とんま天狗は雲の上

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定年退職年齢って伸びている? 縮んでいる?

 先に投降した「対立の世紀」の中にアメリカの年金制度のことが書かれていた。不況が深刻だった1935年、ルーズベルト政権が年金制度を創設した。当時の平均寿命は約60歳だったが、定年退職の年齢は65歳に設定された。エッ! この記述には(注)もあって、そこには世界最初の年金制度はドイツ帝国のオットー・ビスマルクが1889年に創設しており、その時の定年退職年齢は70歳だという。再び、エッ!! ちなみに、定年退職年齢=年金支給年齢とは明記されていないが、文章の流れからはそのように読める。

 僕らは、年金支給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられた時にも不満を言い、さらに70歳に引き上げられようとしていることにも不満を漏らしている。一方で、年金支給開始年齢は平均寿命の推移と連動しており、寿命が伸びているのだから、受給開始年齢も引き上げられるのは仕方ないと思っていた。主要各国の年金制度については日本年金機構のHPに比較表が掲載されており、だいたい各国、65歳前後に揃っている。また、その表の注によれば、各国とも支給年齢が引き上げられる傾向にあるようだ。

 「日本の平均寿命の推移と年金支給開始年齢引き上げの推移をグラフにしてみたら:50代アラフィフから考えるゆとりある老後の資金戦略」に1947(昭和22)年以降の平均寿命と年金支給開始年齢のグラフが掲載されているが、1947年には平均寿命よりも年金支給年齢の方が高いことが確認できる。すぐに平均年齢の方が追い越して、それを追いかけるように、1954(昭和29)年には男性の支給開始年齢が60歳へ引き上げられ、さらに男性は1985(昭和60)年、女性は1994(平成6)年に65歳に引き上げられている(一部支給分について段階的引き上げがされており、実際はもっと複雑)。私が入社した時には既に定年年齢も60歳だったが、大先輩の回顧録を読むと、55歳で定年退職しており、そう言えばそういう時代もあったなと思い返した。

 現在の年金制度については、人口構成比や年金積立額等、さらには税金投入の是非などもあって、その制度設計にはいろいろな課題や問題があるのだろうが、世界で年金制度が創設された時には平均寿命よりも年金支給年齢の方が高かった。つまり、死ぬまで働くのが当然だったということに少し驚いた。もちろんそれだけ戦前の社会保障制度は貧弱だった、逆に言えば家族や共同体で支える仕組みがあったということだと思うが、一方で何事も現状が当たり前と思ってはならないとも思う。もしAIやロボットの導入で労働者が少なくても社会が回るのであれば、定年をもっと引き下げるということだって考えられなくはない。いや、本音は働かずに楽しく生きていけるならそれに越したことはない。