とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

素人が玄人を凌駕する

 あずきバーなどで有名な井村屋グループ(株)の元社長・会長・相談役、現シニアフェローの井村正勝さんの講演を聞いてきた。井村さんの先々代が和菓子屋としての井村屋を開業したが、その時は町にある普通の和菓子屋。終戦後、父親が軍隊仲間と共にビスケットやキャラメルなどの菓子を幅広く売り捌く食品会社としての井村屋を立ち上げ、一緒に立ち上げた仲間が順次、社長を務めた後、5代目の社長を継いでいる。話はもっぱら井村屋のベルトセラー商品について、そのエピーソードを話すもので、内容はいずれも楽しかった。

 最初のヒット商品「えいようかん」は、既知のノウハウである羊羹を、ポリエチレンとセロハンを貼り合わせたポリセロと言われる包装紙に包んで販売をしたもの。「ゆであずき」の平缶は魚介類に使用するツナ1号缶で、業界では非常識と言われたが、消費者には好評で今に続くベストセラー商品となった。「肉まん・あんまん」はアイスクリームの流通経路を冬場にも利用するという発想で生み出された冷凍食品だが、冬期には邪魔者扱いだった冷凍ケースを利用し、必要分だけスチーマーで温めて販売する形にして評判を得て、大ヒット商品となった、などなど。ちなみに、「あずきバー」は特にコスト面で利幅が薄く、他社は早々と撤退する中、日頃から大量の小豆を仕入れており、さらにロングセラーとなって来期以降の販売数も計算できるようになって初めて儲けが出るようになった、と話をされていた。

 そしてまとめ的に話されたのが、「素人が玄人を凌駕する」ということ。上の各商品についても、いずれも井村屋がもともと保持していた既知のノウハウに飽き足らず、未知のアイデアやノウハウを加えることで顧客のニーズに応えてきた結果だと言う。もちろん全くの素人では話にならないが、既存の商売に安穏としていては新しい成功はつかめない。ま、当たり前と言えば当たり前な話ですが。

 実はそれ以上に目から鱗だったのは、砂糖漬けは長期保存が可能という話。長期保存と言えばまずは冷凍。そして塩漬けというイメージだが、実は砂糖も同様。糖分を高くすることで浸透圧により、食品内に侵入した細菌類から水分を奪い取り、結果的に長期保存が可能になるということ。つまり塩分と同じ。「ジャムがまさにそうでしょ」と言われると、確かにそうだ。ただし日本では砂糖は貴重品だったため、漬物のように発達することがなかったようです。なるほど。アイスクリームは近頃、明治が賞味期限を表示すると発表したが、砂糖や塩は未だに賞味期限の表示はない。砂糖は腐らないのだ。