とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

カセットテープ少年時代

 BS12で深夜に放送されていた「ザ・カセットテープ・ミュージック」に気付いたのは、昨年の7月。鈴鹿8耐に因んでの特番を午後8時半から放送しており、その面白さに病みつきになった。それ以降は午前2時からの放送を録画して観ていたが、10月からは午後9時のゴールデンタイムに移行し、1時間番組として放送が始まった。もちろん欠かさず観ている。妻も最近は大喜びだ。ゴールデンタイムに移行してからも深夜枠では過去の放送分を再放送していたが、最近はそれも終了した。7月の特番以前の放送も再放送でいくつかは観たが、すべては観ていない。そこで読んだのがこの「カセットテープ少年時代」。

 記念すべき第1回のサザン特集や、第1回「輝く!日本カセットテープ大賞」、「80年代カセット紅白歌合戦」など、観ることができなかった初期の放送が文字で収録されている。音がないのが残念だが、80年代の歌謡曲やニューミュージックの多くは今でもメロディが頭に浮かぶし、知らない曲もインターネットで検索すれば聴くことができる。いい時代になった。

 「ザ・カセットテープ・ミュージック」の素晴らしさはやはり、スージー鈴木とマキタスポーツがマニアックなコード進行やテクニックなどを語り合う部分。カノン奏法やクリシェ、9th、11thなどの胸キュンな技法と知識を惜しげもなく披露してくれる。それに二人の山梨や大阪での少年時代・青年時代の話が合わさって、まるで自分のことのように胸が熱くなることも。実際、マキタスポーツが本気で涙を流したことも1回や2回じゃないし。

 ということで、今わが家では大熱中の「ザ・カセットテープ・ミュージック」。本書で過去を振り返った後、また週末の放送を楽しむことにしよう。

 

カセットテープ少年時代 80年代歌謡曲解放区

カセットテープ少年時代 80年代歌謡曲解放区

 

 

○【スージー】「勝手にシンドバッド」……は全てが新しかったんですけど、……あんな歌い方する日本人、それまで一人もいなかったわけです。初めて聴いた時、洋楽かと思った。……よく聴いてみると、演奏自体は16ビートで、ディスコとかサンバの感じなんですけど、ベースがわりと4ビートなんですよね。……パンクでいながら一応、大衆と手を組んでる感じ(P27)

○【マキタ】彼自身の存在感や、歌の世界、歌詞の世界でも見られる浮遊感と、音楽的にも実は浮遊感を演出している。/【スージー】「いっそセレナーデ」は第2次井上陽水ブームの火付け役となった曲なんですけど。それは9htとか11thとかそういう不協和音でね、形成された感じがしますよね。……【マキタ】こういう音楽的には仕掛けがあることによって、なんとなく妙な心持ちにさせてくれる。そういった曲なんですね。(P65)

○「My Revolution」は……【スージー】さっき「最優秀イントロ賞」って言いましたけど、80年代で最強のイントロだと思うんです。大村雅朗って、デジタルを使いながらもすごいアナログな、胸がキュンとする感じを作るアレンジャーなんですよね。物の本によると、小室哲哉からへんちくりんな曲が出てきても、それを見事に大村雅朗がアレンジしたと。……これをヒットさせて“小室元年”をおびき寄せたのは、実は大村雅朗だったと僕は見ていますね。(P78)

○【マキタ】ポップスっていうのはすべからく、「パクリの歴史」なんで。……みんなが大好きなものの共有財産をカスタマイズして、その時代の大衆に当てていく作業をずっとやってるのが、商業音楽としてのポップスなんで。……だから、サンプリングが当たり前になって以降のアーティスト……たちになると確信犯的に「元ネタはこれですよ」と言っていくことになるんですね。……それ以前のアーティストだった佐野元春さんは、編集マンとしていろんな要素をとりいれながら自分のサウンドを……作ってはいたんですけど、やっぱり基本的に言わないんですよね。(P90)

○【スージー】コード進行にはルール、規則のようなものがあって、それを使うと曲って簡単にできるんですけど、ユーミンって、コードから曲を作ったことはないそうなんですね。先にメロディを作って、そこから自由にいろんな音を当てはめていったりしてるから、新しいコードを作っていった人なんですよね。/【マキタ】ユーミンの歩くところには、キラキラとした、金粉みたいなものが舞っているような、そういう自由なメロディに聴こえますしね。(P155)