とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

フットボール批評 issue23

 特集1は「イノベーションを可能にするチーム作りの新常識」。特集2は「ピッチレベルで読み解く真の戦術論」。そして特集3が「社長をアップデートせよ Jリーグ新時代に求められるリーダー像」。

 風間監督へのインタビュー記事「完成図を描かないチームの作り方」が興味深い。風間監督は常に先を見て、大きなパイに合わせたチーム作りをめざし、だからたとえ降格の危機にあっても決してブレないのだと言う。多くの選手が、指導者が、解説者が、ジャーナリストが、風間サッカーに心酔する。この記事にしても、やはり風間サッカーの魔力に魅入られている。だが、その本質はなかなか見えてこない。風間監督の技術論は本誌でもかつて語られたことがある。もちろんそれは誰でもできるものではない。それでもその、一部の者にしかできないサッカーを全員に要求する。それは選手にとっては魅力的かもしれない。指導者や元選手の解説者らにとっても魅力的かもしれない。それでも、それではいつまで経っても完成しない。常に穴が空いている。ファーガソン監督のサッカーは風間監督と同じだったのか。勝てるサッカーを実践したファーガソンと勝てない風間監督の違いはどこにあるのか。本記事を読んでもやはり理解できない。グランパス・サポーターとしては今年も勝てるサッカーは期待できないのかと不安になった。特集1のトビラに「負けても愛されるチーム」になれと書かれている。しかしそれは監督の役割なのか。

 連載「KFG蹴球“誌上”革命論」では、いつものようにロック総統がホンダロックSCへの愛を吠えている。特集3では、奈良クラブの中川新社長やアルビレックスの是永社長がチーム作りの未来を語り、ベルマーレの眞壁会長がチーム愛を訴えている。だがそれにもましてチーム愛を実感するのが「川口能活ポーツマス」で描かれるポーツマスの人々の声だ。そこにはたとえどんな監督であれ、どんなサッカーであれ、そんなことは関係なしに、チームで必ずしも活躍はしなかった一選手を今も思い出し、愛する人々がいる。どうしたらグランパスポーツマスのようになれるのか。

 Jリーグもいよいよ新しいシーズンが開幕しようとしている。私は何もアンチ風間監督なわけではない。そうではなく、風間監督に対して勝てるサッカーを目指してほしいと言っているのだ。「勝てなくても愛されればいい」とは監督が言う言葉ではない。ましてやサポーターとして言うべき言葉でもない。サポーターはあくまでチームの勝利を願い、監督はあくまでチームの勝利をめざすべきではないのか。「負けても愛されるチーム」のための設計図などない。それは結果として現れるものであり、結果は求めても得られるものではなく、また結果は移ろうものでもある。「負けても楽しいサッカー」ではなく、「勝てるサッカーは楽しい」のではないか。

 すべてのチームは必ず負ける。勝ち負けに関わらず、「愛されるチーム」になるためには、計画的に設計することなどできない、もっと多様で偶発的な要素があるのではないだろうか。

 

フットボール批評issue23

フットボール批評issue23

 

 

○エンターテイメントとしての魅力を追求しなければ/サッカーに未来はない。「勝つ」ことだけにこだわるチームは、/そういう意味では勝てなくなるだろう。/負けても愛されるチームは、勝たないとファンが増えないチームよりも/はるかに価値を持つ。目先の勝利だけでなく、/未来を見据えて魅力的なチームを作れるか。/問われるのは設計図である。(P5)

 ○多くのチームは最低限できることを基準にチームを作る。……完成形は決まっていて、そこへ向かっていく作業がチーム作りだ。しかし、風間さんはそれを「ぬり絵」だと言う。……一番大きな能力はそのまま使う。チームのサイズに合わせて縮めてしまうのではなく、最大の武器はフルサイズで装備する。……小さなパイに合わせていないので、パイは揃わず、全体ではそこかしこに隙間ができる。……ただ、大きいパイに全体が揃ってくると、チームとしてのサイズがあらかじめ決まっている場合よりも大きくできる。あえて枠を作らず、どこまでも大きくしていくという方針だ。(P9)

マンチェスター・ユナイテッドを28年も率いたファーガソン監督は、ユナイテッドを「バス」に喩えている。……途中のバス・ストップに「降格」と書いてあっても、あるいは「優勝」と書いてあっても、やはりバスは進む。バスは方向を変えない。そして、進み続ける……これこそがクラブサッカーの常態といっていいだろう。……降格の危機に直面していても、なぜあんなに「普通」だったのか。その答えのひとつが、これなのだと思う。降格しても、あるいは優勝しても、クラブは続く。風間監督のやることは変わらない。(P10)