とんま天狗は雲の上

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レオパレス入居者はなぜ引っ越すのだろう?

 先月発覚したレオパレス21の施工不備問題により3月末までに転居を求められた入居者約7700人のうち、これまでに退去をしたのは425世帯と報道されている。レオパレス側からは「期限を定めた退去依頼はしていない」というコメントもあったが、マスコミ側には「退去が進んでいない」といった感じのスタンスが目に付いた。しかし、個人的にはよくこれだけの入居者がホイホイと退去を受け入れたなと感じた。425世帯のうちにはたまたま転居の必要があって退去した入居者もいるのだろうが、それにしてもどうしてマスコミは引っ越して当たり前みたいに報道するのだろう。

 それも引っ越しにあたり、レオパレス側の対応は非常に酷いものだと思われる。そもそもレオパレス側の一方的な不備により退去を要請されているわけだから、引っ越し費用の実費負担は当然であり、引っ越し先の斡旋や突然の退去に対する慰謝料や迷惑料、その他の費用等をレオパレスに要求しても当然である。

 例えば、公営住宅UR賃貸住宅などが建替える場合には、従前の入居者に対して引っ越し費用の他に数十万円程度の退去協力金を支払うことが普通だ。加えて今回は突然の退去要請であり、安全性に対する不安もあるのだから、それらも加えた相応の退去一時金を支払って当然の事例だと思われる。

 「施工不備により危険な住宅だから早急に退去する必要がある」という意見もあるかもしれないが、例えば旧耐震基準で造られたような古い賃貸住宅と比較して、今回のレオパレスの物件がどれだけ危険だというのだろう? 今回の施工不備は火災時の安全性にかかるものだが、火災が起きなければ問題がない訳で、南海トラフ巨大地震の発生確率と比較して、どちらがより危険性が高いというのだろうか。

 しかもあわてて退去しても、これまで入居していた住宅の改修工事がいつ行われるかわからないわけで、いつまでも工事がされず、火事が起きることもなく放置されていたら、いったい何のために高い家賃の住宅に引っ越したのかと自問自答してしまうに違いない。

 また、「今回の事件が原因でレオパレスが倒産してしまえば、引っ越し費用ももらえなくなる」という意見があるかもしれないが、そもそも自己都合で引っ越すのであれば、引っ越し費用は自己負担するのだから、引っ越し費用を負担してもらえるという方がイレギュラーなのであり、たとえレオパレスが倒産したとしても、賃貸住宅の所有者は別にいるわけだから、そのまま居住は続けられるはずだ。

 と思うのだけど、どうしてマスコミはこうしたスタンスに立たず、入居者が引っ越す方向で迫るのだろうか。と、疑問に思っていたら、日経ビジネス「レオパレス問題、国交省が迷惑するもう一つの理由」という記事が出ていた。それによると、今夏に予定されている建築基準法改正でレオパレス住宅が適法になる可能性があるようだ。これが正しいとすれば、実は3月中の退去と早急な改修を要望したのは国交省という可能性も考えられないわけではない。そしてその方向で報道をするマスコミ? さらにネットを検索すると「レオパレスは本当に悪玉企業?界壁は訴訟中アパートオーナーが指摘:土地売却奮闘記」という記事も発見してしまった。うーん、なかなかこの問題には色々と裏があり、複雑なようだ。

 ということで、レオパレス入居者にとってのこの問題に対する正しい対応としては、レオパレス側から、引っ越し費用も含めた相応の退去一時金の支払い額を提示するとともに、必要に応じて住宅の斡旋等を行い、住宅毎に改修時期を明示した上で工事着手までの退去の要請があり、これらの内容について合意をしたら退去をする、というものだろう。それまでは入居者はまったく動じる必要はない。