とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

事業者は今、第二波の襲来に伴う二つの不安(感染リスクと倒産リスク)に怯えている。

 今週初めに緊急事態宣言が解除されたが、北九州市では再び感染者が発生し、第二波の襲来かと騒がれている。東京都の新規感染者も先週末から二ケタ台を続けており、先週までの激減はGW中の外出自粛の効果であって、これから感染者増が再び始まるのではないかという危惧が拭いきれない。今後、感染者数が再び上昇していったら、政府はどうするのだろうか。普通に考えれば、「再度、緊急事態宣言を発令」となるはずだが、そう簡単には再発令はしないのではないか。緊急事態宣言発令による経済的影響はそれほどまでに大きかった。

 国の緊急事態宣言、そして何より小池都知事による「ロックダウン」を始めとする一連の発言は人々の行動を大きく抑制した。その結果が感染者減少につながったことは否めない。では、事業者への営業自粛要請の効果はどうだったのか。宣言解除後も東京都では、各ステップで「ライブハウスやナイトクラブはダメ。スポーツジムはダメだけど、パチンコ店は開業してもかまわない。飲食店の営業時間は午後10時まで」などと業種毎に細かく規定を設けているが、それぞれにどれだけの意味と効果があるのだろうか。

 市民を一定の規制の下に従わせることは独裁者にとっては痛快だろうが、こうした行政の姿勢は一方で自粛警察の登場を生んだ。本来であれば、対策を講じたにも関わらず感染者が発生した場合の責任は行政が負うべきである。同様に、対策により損失を生じさせた場合の経済的補填なども行政が対応すべき事項であるはずだ。しかし、日本においては自粛要請という形を取ることで、行政責任が曖昧なままとなっている。

 その結果、多くの事業者は倒産の瀬戸際に追い詰められる状況になっている。再度、営業自粛等を要請したら、事業者はどれだけ応えてくれるだろうか。今度は営業を継続する事業者も少なくないのではないか。実のところ、営業が感染を広げるのではなく、それを利用すること、利用の仕方が感染の原因だ。営業をしても、誰も行かなければ感染が広がることはない。そして、様々な注意を無視して、感染の危険性が高いと言われる行動をした結果、感染したとすれば、それはまさに自業自得、自己責任だ。

 いや、それでかまわないのではないか。そもそも、消毒をしっかり行い、密にならないように観客数がコントロールされた映画館は営業自粛する必要はなかった。パチンコ店やスポーツジムも同様。もちろん感染クラスターになる店舗もあるかもしれないが、衛生管理や利用管理をしっかり行うことで一定程度、感染リスクを減らすことは可能だ。そしてその状況でなお、それらの施設を利用するかどうかは、利用者の自己判断であり、自己責任である。もちろん事業者も万一、感染者が発生した場合のリスクを負うことになる。

 もっとも、感染者が増加して医療体制に影響が出る状況であれば、すぐにでも営業停止等の措置を講ずるべきだ。これまでの外出自粛等の要請は、医療崩壊への対策という目的もあった。今は医療体制にもある程度の余裕ができた故の緊急事態宣言解除だと思う。そして第二波に備えて、さらなる医療体制の充実に取り組んでいるはずだ。そうであれば、医療体制が確保されている状況においては、再度の宣言発令や自粛要請ではなく、市民・利用者の自己責任による新しい生活様式に期待する、ということでいいのではないだろうか。

 政府は今後予想される第二波に対してどう対応していく方針なのか。宣言解除とともに、新しい生活様式への協力要請だけでなく、第二波に対する対応方針も合わせて公表すべきではなかったか。多くの事業者や国民が抱く第二波の襲来に対する不安は、単に感染に対するものだけでなく、再び営業自粛の要請が行われるのではないかという点にもある。明確な方針を示すことが、国民の不安払拭につながり、疲弊した経済の立ち直りにも資するのではないだろうか。