とんま天狗は雲の上

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「ペスト」とは?

 新型肺炎はますます感染が広がり、Jリーグを始めとして多くのイベントが中止になる事態となっている。それにしては政府の対応はあまりに民間任せ、国民任せで酷いと思う。それはそれとして、先日、職場の者が「施設環境に関する研修に行ってきた」として報告の回覧があった。ふと見ると、講師に日本ペストコントロール協会の肩書がある。ンンッ? ペスト?! ペストと言えば、かつてヨーロッパで黒死病と呼ばれ、大流行があったが、現在の日本ではほぼ撲滅された病気だと思っていた。

 未だにペスト対策のための協会があるのかと驚いて調べてみると、やはり1927年以降、国内の感染例はなく、1930年以降、ペスト患者の報告もないという。ならば何故のペストコントロール協会か?と疑問に思ったが、ペストには病名としての「ペスト」以外に、「ゴキブリなどの害虫や、ネズミなどの害獣、カビなどの微生物といった、人の健康や経済活動等に悪影響を及ぼす原因となる有害生物全般を指す」とペストコントロール協会の用語解説に書かれている。ちなみに、ペストコントロール協会の沿革を見ると、1968年に日本害虫防除連合会として発足し、1972年に社団法人日本ペストコントロール協会として設立されている。日本でのペストの流行は明治末期のことだから、直接、協会の名称とは関係がなさそうだ。アルベール・カミュの「ペスト」が日本で最初に発行されたのが1950年であり、カミュノーベル文学賞を受賞したのが1957年なので、こちらの影響が大きいのかもしれない。

 ちなみに、ペスト(Pest)はドイツ語で、英語ではPlagueと書くが、大災厄とか伝染病、害虫などの異常発生などを意味し、有害生物全般を指すとは書かれていない。すなわち、日本独自の用例かもしれない。誰が「ペスト」を「有害生物」の意味として定義し、使い始めたのかわからないが、そのことを知っている人は業界人以外にはほとんどいないのではないか。団体名の改称も検討した方がいいのではないか。