とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

ネットの時代のリアルショップ

 妻の退院に備えて、折り畳みベッドをニトリへ買いに行った。商品を選定し、カードを持ってカウンターへ行くと、「取り寄せになります」と言う。カードの枚数だけは現品があるのだと思っていたので、思わず「えっ!」。念のため、「ひょっとしてニトリのネットショップで取り寄せたら、安いとか、ありますか?」と聞いたが、特になし。高額商品のため送料は無料なので、「もう一度、店まで来て持って帰る」か、「宅配を待つか」の違いだけ。待つのも辛いので、取りに行くことにした。

 こうして今、わが家でその折り畳みベッドは大活躍しているのだが、リアルショップの意味を考えてしまった。要するに、ネットで買える商品の現品が展示してある場所ということ。世の中はどんどんこういう状況になっていくのかな。少し前にブルーレイレコーダーをエディオンへ見に行った時には、エディオンネットに同種の商品がより安く販売されており、念のため店員に聞いたら、「ネットで購入してください」と言われた。エディオンの場合は、リアルショップとネットショップは競合関係にあるようだった。単に販売員の雇用契約の問題だったかもしれない。ニトリの女性は時給のバイトで、エディオンは歩合制になっていたとか。

 それにしても、今後はニトリのように、リアルショップは単なる商品展示場になっていくのだろうか。もちろんニトリでも少額のものは持ち帰り販売をしている。リアルショップでなければ買えないもの、買いたいもの、またネットショップでは買えないものなどについて考えてみた。

 まず、生鮮食料品や惣菜などはやはりリアルショップで買いたい。ネットで注文するタイプの宅配便もあるが、「今日はあれを食べたい」「安い材料を利用して献立を決めたい」という時には、スーパーなどで現物と価格を見て購入することになる。

 衣料品や靴などは身体に合わせて購入する物だから、従来はリアルショップでなければ購入できなかったが、返品可とすることで、最近はネットでも購入できるようになりつつある。しかしやはり実物を見ないと心配だし、他のデザインとの比較もリアルショップの方が容易だ。ただし、「今日どうしても欲しい」といった商品ではないので、購入したいものが決まっていれば、ネットでも購入可能だ。これは書籍なども同様。

 逆に、「すぐに欲しい」というものはリアルショップに行かざるを得ない。先日は突然蛍光灯が消えて、あわてて電器店に走る経験をしたが、近くに電器店がなかったら、一晩暗いままで過ごしただろう。こうした、すぐに欲しい、どうしても欲しい、といった時間的に即応性が求められる商品については、やはりリアルショップでなければ対応できない。

 また、ニトリの持ち帰り品や100円ショップなどで売られている雑貨類は、急ぐわけではないが、送料を考えるとリアルショップで購入した方が安い。私はフリクションボールを愛用しているが、この替え芯を宅配で取り寄せようとすると、色種も少ないし、送料もバカにならない。最近は替え芯をバリエーション多く扱っている地元の書店をチェックして、そこを利用している。

 その他にも、ガソリンスタンドや理美容店、レストランなどリアルショップでなければならない業種はいろいろとある。たぶん、商業コンサルタントなどはその種のことを調査・分析し、提案などもされているだろうが、ここまでの考察を基に、素人なりにリアルショップとして残っていくものについて考えてみた。

 ざっと分類して、リアルショップを必要とする商品としては、「身体性」と「時間性」がキー概念として挙げられるのではないか。すなわち、①「身体性が高く、時間的にも即応を要求されるもの」。例えば食料品など。次に、②「身体性は高いが、時間的には猶予があるもの」。これは衣料品などだが、この種類の商品については、身体性=個別性がどこまで必要とされるかで差が出る。MLS程度しか区分のない下着などはネット購入も十分可能だ。そして、③「時間的にはすぐ必要だが、身体性はないもの」。例えば電球やインクなどの消耗品はこの部類。ただし最近はアマゾンでも早めの購入を勧める形でネット対応を図っている。

 最後に、④「身体性(個別性)もなく、時間的にも急がないもの」。これはネットで購入すれば足りるが、問題は送料だ。今、アマゾンでは購入金額2000円未満の場合は送料が必要となる。小口で少額の商品。例えば雑貨類はリアルショップでなければ購入できない。ただし問題は、こうした商品は同時に店舗設置するには採算性も低いということだ。文具店が消滅したのはそれが理由と言っていいだろう。そのためには、①「多品種を揃え、薄くても広い需要を集める」か、②そこだけにしかない希少性やそこでしか味わえないイベント性、「ヒトやコトによる個性的な店づくり」を進めるかのいずれしかない。後者はともかくとして、前者については公的な支援が必要かもしれない。

 以上、リアルショップの未来について素人ながらに考えてみた。実際、リアルショップは今後どういう存在になっていくのだろうか。もちろんこれは多くの商業関係者にとってこそ喫緊の課題だろうが、これまで建築・都市分野で仕事をしてきた人間の一人としては、今後の都市のあり方にも影響する問題だとも思っている。