とんま天狗は雲の上

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「アベノマスク炎上の正体」で垣間見えた役人の萎縮

 一昨日の緊急事態宣言前の首相会見を偶然、テレビで見てしまったが、経済対策の話から始まったことには強い違和感を覚えた(ちなみに昨日も見たけど、驚くような話はなかった)。国民の命とカネのどちらを重視しているのか。結局この人は、国民はカネさえ見せればみんな喜ぶとでも思っているのだろうか。若しくは、経済対策の規模等について政府内調整が難航したことが、経済対策から話し始めることになった要因か。

 最近の安倍首相は、苦り切った顔をしていることが多い。会見で話す内容は事前に準備された原稿を読むだけで、自分の意見ではなく、ただ言わされているだけのような感じを受ける。もっとも、アベノマスクのように、独断が通ってしまうとトンデモ施策になってしまうのだから、それもしょうがない。アベノマスク発表の後、ネットを中心に大きな批判が沸き起こったが、中には三浦瑠麗や高須克哉のように擁護し、礼賛する者もいるから恐れ入る。そんな中、一時、「アベノマスク炎上の正体」というサイトがアクセスランキングの上位に掲載されていた。内容は、経産省の浅野大介氏が投稿したフェイスブックの記事を紹介するもので、一読した時には、「理屈はわかるけど、それならこの説明も一緒に発表しなくちゃ、ダメだろ」位の感想だったが、よくよく考えてみると、やはりおかしい。

 そう思って、改めてこの記事のコメント欄などを読むと、私と同じ感想が寄せられている。すなわち、浅野氏の説明は、

(1)感染防止にマスクは重要。

(2)サージカルマスク(不織布の使い捨てマスク)の生産が追い付かない。

(3)サージカルマスクは医療機関への配布を最優先する。

(4)国民には布マスクを配布することにした。

 というものだが、(3)までは正しいとして、その次に、(4)布マスクの配布という方針に行き着く論理がわからない。「届いたマスクはどうしたらいいのか!? 最適な提案を待っています!」で書いたとおり、(3)までは理解した上で、多くの国民はこまめにドラッグストアを覗いたり、手製の布マスクを作成するなどの行動をしているわけで、「国から無償で配布しろ」などという意見はついぞ聞いたことがなかった。だから「これで国民の不安はスパッとなくなりますよ」なんて寝ぼけた意見が出たのだろうが、結局、「当面、サージカルマスクは一般向けには販売されない」という現実を露わにし、これまで以上の不安を煽っただけではないのか。

 そもそも浅野氏が「政府マスクチームで関与した」ということ自体が事実なのか疑問に思うが、マスク配布という安倍首相の提案を「これくらいなら」と許してしまったところ、あまりに批判が噴出してしまったため、急きょ「企画の真意」なる理屈をひねり出したのではないのか。もっともアベノマスクは経産省出身の首相補佐官である今井尚哉の発案とも言われるので、経産省内での先輩の発言をあわてて部下が弁明したということかもしれない。

 でもこれって、どこかで見た記憶が・・・。そう、森友学園問題への国会答弁で、安倍首相が「私や妻が関係していたということになれば、総理大臣も国会議員もやめる」と発言し、財務省が公文書の偽造やウソの答弁を繰り返したのと同じ構図ではないか。上司の失言や愚策を、部下が必死にカバーする。そしてこんなつまらないことがすぐにできる人間が優秀と評価され、省内で出世していくのだろうか。実にくだらない。というよりも、こうしたくだらないことに優秀な頭脳を使わざるを得ない役人の悲哀をこそ感じる。

 でも浅野氏も、こんなすぐにメッキが剥がれるような投稿をしたばかりに、今後の出世の可能性は途絶えたのだろうか。それともよくやったと評価されるのか。それもまた哀れだ。国家公務員のキャリアが優秀なことは私もよく知っている。彼らが優秀なままに活躍できる組織であってほしいが、安倍政権下ではそうしたことはあまり期待できないようだ。