とんま天狗は雲の上

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地球はもう温暖化していない

 筆者の深井氏は物理学者である。気候学が専門ではないが、「気候学者・気象学者の大多数がCO2温暖化ムラに囲い込まれてしまった現在」(P6)、深井氏のような存在は貴重である。科学的見地から地球温暖化問題に対して客観的かつ冷静に持論を展開する。その内容には非常に説得力があると感じる。深井氏が本書で展開する主張は、基本的には以下の引用で表現されている。 

①気候変動の原因はCO2だけではなく、太陽活動が重要である。これは自然現象であるから制御はできない。

②CO2による温暖化と太陽活動の変化による寒冷化は打ち消しあい、今後の気温は50~100年にわたってほぼ横ばいか寒冷化する可能性が高い。

③大気中のCO2増加そのものはなんらの害ももたらさない。

 これは当然のこと、政策の大幅な変更を求めることになる。その骨子は次の2項目にまとめられる。

①大気中のCO2濃度を問題にするのではなく、炭素資源の浪費を防ぐエネルギー政策を追求すべきである。

②温暖化防止一辺倒の政策は改めるべきである。   (P175)

 

  本書では、「第1章 CO2温暖化論が破綻するまで」でIPCCが繰り広げているCO2温暖化論(CO2が地球温暖化の最大かつほぼ唯一の主要因である)を過去の気温変動などから批判する。そして「第2章 太陽が主役、新しい気候変動の科学」で、太陽活動と気候との関係について、太陽の構造、宇宙船の振る舞い、銀河系の関わり、雲の働きなど様々な視点からの研究を紹介し、密接な関わりについて説明していく。

 深井氏はCO2が気温の上昇をもたらしてはいない、とは言っていない。CO2による気温上昇効果を認めた上で、太陽活動による気温変動の影響も大きいと主張している。そしてIPCCが展開するCO2温暖化論が政治・経済の道具とされ、それにより日本が大きな損失を被っていることを危惧するのである。まったくマトモな見解のように思う。

 なぜ日本でこのような主張が通らないのか。既に米国やEU圏では、地球温暖化を脅威と感じる人の割合は大きく低下していると言う。何兆円にも達する多大な国民負担をかけて取り組むべき政策とは思われない。こうした状況になっているのにはマスメディアの罪も大きいし、何より裏で利権の臭いがする。地球温暖化について今一度、冷静で合理的な議論をすべき時が来ていると思う。

 

 

 

○太古からの気候変動を先入観なしに眺めてみると、それは太陽活動に支配されてきたに違いないと考えられるのだ。・・・今後、太陽活動は数十年から100年にわたって弱まり、たびたび飢饉をもたらした小氷河期がまさに再来しようとしている。温暖化よりは寒冷化に備えなくてはならないのだ。(P7)

○大気中のCO2は今後100年間、問題にするほどの温暖化をもたらすことはなく、それ自体は何の害をもたらすこともない・それどころか、CO"は地上の植物と動物の命をつなぐかけがえのない物質なのである。・・・植物にとってCO2が多いほどよいことは農業分野では周知の事実である。・・・CO2温暖化論によってCO2はすっかり悪者にされてしまったが、この誤った価値観は今大きな転換を求められている。それは大気中のCO2を資源として認識することである。(P177)

○ヨーロッパも米国も・・・両者に共通なのは、世論調査に現れた地球温暖化への関心の薄さである。EU地域で温暖化の脅威に関心を持つ人は5%に過ぎなかった。/このような状況からすると、EUと米国が現在の温暖化対策を将来とも継続する可能性は極めて低いと判断される。そうなったとき、日本が温暖化対策に積極的に取り組む「攻めの姿勢」をとっているならば、途上国の格好の餌食にされることは目に見えている。(P201)

化石燃料の保存のためにエネルギーの有効利用を図ることこそ、いま世界がとるべき政策なのだ。・・・理に合わぬことはいずれ破綻する。現にCO2排出を悪と見立てて作り出された排出権取引市場は崩壊した。それに対して、エネルギー利用効率を最重要課題とすることは、一見、地味なようだが、地球資源を保存するという理念だけでなく、エネルギーコストを削減するという経済性をも兼ね備えた合理的な目標となり得るものである。(P207)