とんま天狗は雲の上

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地球温暖化「CO2犯人説」は世紀の大ウソ

 これまで、地球温暖化に係る本はいくつも読んできた。本書は、地質学者である丸山茂徳氏を中心に、10人の執筆者による論文等を集めたものである。論文と書いたが、インタビュー記事もあり、また有馬純や米本昌平など、文中で「温暖化懐疑論者ではない」と公言する者も筆者に名を連ねている。しかし彼らも「環境原理主義」は否定し、「地球温暖化」が国際政治の道具となっている現実には批判的だ。国連とSDGsを批判する第6章から終章までは丸山茂徳氏が書いているが、「難民30億人時代の到来」とか、南太平洋メガフロート国家建設計画、「世界がすべて民主主義国家になれば戦争はなくなる」など、後半に行くほど暴走を始めて、次第に読むに堪えなくなってくるのはいかがなものか。

 それでも、地球温暖化の原因は「太陽活動の変化による雲量の変動が主因」という指摘は、「気候変動とエネルギー問題」の中で深井有氏も指摘していたことであり、「地球温暖化の原因は95%CO2が原因だ」とするIPCCの報告書についてはあまりに暴走しすぎていると思わざるを得ない。結局、地球の気象に関する科学はまだ研究途上であり、仮説に過ぎない「CO2犯人説」に基づいて政策を進めてしまうことは、伊藤公紀氏が言うように、あまりに乱暴であり、それこそ人類を誤った方向に導くものだろう。

 丸山氏が本書を主動して出版しようとした動機としてはやはり、環境活動家少女、グレタ・トゥーンベリの登場があるのだろう。そして、最近、顕著になってきたSDGsの取組に対する批判もある。SDGsについては、耳触りの良い目標と財界を中心とした取組の活発化に、私自身も懐疑的な印象を抱いている。次は、SDGsに関する本を読めるといいかもしれない。もっとも「『SDGs』は世紀の大ウソ」という本は見つけることはなかなか難しそうではあるが。

 

 

○【丸山茂徳】火山灰や…鉱物の塵や高分子有機物が高エネルギーの宇宙線によって小さく粉砕され…帯電した微細な粒子になると、これらが凝結核となり雲をつくる。…雲が太陽からの入射光を抑えて、太陽光の反射率を上昇させるので地球は寒くなる。…宇宙からの高エネルギー粒子の入射量は…太陽活動と負の相関関係を持つ。…つまり、地球の気温を支配する最も重要な要素は、太陽活動なのである。…太陽光を反射してしまう雲の量が地球の気温を支配する主役なのである。(P22)

○【伊藤公紀】今のところ、CO2原因説にしてもなんにしてもすべて「仮説」でしかないんですよ。ですから、それを政策に結びつけてしまうのはあまりに危険で乱暴です。政策と科学は分けておいたほうがいいんですよ。科学が政策に寄与できたほうがもちろんいいですけど、寄与できる場合もあるし、できない場合もある。(P95)

○【米本昌平地球サミットの開催が国連決議を受けた1989年には、それまでの国際政治の枠組みを揺るがす大きな出来事がありました。ベルリンの壁崩壊に象徴される東西冷戦の終結です。…そのために国際政治という特殊な空間は…外交力過剰になってしまったのです。…だからどうしても…次の新しい脅威が必要になる。…そうして核戦争に替わる次の脅威として国際政治の主題として上がってきたのが地球温暖化問題だったのです。(P193)

○【丸山茂徳】気温と湿度は互いにピークの時期がずれているが、ある一定のサイクルで上下動を繰り返す。…そして、現代はちょうど気温が下がり始めて湿度が上昇中の時代なのである。…過去の記録を見れば…地球の気温はたしかに上昇していた。このため…冷めにくい性質をもつ海水には十分な熱が蓄えられているはずである。/今後、地球の寒冷化で上空の冷却された大気が、海洋の上層面の水蒸気を冷却して、降雨・降雪を加速する。このことによって、大雨や大雪が頻発するのである。(P222)

○【丸山茂徳】「プラネタリー・バウンダリー」(地球の限界)…は、2009年にIPCCのメンバーであるヨハン・ロックストロームが新たに提唱した概念である。これが国連主導の「SDGs」の概念の基盤をなすものである。この概念は…ある閾値を超えると逆戻りできない“暴走成長”が始ま…というもので…彼の論理に従うと、地球がこのままの状態を続けると、今世紀中に地球は生命の住めない惑星に暴走的に移行し引き返せない状態になる。(P298)