とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

ウソばっかり!

 「竹内久美子」で検索すると「トンデモ本」と出てくる。なるほど確かにそんな気がする。多くの研究事例を引用しつつ、そこから自由に発展して、かなり強引に筆者の望むような結論に導いていく。全編、そんな内容の記述が並ぶ。さすがワニブックス。それにしても最初に、「女のあえぎ声」なんて性的な話が並ぶのは、「掴みはOK」的な意味だろうか。まともな読者はそこでまず「なんだこの本?」となるのだが、そういった話を好むエロ親父も少なからずいるのだろう。

 「マッサージをするとオキシトシンが分泌され、気持ちよくなる」という話もなるほどと思うのだが、当然、約束のようにセックスの話が出てきて、でもそれで終わってしまうのは、あまり発展できる話題が見つけられなかったということかな。「ガンに弱いA型が多いのは、子供が成長したらすぐに死ぬのが遺伝子を残す上で有利だから」というのは筆者の想像だけど、どこまで信じていいのやら。

 筆者は全ての事柄が動物行動学的に説明できると考えているように見えるが、実は世の中「わからないばかり」という現実、そして本当だろうかと疑うことこそが科学的な態度だという基本がわかっていないのではないか。生半可に動物行動学を齧って、そこで研究生活からリタイヤしてしまった、ちょっと賢いおばさん、という感じがする。いや女性蔑視ではなく、そういうおじさんも多いけど。

 ところで「ウソばっかり!」というタイトル。いったい何が「ウソばっかり」と言っているのか不明。ひょっとして本書に書かれていることが「ウソばっかり」という意味じゃないよね。もしそうなら、トンデモな内容をタイトルで全否定する、ある意味、すごく正直な本なのかもしれない。いったい何が本当で、何がウソ。「人間と遺伝子の本当の話」(副題)はいったいどこにあるの?

 

ウソばっかり!  - 人間と遺伝子の本当の話 -

ウソばっかり! - 人間と遺伝子の本当の話 -

 

 

○体は本来、完璧な左右対称に発達すべきなのですが、いろいろな事情によってなかなかそうはいきません。左右対称な発達を妨げる最たるものが、バクテリア、ウィルス、寄生虫などの病原体による病気です。/つまり、体が完璧なシンメトリーに近い人ほど、それらの病原体による病気にかかった経験が少ないか、かかったとしても軽傷ですんだと言えます。言い換えれば彼(彼女)は免疫力が高いのです。(P033)

○HLAは免疫の型。自己と他者を区別し、主に病原体と戦うための型です。よって子どもにはなるべく型のバリエーションをつける方が、これらの戦いにおいて有利になります。・・・そんな事情から、HLAの型があまり重複していない相手のにおいはよく感じられ、重複の多い相手のにおいは臭いと感じられるという感覚が女において進化したのです。・・・世の父親の皆さん、娘に嫌われたと嘆く必要はありません。それは娘さんがあなたの実の子であり、HLAの型が半分一致するからこそ起こる現象なのです。(P105)

○ボクシング、テコンドー、レスリング・・・。いずれも、赤か青のユニフォームや防具を身に着けて戦います。・・・4種を平均すると、赤の勝率が62%であるのに対して、青は38%。赤は青をはるかに凌ぐ勝率なのです。・・・考えられるのは、赤のユニフォームや防具を見た方、つまり青はビビる。そして赤を身に着けた方は、自分が強くなった気分になり、自信たっぷりに戦うのではないかということです。(P111)

○マッサージのときには、オキシトシンという、愛着を抱き、絆を築き、癒しや幸福感をもたらすホルモンが脳から分泌させ、特別な快感が得られるのです。(P150)

○ガンに弱く・・・元気のない印象のA型が、日本を始めとする多くの国で最も大きな勢力となっているのはなぜなのでしょう。・・・ガンとは本来中年以降に発症する病気。・・・自分の遺伝子のコピーは既に受け継がれているのであり、もはや存在して彼らの食い扶持を奪うよりも、いなくなった方が自分の遺伝子を残すという点で有利なのです。/そんなわけで・・・一見健康には不利な血液型であるA型が最も大きな勢力になっているのではないでしょうか。(P219)