とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

60歳から現役

 10月22日の即位礼正殿の儀は正午からのTV放送で観た。平成の時はNHKだけの放送だったが、今回は民法各局も中継。余計な情報を挟むNHKなどに比べ、シンプルに淡々と中継をしていた中京テレビ(日本テレビ系列)で観ていた。各国の招待者が来場する場面では、民族色豊かな正装に目を奪われた。スペインのフェリペ6世国王夫妻やブータンワンチュク国王夫妻、イギリスはチャールズ皇太子ミャンマーアウンサンスーチー国家顧問。おお、香港は今話題の林鄭月娥行政長官ではないか。その他にもすばらしく着飾った人々がいて、でも全部は紹介してくれなかった。たぶん到着時間に定めはなく、放送局も誰が誰か把握できなかったのだとは思うが、少し残念だった。

 場面が切り替わると、十二単を着た女官、雛壇から降りてきたような装束の男性。まるで平安時代だ。高御座なる玉座のカーテンを開けると、徳仁天皇が控えていた。心持ち右に首が傾いでいるのは癖なのか。そして即位を宣明する。「上皇陛下のことを話すんだ」とか「『国民に寄り添いながら』と言ったぞ」とか「『憲法に則り、象徴としての務めを果たす』と言うんだ」とか、けっこう真面目に宣明のお言葉を聞いてしまった。

 「明仁天皇の時は『日本国憲法に則り』と言ったのに、今回は単に『憲法』と言ったことには改憲への含みがある」といった意見もあるが、「国民に寄り添い」と言われたことは評価したい。なんて書くと、「お前ごときが不敬だ」と言われそうだが、「国民あっての天皇であり皇室である」ことを、皇室の方々はよくよく理解されているということを感じる。

 一連の放送の後で、小中学校時代、徳仁天皇と同級生だったという人のインタビューが流された。その中の一人が「天皇はこれからが本番なので、がんばっていただきたい」ということを言われた。そうか! 徳仁天皇の年齢は59歳。来年2月には60歳になる。会社員であれば定年の年齢。インタビューを受けた方たちも相応の年齢に見えたが、彼らに比べると、高御座に鎮座した徳仁天皇は格段に若く見える。健康に配慮した食事や生活を送ってきたからだとは思うし、皇太子時代が楽だったというわけでもないだろうが、まさに「これからが本番」。60歳からいよいよ現役生活が始まる。

 もう定年を過ぎた私からすれば、「これから本番」と言われたら、「もうけっこう。勘弁して」と言いたくなる。しかし天皇は「これからが本番」。そう考えると、徳仁天皇自身、「天皇即位の宣明をする」ということの意味を誰よりも重く感じておられたのではないかと拝察する。「大変でしょうが、がんばってください」と言いたくなる。