とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

サッカー批評(58)

 特集は「日本人、監督論」。五輪で好成績を収めた佐々木則夫関塚隆に加え、西野朗手倉森誠風間八宏岡田武史サガン鳥栖の監督のユン・ジョンファン城福浩、栃木FCの松田宏、そして元横浜FC監督の岸野靖之。五輪では韓国五輪代表監督のホン・ミョンボも。さらに鹿島アントラーズGM鈴木満にはアントラーズの監督観について聞く。
 それぞれ面白いが、監督という仕事は結局チームのマネジメントなので、ビジネス誌の課長論を読んでいる気がしないでもない。
 それでそれ以外の記事が新鮮に映る。木村元彦の「東京教育大を救って北朝鮮へ帰った伝説の男、李東揆を追って」や、香川や岩渕の骨折の原因を探る「なぜ日本のサッカー選手にジョーンズ骨折が多発するのか?」が興味深い。ちなみにジョーンズ骨折とは小指の根元の疲労骨折のことである。これが日本人選手に多いと言う。
 そして毎号、引退選手の動向などを追う「Hard After Hard」は藤田俊哉にインタビュー。藤田のウィットあふれる対応にインテリジェンスを感じる。いつかオランダでの指導者修業を終え、宮本恒靖ともに日本サッカー界を支える時が来ることを心待ちにしたい。

●銅メダルとなると、まず確実に兵役免除。うれしいのですが、やっぱり後ろめたさがあるんですよ。・・・全員ホンネは軍には行きたくないけれど、愛国心はあると見せないといけない。国威発揚にこれだけ貢献したんだよ、というアピールをしたいのはなんとなくわかります。(P19)
●佐々木が就任以来、一貫して行ってきたことは、・・・選手および関係者の力を認め、引き出すためのマネジメントである。佐々木が「サッカーを教える」「選手を育てる」のではなく、選手たち自身が「サッカーを創る」「育つ」環境を整えた・・・。最後にもう一つ、佐々木の言葉を引く。「肩書きは、選手を守るためにある。選手に言うことを聞かせるためにあるのではない。」(P031)
●日本のプロスポーツの雛形となったプロ野球は、内務官僚で原発の輸入者だった正力松太郎が、人々に政治的関心を持たせないようにと導入したものである。つまりプロ野球は統治のための道具に過ぎなかった。プロ野球選手は、彼らの駒に過ぎなかったのだ。いま、サッカーが同じ役割を果たしていると言ったら、多くの人は反論するだろうか。(P113)
●でも、さんまはダメだ。あいつは日本のサッカー中継から追放しないといけない。・・・せめてスタジアムのゲストには、最低限選手とゲームに対するリスペクトを持っている人間をキャスティングしてほしい。(P116)