とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

サッカー批評(69)

 特集は「敗因」。「日本はなぜ勝てなかったのか」。W杯での日本敗退が決まってまだわずかな時間しか経っていないが、よくこれだけの内容の記事を集めてこれたものだと、まずは感心する。これってひょっとして、W杯前から多くのサッカー関係者が、既に日本敗退を予想していたっということ? 「自分たちのサッカー」にこそ問題があったと指摘するもの。精神面の弱さを指摘するもの。教育過程における育成という日本独自の特長を今一度呼び起こすよう求めるものなど、その視点は様々だ。
 中でも目を惹いたのが、岡野俊一郎金子勝彦のベテランお二人による特別対談での岡野氏の指摘だ。元JFA会長の岡野氏は、明確にコンディショニングとチームマネジメントの失敗を指摘しているが、結局、ザッケローニ監督にすべてを任せ過ぎて、監督の器が表現された結果となったと考えるのが一番妥当なんだと思う。今でも多くの評論家が、今回の日本のチームはこれまでで最も強かったという趣旨のことを言う。確かにそうだと私も思う。しかし、他国も日本以上に進化していたし、日本はザッケローニ監督の元、2年くらい前から進化がストップしてしまったというのは、多くの評論家も指摘していることだ。
 さて、明確なテーマで掘り下げた今号は面白い。その他にも、FIFAに加盟を許されない地域などの代表チームが参加するワールド・フットボール・カップの紹介や、イスラエル・サッカーの現状報告、洪水被害に苦しめられるセルビアなどバルカン半島の諸国の惨状、専門誌「イレブン」の元編集長へのインタビューなど興味深い記事も多い。
 そして最後に「僕らはへなちょこフーリガン」。敗戦の悔しさを嗤いにしてまた明るくサッカーを見ていこう。別に日本代表だけが日本のサッカーじゃない。次はなでしこがいる? ああ、そうなんだけど、なでしこもさすがにそろそろやばそうだ。次は本誌でなでしこの特集を読んでみたい。

サッカー批評(69) (双葉社スーパームック)

サッカー批評(69) (双葉社スーパームック)

●実は、日本が強豪相手に「自分たちのサッカー」を実現したときは毎回4失点している。・・・いかに良い攻撃ができたとしても、4失点ではゲームプランが成り立たない。・・・「自分たちのサッカー」は、W杯での勝利を保証するものではなく、むしろ必敗のシナリオだったとさえいえるのかもしれない。(P015)
●準備段階で犯した最大のミスが、指宿で愚かなトレーニングキャンプを行ったこと。選手たちが日本を発つ時の表情を見たら、これはダメだと思った。・・・今大会の敗因はコンディショニングとチームマネジメントの失敗。選手の力を引き出せなかったザッケローニ監督以下のコーチングスタッフのミスであり、大元をたどっていけば日本サッカー協会の責任として帰結されるわけです。(P041)
●選考理由も指示も作戦もシステムの変更も全て言葉で伝えますね。つまり言葉ひとつで伸ばしてやれるし、逆に伸びる選手をストップさせてしまうこともある。・・・言葉の使い方で勝てる勝負を逃がしてしまう。言葉をいつかけるか、どの語調で言うかとか、ここはもう話しかけずに様子を見た方がいいとかね。言葉が一番難しいんです。だから私はずっと日本人が日本のチームを見るのがベストだと言って来ました。(P087)
●ありがたいことにこの場所で僕は監督なんです。チームを預けられている。フロントというフォワードがいて、レストランというミッドフィルダーがいて、厨房というディフェンダーがいる。もちろん、清掃というのもある。それがチームで、補い合ったり、生かしあったりする。それをコーディネートするのが、私の役割です。・・・よくJの後輩に「俊三さん、監督やらないんですか」と言われますけど「ここで監督やってるからね」と。(P117)
●いや、今こそ俺たちへなちょこも、そんなに簡単に前を向かず、もう一度足元を見つめ直し、切り換えるべきなのは「気持ち」なんぞという薄っぺらな次元のものではないことを、ちゃんと思い知るべき時なんじゃないのか。たとえボケをかますにしても、せめてもっと「ワクに飛ぶ」ボケをかますべきだろう。ため息しか出ないようなボケをいくらフカしても、気が滅入るばかりだ。(P118)