とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

サッカー批評 issue55

 「あなたの街からJリーグが消える」と表紙に大きく書かれていて、ちょっとびっくりした。えっ、まさか。もちろんこれは、今季から適用になったクラブライセンス制度のことを言っているわけだが、本制度の適用によるライセンス取り上げという事態だけでなく、Jを目指さないクラブのあり方についても紹介している。それが横河武蔵野FC。また、サガン鳥栖水戸ホーリーホックのクラブ運営も興味深い。特に、サガン鳥栖が実質倒産状態だったとは知らなかった。ある意味、大分トリニータよりも厳しい状況から、「サッカーの夢」を売ることで甦った。
 海外事例としては、スウェーデンの移民クラブFCローセンゴードが紹介されている。何とこのクラブ、あのイブラヒモビッチが少年時代に所属していたと言う。他に、阪口夢穂の記事「サッカーと仕事の流儀」も興味深い。女子サッカーの世界はなでしこリーグですらほとんどの選手がアマチュアだ。
 連載記事では、「西村卓朗を巡る物語」が最終回を迎えた。西村選手が引退を決めた。今年からレッズのスクールコーチに就任したと言う。また、Hard After Hardの鈴木隆行の後編も鈴木らしさがよく出ていて興味深い。今号は「サッカー批評」ならではの特集と内容で久し振りに面白かった。

サッカー批評(55) (双葉社スーパームック)

サッカー批評(55) (双葉社スーパームック)

グローバル化は、善でも悪でもなく、適応すべきものだと僕は思っています。グローバル化の波の中、どうやってJリーグの価値を高めていくのかというのは、決め過ぎるといけない。・・・2年後、ヨーロッパがダメになってアジアが一気に世界経済の中心になるのか、あるいはゆっくり進むのか、もしかしたら何も起こらないかもしれない。ただ(どんな状況になっても)適応しないといけない。・・・結局、強い者が生き残るのではなく、適応した者が生き残るわけです。(P038)
●「倒産したようなクラブが日本一を目ざすなんて、そんな大胆なことを考えられるのは限られています。自分で苦労して企業を成功させた起業家でないとこういう気持ちはわからない」そう思った井川が声を掛けたのは、・・・ベンチャー企業のトップだった。・・・「夢を買ってもらうようなものです。・・・」/じゃあ、だまされたと思ってやってみるよ、とみんなから返事が来た。7億円の目処が立った。(P049)
●最近つくづく思うのは、自分が精一杯のプレーをしても、それだけでうまくいく世界ではないんだなということ。手の届かない領域があるのを強く感じる」・・・「いつの日か、サッカー協会の会長をカズさんにやってもらいたいです。・・・選手のため、サポーターのために仕事をしてほしい。(P061)
●Jに上がることで地域と距離ができるなら、JFLにいてもそれが地域にとってあるべき姿ならそのままでもいいじゃないかと。また上がって落ちて、それも含めて百年構想だと思うんですね。(P081)
●趣味の共同体というのは・・・何もないところに埋め込める、離脱可能性が高い、この二つが大きなメリットなんですね。その分、以前の中間共同体に比べると結びつきは弱い。ただ、そのくらいのライトなコミュニティの方が今の社会では受け入れられやすいんじゃないかと思うわけです。・・・趣味縁をメインの中間共同体にする社会は、かなりリベラルでいいものなんじゃないかって気がするんですよ。(P084)