とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

2019年、私の読んだ本ベスト10

 今年読んだ本は都市・建築関係の専門書も入れると91冊。このブログで紹介したのは72冊。週2冊は無理だけど、まずまず読んだんじゃないかな。正直、最近は読みたいと思うような本が減った。書店に行くと、ヘイト本やくだらないタレント本などが平置きされている。それを見るのも気分が悪いので、最近はあまり本屋にも行かない。

 

【第1位】宝島真藤順丈 講談社

 今年の1月に発表された直木賞受賞作品だが、年末になってようやく読了。一躍、第1位に選出したのは、読後感がまだ残っているせいもあるが、沖縄の戦後の歴史を戦果アギヤーの子どもたちの成長とともに描く内容はかなり衝撃的。本書で初めて知ったことも多かった。

 

【第2位】子どもの頃から哲学者(苫野一徳 大和書房)

 今年出会った中で、他の本も読みたいと思った筆者の一人。「愛」を真摯に追求していく姿勢にも好感を持ったが、次に読んだ本書がトンデモなく面白い。こちらでも真摯に自分のことを書き、哲学の面白さを伝える。

 

【第3位】幸福の増税論(井手英策 岩波新書

 もう一人、他の本を追い求めたのが、井手英策。何冊か読んだが、これが一番わかりやすい。2017年、民進党の政策提言に参加した井手氏だが、その後の民進党の分裂などで政治の世界からは遠のいている印象。山本太郎の消費税減税論の前に増税論は逆風か。しかし本書で論じた内容はよく理解できる。問題は政治の側にある。

 

【第4位】ディス・イズ・ア・デイ津村記久子 朝日新聞出版)

 楽しかった。今年のサッカー本大賞を受賞。J2で戦う仮想の22チームのサポーターの物語11編を収める。全てのチームにエンブレムやチームマスコットまで設定してある。サポーターにはそれぞれの事情があり、物語があり、それがサッカー観戦の歓びや落胆とつながっている。サッカーこそ人生、にしてしまっていいかは微妙だが、泣けるのはいいことだ。

 

【第5位】9条入門加藤典洋 創元社

 加藤典洋が亡くなった。本書が彼の絶筆になる。しかし、膨大な資料をきっちりと渉猟し、論理的に天皇ヒロヒトの責任に切り込む、その切れ味は全く衰えていない。彼の早過ぎる死は実に惜しいと言わねばならない。彼の仕事を継ぐ者は誰だろう。白井聡赤坂真理らに期待していいのだろうか。

 

【第6位】東欧サッカークロニクル(長束恭行 カンゼン)

 サッカー本大賞の優秀作品には選考されていたが、惜しくも大賞は逃した。クロアチアを中心に、ラトビアリトアニアウクライナジョージアコソボボスニア・ヘルツェゴビナなど東中欧の小国を訪れては、かの地のサッカー事情、サポーター事情を体当たり取材する。中でも、モルドバ沿ドニエストル共和国セルビアのヴォイヴォディナはすごい。サッカーを通じて、世界を知る。まさにサッカー本の醍醐味だ。

 

【第7位】監督の異常な愛情ひぐらしひなつ 内外出版社

 そして、サッカー本大賞読者賞を獲得したのが本書。トリニータの片野坂監督を始め、5人のサッカー監督を取り上げるが、中でも当時カマタマーレ北野誠監督の生き様には強く惹かれた。このため、今季はFC岐阜のゲームを何試合も観戦した。FC岐阜J3に降格し、北野監督も退任したが、今後の動向には注目せざるを得ない。本書には、ひぐらしひなつ氏のサッカー監督に対する異常な愛情が詰まっている。

 

【第8位】ミッテランの帽子(アントワーヌ・ローラン 新潮社)

 心和むミッテランの時代。80年代のフランスはこんなに懐かしくも幸せだったのだろうか。ミッテランの帽子に託し、人々の生活を描く。おしゃれで楽しい小説でした。

 

【第9位】氷獄海堂尊 KADOKAWA

 久しぶりに海堂尊が桜宮サーガに戻ってきた。田口医師も白鳥技官も健在だ。そして新たな登場人物、日高正義も登場した。今後、この弁護士を軸に、桜宮サーガの各作品にも新しい光が当てられ、新しい展開が始まる、かもしれない。次も楽しみにしたい。

 

【第10位】はしっこで、馬といる(河田桟 カディブックス)

 カディブックスは河田桟さんが立ち上げた、自身と与那国島に生きる馬たちのための出版社。河田さんの馬に対する強い愛情が伝わってくる。「くらやみに、馬といる」が最近発行された。こちらも読んでみたい。

 

【選外】

 他に☆を付けたのは11冊。このうち、苫野一徳の「愛」、井手英策の「富山は日本のスウェーデン」「経済の時代の終焉」は著者が重複しているので、ランク外。でもそれだけ今年はこの二人に注目していたということ。他には、「観光亡国論」(アレックス・カー、清野由美 中公新書ラクレ)と「一神教と戦争」橋爪大三郎中田考 集英社新書)に注目。大澤真幸「社会学史」は一家に一冊、書棚に入れておきたい好著だ。