とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

欧州サッカー批評08

 第一特集は「近未来 ボランチ論」。冒頭の編集長によるコラムには、「ボランチ」という名称は、巷間言われるポルトガル語の「舵取り」ではなく、カルロス・マルティン・ボランチという一人のアルゼンチン人の名前だと書かれている。知らなかった。そして続く記事、「国別で見る ボランチの役割とその呼び方」では、同じポジションがピボーテ(スペイン)、レジスタ(イタリア)、アンカー(イングランド)など様々な言葉で呼ばれることを紹介している。加えてブラジルでは、より攻撃的なボランチを「セグンド・ボランチ」、守備的なボランチを「プリメイロ・ボランチ」。同様にドイツでは「アッハター」と「ゼクサー」と呼び分ける。イタリアでもより守備的に相手の攻撃をつぶす選手は「インコントリスタ」と呼ぶ。
 また、レジスタの代表としてのピルロ、典型的なインコントリスタとしてのガットゥーゾのインタビューも掲載。西部謙司の「なぜ、近代の戦術はハーフウェイラインで主導権を争うのか」も面白い。さらにヨーロッパの新シーズンに向けて、ペップ・グアルディオラバイエルンの戦術、マンチェスター・シティとユナイテッドにおけるボランチ比較、ナイマールとメッシはバルセロナ共存できるかなど興味深い記事も多い。
 第二特集は「フットボールの闇」。シンガポール在住のダン・タンに支配される八百長の世界、マフィアに牛耳られるクロアチアサッカー、W杯開催権がカネで買われたと指摘するカタールゲートなどが取り上げられる。これらはそれぞれが単発な記事になっているが、もっと深く取材されるといいだろう。
 そして驚いたのが、イルハンの現在を伝える「As Time Goes By あの選手は今どこで何を?」。日韓W杯で活躍し、その後ヴィッセルにも所属したあのイルハンがなんと今はフィギュア・ペアで冬季五輪トルコ代表を目指しているという。ウソだろ! いや本当らしい。
 欧州サッカー批評は年2回発行だが、隔月のサッカー批評よりも内容が濃い。いや興味深いテーマになるということか。半年後はどんなテーマで発行するのか。今シーズンのヨーロッパ・リーグは例年にも増して見所が多いだけ、半年後への期待も高い。サッカーともども楽しみにしよう。

●1940年代のブラジルでひとつの戦術変革があった。・・・フラメンゴのフラヴィオ・コスタ監督はそれまで”神聖化”されていたWMを少しいじり、3-4-3とし、「4」を平行四辺形にしたと言う。下がるのは右下。中盤の最も深い位置で、DFラインの前でプレーした。ここに置かれた選手はたちまち攻守のキーマンとなり、あるサッカー用語が生まれた。「ボランチ」だ。・・・「このときの選手名がボランチの由来」であることがわかる。選手の名前はカルロス・マルティン・ボランチ。(P008)
●両足で長短のパスを正確に蹴り、どこへフィードすべきかを瞬時に判断する目を持ち、難しいボールも難なくさばくボールコントロール、必要であればドリブルで相手をかわすスキルを有する、従来の守備能力に加えて攻撃力を兼ね備えたGKは、近い将来当たり前の存在になっていくのだろう。(P050)
●いつも行動を共にするシュケル会長は、このほど協会公式ホームページに掲載したインタビューで「自分は操り人形じゃない」と断りを入れながらもマミッチに対する賞賛の言葉を並べた。・・・かつてはその左脚で多くのサッカーファンを魅了させたストライカーも、すっかり盲目になってしまった。操り人形じゃないのならば、彼こそマミッチの「奴隷」と言っていいだろう。(P095)