とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

サッカー批評 62

 特集は「ワンランク上のJリーグ観戦術」。表紙に大きく書かれた「拝啓、Jリーグを嫌いなあなたへ。そのサッカーの見方、間違っていませんか?」というコピーに強い違和感を感じた。冒頭の森編集長の趣旨説明も、海外サッカーしか見ない人、代表のゲームしか見ない人など観戦者の偏りを指摘するのだが、そんな人は実際はごく少数でしょ。「サッカーニュースの深層」で渋谷交差点でのハイタッチ・フーリガンを追うが、代表が負けてもハイタッチをして愉しむ姿は十分理解できるし、評論家による「Jリーグを10倍楽しく見る方法」も全く楽しくない。サッカーの楽しみ方は指南してもらうものじゃないし、型に嵌めるものでもない。女子サポーター同士の座談会は興味深いが、性差別的な意識がないかと自省してしまった。
 加えて、「Jクラブ社長に聞く 20歳のJリーグに”夢”はあるか?」では、26クラブの社長のアンケート回答をただ並べてあるのだが、これを全文読む読者ってどれくらいいるんだろう。一字一句改ざん・修正できないということなのだろうが、もう少し読みやすい編集をしてもらわないと、さすがに辛い。
 ということで前半はつまらないなあと思いながら読んでいたが、「川崎フロンターレGMの肖像 福家三男 去り際の美学」が面白かった。組織論を語る福家さんの言動は大変好感が持てる。「Jリーグ創造記 森健児 木之本興三の回想」も興味深い。Jリーグはけっして川淵三郎一人が作ったのではなく、彼らの強い意志がそれぞれの役割を担ってJリーグ創設につながっていった。そして「イングランドJリーグの楽しみ方」では日本のサッカーメディアの在り方を批判し、それがサッカーファンから本当のサッカーの楽しみを奪っていると指摘する。そのとおりだ。
 さらに、ガンバ・サポーターにロアッソのマスコットの首が抜き取られた「ロアッソくん事件」からマスコットを考える記事、テレビメディアのJリーグの扱い方を追った記事など、興味深い記事が続く。連載記事もいつもながらの水準を保っている。
 最初ちょろちょろ中パッパ、終わりよければすべて良し、といった感のある第62号だった。次号は「サッカー監督の正しい叩き方(仮)」。うーん、タイトルが微妙だな。特集タイトルはもっと素直につければいいのに、と思う。

●「日本のサッカーの力を底上げするのを焦る必要はないと思うんです。日本におけるサッカーも、北海道におけるサッカーも、サッカーが一番になる日が必ず来るから。なぜなら、それがサッカーだからですよ。それぞれがそれぞれの場所でサッカーの価値を高める努力を続けていくことが前提ですが、まったく慌てる必要はないと僕は思います。」(P055)
●「基本的に組織論は原理原則がありません。・・・ただし、大事なのは枝葉ではなく幹だということ。きれいな花をいくつも咲かせるためには、下から水や栄養を吸い上げられる太い幹が必要になる。・・・目立たない仕事を一生懸命やっている人にも正当な評価を与える。そうして支えの部分を大きくしていけば、組織は向上するんです。(P065)
●筆者による第一の提案は、メディア報道についてだ。報道規制を緩め、試合のあらゆる側面について、オープンな議論が推奨されるべきだ。/イングランドには「すべての広告が良い広告だ」ということわざがある。人々が君について言っていることが重要なのではなく、君について話しているということが重要なのだ。Jリーグはネガティブな報道を抑え込むことにより、いわば自分の足に銃を撃ち込んでいる。(P075)