とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

1999年1月1日 天皇杯決勝 横浜フリューゲルスvs.清水エスパルス

 1998年10月29日、突如、横浜フリューゲルスマリノスとの合併が発表された。その後の署名活動などもまだよく覚えているが、結局、サポーターの合併反対の声が聞き入れられることなく、12月2日には合併の調印式が行われた。そして合併が発表されて以降、フリューゲルスは快進撃を続ける。Jリーグを4連勝して7位に終わると、天皇杯は準々決勝でファーストステージ優勝のジュビロ、準決勝では年間優勝したアントラーズを下し、決勝へ進出。決勝の相手は年間順位3位のエスパルス。チーム最後のゲームとして天皇杯決勝に臨んだ。

 フリューゲルスの布陣は3-4-1-2。吉田孝行と久保山の2トップでトップ下には永井秀樹。右WB波戸、左WB三浦淳宏が左右に開き、ボランチにはサンパイオ山口素弘が入った。DFは薩川が出場停止で、リベロに原田。右CBに佐藤尽、左CB前田浩二。GKは若き楢崎が守る。対するエスパルスは3-5-2。ファビーニョ長谷川健太の2トップで、中盤はサントスをアンカーに、澤登と伊東輝悦がトップ下に並ぶ。WBには右に安藤、左は市川。CBは森岡を中央に、右に斉藤、左に戸田。GKは真田が守る。先々週、翌シーズンのチャンピオンシップ第2戦、ジュビロとのゲームを観たが、こちらの方がメンバー的にも整っている。

 ゲームは序盤、エスパルスが攻勢をかける。2分にはOH澤登のFKにFW長谷川健太がダイビングヘッド。押されるフリューゲルスは11分、左WB三浦が直接FKを狙うが、壁にはね返された。13分にはOH伊東がFWファビーニョとの縦のワンツーで抜け出し、右に渡して、右WB安藤のクロスにFW長谷川健太がシュート。だがGK楢崎がファインセーブ。しかし14分、CB森岡がパスをつないで左サイドを上がっていくと、クロスを右サイドに流れるが、これをOH伊東が折り返しのクロス。OH澤登がダイビングヘッドを決めて、エスパルスが先制点を挙げた。エスパルスは18分にもFWファビーニョのクロスにOH澤登がボレーシュート。27分、OH澤登のFKは直接ゴールを狙うが、GK楢崎が必死にバックステップを踏んでクリアする。

 なかなかペースを取り戻せないフリューゲルス。30分には左WB三浦がドリブルで持ち上がり、クロスを入れるが、ファーに流れる。右WB波戸のクロスにFW吉田孝行がオーバーヘッド。だがうまく当たらない。37分、CH山口のミドルシュートもGK真田がセーブ。逆に42分にはFW長谷川のポストからCHサントスがスルーパス。OH伊東が抜け出してシュート。GK楢崎がファインセーブで弾き出した。

 エスパルスは前半、FW長谷川健太によく収まり、澤登と伊東から攻めていく。逆にフリューゲルスはCH山口とサンパイオを潰されて、なかなか攻撃の形を作れなかった。しかし前半終了間際の45+4分。CH山口の縦パスをOH永井が落とすと、山口がフワッとした縦パスを入れる。これを受けたFW久保山がセネカでCB戸田を抑えたまま反転してシュート。なんと前半のうちにフリューゲルスが同点に追い付いた。直後、前半終了のホイッスルが吹かれた。

 後半も序盤、エスパルスが攻め込んだが、後半のフリューゲルスは前への意識が強く、パスがつながるようになってくる。3分には左WB三浦淳宏のパスを受けたOH永井がドリブルで仕掛ける。DFに当たってこぼれたところをCH山口がシュート。GKL真田がファインセーブ。12分にも同じように左WB三浦のパスからOH永井が仕掛ける。こぼれ球をCH山口がミドルシュート。これもGK真田がファインセーブ。17分、左WB三浦のFKはバーの上を越える。エスパルスは16分、FW長谷川健太を下げて、アレックスを投入した。

 しかし、FW長谷川健太を下げたエスパルスは前線でボールが収まらなくなり、フリューゲルスがゲームの主導権を握る。そして29分、CHサンパイオの縦パスに走り込んだOH永井が絶妙の折り返しパス。FW吉田がうまくボールを流してDFをかわし、シュート。ついに勝ち越し点を挙げた。エスパルスは32分、CHサントスに代えて大榎を投入。フリューゲルスも39分、FW吉田に代えてアンデルソンを投入する。43分、左WB三浦淳宏ミドルシュートエスパルスは前線へ長いボールを放り込み、打開を図ろうとするが、フリューゲルスDFがはね返す。45+1分にはCH大榎に代えて平松を投入。しかし最後までフリューゲルスの守備は崩れず。そのままタイムアップ。フリューゲルス天皇杯を優勝。ラストゲームを飾った。

 国立競技場のメインスタンドで山口素弘天皇杯を高々と上げたシーンを覚えている。だが一方で、これでチームが消滅してしまう悲しみに涙を流す女性の姿も。うれしい。けど、悲しい。まさに悲喜こもごもの複雑な感情が綯い交ぜになった天皇杯決勝、そしてフリューゲルスの優勝だった。日本サッカー史に残るゲームの一つだ。