とんま天狗は雲の上

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次のテクノロジーで世界はどう変わるのか

 筆者の山本康正氏は、東大、ハーバード大大学院を卒業後、グーグルに入社。現在はベンチャー投資家。また京大の特任准教授なども務めている。ネットで検索すると、テレビ朝日の「あいち今なにしてる?」で紹介されたという記事が多く見つかる。

 「はじめに」の中に「2020年代のテクノロジーの構図」という図が描かれている。「5G」「クラウドビッグデータ」「AI」のトライアングルをFAANG+M(フェイスブック・アマゾン・アップル・ネットフリックス・グーグル・マイクロソフト)と中国のBATH(バイドゥ・アリババ・テンセント・ファーウェイ)が争い、加えてブロックチェーンを4つ目の軸として、さらに可能性を拡げる。これらのテクノロジーによって実現が期待されるのが、自動運転、VRスマートホーム、ヘルスケア、ドローン・ロボティックス、そしてフィンテックなど。

 本書ではこれら4つのキーワードの意味と現時点の状況などを丁寧に説明している。もちろんわずかなページ数の新書でこれらのテクノロジーを詳細に説明することはできないが、概ねの内容は理解できる程度にはやさしく説明されている。

 これらテクノロジーの中でもAIはまだ発展途上のようだし、5Gも今後さらに6Gなどの進化も期待される。そしてこれらテクノロジーの開発を競う「FAANG+M」では、起業家がチャレンジできる環境を提供することを惜しまない。最近、話題のスタートアップとはこのことか。中国がAIの巨大な実験場になるという指摘も興味深い。東京圏も可能性はあると筆者は言うのだが、どうだろうか。

 一方で、日本人はテクノロジー偏重に陥り、世界のニーズをきちんと認識し、対応していくことが不得手だ。その結果、様々な技術がガラパゴス化し、グローバルな競争に取り残されるという現状がある。筆者はそのことを本気で心配もしている。しかし彼もきっといつか、日本を置き去りにして羽ばたいていくのだろう。せめて私もその姿が認識できる程度には、次のテクノロジーについていきたいと思うが、無理かもしれない。

 

 

○グーグルやアップルの本社は、起業にチャレンジしたあとの「羽休め」の場所になっている。…戻ってきた人材を囲い込んで…彼らに再び挑戦してもらう。そのベンチャーが運よく成功し、グーグルにとってメリットをもたらす存在と認識されれば、いち早く買収するチャンスが増える。…羽を休める場所を提供し、社員の企業を資金面から支援する。それが社会全体にとってもイノベーションが起こりやすい形になるのではないか。(P37)

○人口知能(AI)ができることは、まだ限定的である。/データの解析に関して具体的に可能なのは「画像解析」「自然言語処理」「音声認識」の三つしかない。…現在のAIでは、できない名大がまだまだ数多く残されている。/「AIにできないこと」のうちで代表的なのは「善悪」「倫理」の判断である。…しかしながら、新しいブレイクスルーは必ず起こる。…現状をブレイクスルーするのは、今日のディープラーニングの延長線上とは別のベクトルにある。…あくまでも、ここから先の進化は人間の発想の問題になる。(P108)

○中国がAIの巨大な実験場になるかもしれない。/科学者にとっては…西側諸国では手に入らないプライバシーを考慮しないデータも大量にある中国は、魅力的な国である。…倫理はもちろん大事だが、あとで考えればいいこともある。…反対意見もあるだろうが、私はその立場をとる。…その点で見れば、東京圏のデータ量は世界でも最高水準にある。本気でAIのアルゴリズム開発に取り組めば、世界のAIテクノロジーをリードする存在となり、日本のAIビジネスが再生する可能性が十二分にあると考える。(P169)

○日本人は、往々にして「高性能なものほど必ず世界に広まっていく」という思考に陥りやすい。3Dテレビもそうだったが…テクノロジー偏重で市場のニーズを無視する姿勢は危ない。/日本のGDP…が、世界に占める…割合はわずかで、2020年に5.3%という予測が出ている。世界には日本と異なる大きなマーケットがあることを認識し、そこでもシェアを目指すべきだと思う。日本が日本独自のテクノロジー固執してきたことは、グローバルな競争から置き去りにされる原因の一つになっている。(P225)