とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

FOOTBALL INTELLIGENCE

 サッカー本大賞を受賞した「PITCH LEVEL」はそれなりに楽しんだ。「ウィニング・ストーリー」では、文章力や学ぶ姿勢に驚いた。そして本書では……。

 想定以上にフォントが大きく、行間が広い。あっという間に読み終えた。しかも内容が具体的。第1章では、ポジション別に「良いポジショニング」について説明する。第2章では、相手のシステムごとに「システム上の急所」について説明する。第3章は「駆け引き」について。いずれも、選手の立場に立って、いかにプレーすべきかを書いている。

 では私のようなもっぱら観戦を楽しみにしている者にとってはつまらないか、と言えば、それが意外にそうでもない。というのも、岩政が言うように、サッカーには常に相手がいて、相手を見て、個々の選手が判断しプレーをしていく。その時必要なのは、全体のスタイルではなく、ピッチレベルの選手一人ひとりの心理や判断。そのことを先日まで現役でもあった岩政はよくわかっていて、個々のプレーと判断からサッカーを組み立てていく。

 そのためには「原則」が非常に重要であることを強調する。「原則」が日本全体に浸透した時に初めて「日本人らしいサッカー」が作り上げられる。そして、相手があってこそのサッカーであれば、「相手によって変えられること」と「相手によってぶれることのないメンタル」。それが備わってこそ「日本人らしいサッカー」が確立すると言う。確かにそうかもしれない。

 森保ジャパンはそうした方向に向かっているだろうか。風間監督はどうか。グランパスを思うと、「相手」がどこまで考慮されているのか疑わしく思えてくる。独りよがりのサッカーになっているのではないか。岩政は風間サッカーをどう評価しているのだろうか。正直な評価を聞いてみたい気がする。

 

FOOTBALL  INTELLIGENCE フットボール・インテリジェンス 相手を見てサッカーをする

FOOTBALL INTELLIGENCE フットボール・インテリジェンス 相手を見てサッカーをする

 

 

○私はプレーしながら考えるべきものを「立ち位置」と「視野(目線・角度)」だと限定しています。つまり、「どこに立つべきか」と「どこを見ておくべきか」。それを「考えろ!」と。/その基準となるのが「ボールを受けたときに自分と相手ゴールを結んだ線上に相手を立たせないこと」。……相手守備者は「ボールを持った相手と自分のゴールを結んだ線上に立つこと」という原則を守ろうとポジションを取ります。……極論、ピッチ内ではみんながその原則の取り合いをしているようにさえ見えてくるのです。(P22)

○ピッチレベルの選手たちには判断基準しか存在しません。……大事なことはピッチ上の選手が迷いなく、団結して、躍動すること。そして、相手を見て判断をしていくこと。そのための判断基準が合わさって、結果的にそのチームのスタイルが出来上がります。……選手たちは判断を積み上げて、試合を作るのです。(P106)

○原則(約束事、セオリー、判断基準)を基にしてプレーする中で、判断(認知、状況把握)と技術(フィジカル)が選手たちにはいつも試されています。……大事なことは「原則」と「判断」と「技術」のどこに問題があるのかを見極めることだと思います。……「判断」の前に選手たちの頭に置かせるべき判断基準、「原則」。それが日本全体に浸透していった時にやっと日本のプレーモデルが確立されていき、「日本人らしいサッカー」なるものが作り上げられていくのだと思っています。(P113)

○試合での最終的な正解は相手が決めてくれます。相手を見なくてはなりません。相手が有効な対策を打ってきたなら、それに付随して空く次の急所が必ずあるはずで、それを見つけながら戦うのがサッカーです。4-4-2、4-2-3-1という枠組みの中で相手の嫌がることで試合に入りながら、その中で相手を見て次の手を考える。その繰り返しで90分間を自分たちで“デザインしていく”ような思考が大切だと思います。(P146)

○「相手によってぶれることがないメンタル」と「相手を見て変えていける方法論」と。その……どちらも持ち合わせていなければ、どんな相手も凌駕していける自分にはたどり着けないでしょう。……「自分たちのサッカー」も同じかもしれません。/「……自分たちがやるべきこと」と「相手……によって変えるべきもの」と。……どちらも兼ね備えたときに初めて「日本人らしいサッカー」が確立される、とは言えないでしょうか。(P292)