、プロ選手なら誰しもが持っている。しかし、それを“どのように”となると、それを明確に持ち合わせている選手は少ない。プロに入るまでの成功体験は思いのほか足かせになることが多く、プロとそれ以前では“どのように”の部分を変えていく必要があるのに、なかなかそれを塗り替えられない選手が多い。/そういう面でサコは実に柔軟。かつ、芯は強固だ。これから年齢を重ねるとまた少しずつ姿を変え、そして周りを認めさせながら進化していくのだろう。・・・サコにはそれができる。(P079)

○生きていく道を、僕らは周りと照らし合わせて見定めていく。立ち位置の見つけ方は自分次第だ。それには、自分と向き合って、自分の感覚を研ぎ澄ませていくことだ。自分が行きたいところ。自分が生きる道。自分だからできること。自分なり。/正解はない。自分が自分なりの正解を決めるだけだ。それはつまるところ、バランス感覚になる。自分の“ど真ん中”からバランスが崩れたら瞬時に修正する。“ど真ん中”が変わっていくことだってある。/阿部勇樹。実にバランス感覚に優れた男。自分に対してもチームに対しても。(P097)

○「(試合を)客観的に見ながら試合に入り込む」・・・頭をフル回転させながら、同時に、チームのことも自分のことも少し冷静に見ている。攻撃と守備、冷静と情熱。的確なバランス上にいるかどうかがカギになる。/チームを見ながら、チームを見ている自分を見ている。自分を省みながら、チーム作りが落とし込まれた、目の前のチームに想いを込める。(P186)