とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

とんでもない人違い

 仙台の出張所で働いているTくんが久し振りに帰ってきた。3年前から仙台へ行っているが、昨年、「そろそろ帰ってくるか」と言ったところ、「まだ播いた種の刈り入れが済んでいないのでもう少し待ってください」と言った。彼は独身で、「仙台で結婚相手を見つけたいが、まだできないのでもう少し仙台にいたい」という意味だ。それで今年で3年目を迎える。

 Tくんの前所属の課長が会ったというので、昼休みに「彼はまだ彼女は見つからないのか」と噂話をしていた(もちろん冗談で)。そしてエレベーターの前を通りかかると、Tくんがいた。「業務成績はどうだ。元気でやっているか。」などと雑談し、「業務成績の他に、君には隠れた目標があるからな。がんばって達成しろよ。」と声をかけた。

 そこまではいい。

 エレベーターが到着して彼は乗り込み下がっていった。その後、トイレに入ったところで気付いた。「あれ? あれはTくんじゃない! Iくんだ!」

 IくんとはTくんの前に仙台出張所に勤務していた者だ。ふたり、体形は似ているし、年齢も近いので間違えてしまった。それにしてもひどい! このトンチンカンな話をしている私に対して、Iくんは「そうですね」と適当に話を合わせてくれていた。「何だろう?」と思っただろう。Iくんは仙台から帰って今は豊橋の支社で仕事をしている。今、名古屋にいたということは、今日はどこかで会議だろうか。もうエレベーターに乗り込んで、今日はどこに行ったかわからない。仕方ない。会社のメールアドレスならわかるので、

あとで謝罪のメールでも送ろう。そんなことをトイレで考えた。

 午後の仕事がようやくひと段落し、Iくん宛てにメールを書き始めたところで突然、Iくんがやってきた。彼も仕事が終わり、帰りがけに訪ねてくれたということだ。「ゴメン! さっきは君とTくんを間違えた!」 見るなり、即座に謝った。彼曰く、「さっきの『隠れた目標』って一級建築士の受験のことですよね。来年こそがんばります」。「えっ、いやそうか、そうだな。一級建築士の受験、がんばってくれ。でもさっき私が言った「隠れた目標」とは、Tくんの彼女探しのことだった(Tくんの彼女探しのことは本人が自ら公言している)。ごめん!」

 ということで、Iくんは本当にいいやつだ。自分は本当に間抜けなやつだ。Iくんがいて、Tくんがいて、今の自分がある。退職まであと141日。本当にみんなに助けられて、今の自分がいる。