とんま天狗は雲の上

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日本を追い込む5つの罠

 日本を追い込む5つの罠として、筆者は、(1)TPP、(2)財政緊縮、(3)原子力村に代表される非公式権力、(4)国家なき対米隷属、(5)権力への無関心、を挙げる。いずれも現政府が、前自民党政権から引き継ぎ、官僚と手を携え突き進めている宿痾である。
 「TPP」については、その陰にアメリカの帝国主義的な思惑を指摘する。TPPは経済協定ではなく、アメリカが協定締結国を自由に支配するための政治協定である。また財政緊縮という罠は、最近のギリシャやスペインの経済的混乱を見れば足りる。これらはけっしてギリシャ人たちが怠慢で野放図だったから起きたのではなく、銀行家の不正を隠し、強欲を満たすために犠牲となったのだ。
 原子力村については言うまでもない。対米隷属も従来から筆者が主張していることである。そして日本には国家としての主権がない。そのことを漫然と見逃し、マスメディアのプロパガンダに易々と乗せられてきた。
 それでも大飯原発の再稼働と消費税増税を巡って、官邸前デモに大勢の人が集まったように、たとえそれが日本のマスコミで全く報道されずとも、国民の心に巣くった権力層への不信はじわじわと広がり、その力を増しているように見える。
 蟻地獄のような罠ではあるが、そこから抜け出すために、蜘蛛の糸を待つのではなく、自らの手足でもがくしかない。少なくとも罠であることを自覚しなければもがくことさえあり得ない。

日本を追い込む5つの罠 (角川oneテーマ)

日本を追い込む5つの罠 (角川oneテーマ)

●アメリカは帝国主義的な目的の実現をめざしている。当然、TPPに参加した国々が対等な立場で会談するなどということは想定されてはいない。なぜなら多国間協定の場合、そこには支配的な地位を占める国が存在し、大抵、その国が利益の大半を奪ってしまうからである。・・・つまりTPPとは政治協定に他ならないのである!(P26)
●アメリカと同様、ヨーロッパの銀行も、従来のように銀行部門のふところが豊かでなければ(ギャンブルのおかげでそうなった)、経済システムは崩壊するというプロバガンダを吹き込んで、政治エリートたちを説得した。・・・プロバガンダは広まったが、・・・やがて不正融資をした銀行の責任は問われなくなっていった。逆にあざけりの対象となったのは、ギリシャポルトガルアイルランド、スペイン、イタリアといった、彼らに無理やり融資を押しつけられた国々であった。/ヨーロッパの人々の脳裏で、本来、銀行危機だったものが、こうして一気に国債危機にすり替わったのである。(P88)
●日本がひとつの文化単位という、歴史的アイデンティティのはっきりした力強い国であることは疑いないが、国家としては脆弱である。・・・国家は主権を有する点で、植民地や保護国とは本質的に異なる。・・・そしてざっくばらんに言って、主権こそが日本の問題なのである。(P158)
イデオロギーは不確かな状況に対して持ち出される呪術のような働きをなす。だからこそヨーロッパでは、それまで社会・政治秩序を維持してきた宗教信仰が衰退すると、非常に強力なイデオロギーがもてはやされるようになった。/確たる信頼の置ける手法を用い、経済を科学的に体型づけるかに見せかける新自由主義イデオロギーである。(P212)