とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

大学が男女差別をする時代

 世の中、次から次へと奇妙な事件が起きるものだ。東京医科大学の入学試験で女性を差別していた事件は、その理由として「女性の離職率が高い」ことを挙げていたが、どうしてそれが差別をする理由になるのか、最初に聞いたときにはその意味がさっぱりわからなかった。その後の報道を聞いているとどうやら、大学病院が卒業生を優先的に雇用せざるを得ないことから、就職後の女性医師の離職や福利厚生等への対応を懸念して、入学時点から女性比率を低くしておくことで女性医師の採用を減らしたいということらしい。しかしそれは就職採用時に何とかならないのだろうか。

 一般企業の採用においても、女性の離職率や産休・育休取得等による影響は当然考慮され、たぶん面接時等に調整がされているように思う。一方でこうした企業ごとの採用結果は、女性の採用に積極的な企業、消極的な企業といった形で情報が流れ、就職希望者も当然それを承知の上で就職活動に臨む。今回はそれを大学の入学試験で、しかも秘密裏に実施していた。

 教育が学習機会を提供する行為であると考えれば、けっしてあってはならない事件である。一方で最近は、教育とて将来の就職への一ステップという風潮があり、そう考えた前理事長が、病院経営の観点からは当然の行為として指示をしたのだろう。

 浪人生も同様に差別していたことについては、「医師国家試験の合格率が悪いから」という理由が挙げられている。「合格率の高い大学」→「優秀な学生が殺到」→「大学経営の安定」という理屈はわからないではないが、結局そこには「教育者として出来の悪い学生でも合格させます」といった教育能力に対する自己否定があるわけで、今回の事件の暴露により、東京医科大の教育機関としての信頼は大きく下落したと言わざるを得ない。

 フランス大使館がさっそく「ぜひフランスの大学へ留学を」というツイートをして話題になっているが、たぶん日本の優秀な女性は、留学だけでなく、就職時にも、男女差別のない海外企業を優先的に選択しているのではないだろうか。今回の事件でさらに女性の海外流出が進むのではないか。女性に不人気な国が栄えるとはとても思えない。

 日大アメフト部やボクシング協会の事件を見ていても、これまで日本をリードしてきた世代のやり方がいよいよ時代に合わなくなり、色々なところで軋みを起こしているようだ。日本もいつまでもこれまでの日本ではいられない。そんな時代の節目に立っているような気がする。