とんま天狗は雲の上

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ウィズコロナ下において、屋台経済(夜経済)を推進する中国と、「夜の街」を警戒する東京都

 浅井基文氏と言えば外務省で中国課長も務めた親中国派の元外交官であり、最近の香港問題などでも常に中国側に立った論評を繰り返している。日本のメディアでは反中的な記事がほとんどな中では、バランスの取れた社会観を維持するためにも読むに意味あるサイトだと思って、浅井基文氏の「21世紀の日本と国際社会」は毎回拝読している。と言いつつ、「そこまで中国礼賛、習近平万歳で大丈夫なの」と思わざるを得ない記事も多い中、先日、興味深い記事が投稿されていた。「中国就業・雇用問題:『屋台(露店)経済』」だ。

 ごく簡単に要約すれば、先日の全人代李克強首相が、コロナ禍における就業・雇用機会の創出のため「屋台設置を認めた」というものだが、後日、環球時報などはこれを「屋台経済」として肯定的に伝えたとしてその翻訳なども掲載している。中国で屋台と言えば、当たり前に存在していたと思っていたが、どうやら実際は、各都市の衛生景観管理条例により、取り締まりや禁止の対象となる不法な存在だったようである。それを今回、成都鄭州、南京、青島等の都市で、一定の条件を設けて営業を許可し、結果的に10万以上の就業の場を作ったとして評価している。

 屋台経済を評価するにあたって、「市場参入へのバリア」、「失業リスク」、そして「価格も低い」と、「三つの低い」を挙げている点も興味深い。成都では他都市に先駆けて3月から実験的に屋台経営を許可し、様々な生活の質と都市の安全性、すなわち犯罪や騒音、衛生、交通などのマイナス面と都市活力をもたらすプラス面を考慮した結果、時間や場所を限っての許可であればプラス面の方が大きいと判断したということのようだ。さらには、「都市全体の商業発展プランと都市管理の枠組の中で、屋台経済をいかに位置付け、『夜経済』とどのように連携させるか」という趣旨の記述もある。

 「夜経済」! これで思い出すのが、小池都知事が最近連発する「夜の街」だ。中国では、「夜経済」や「屋台経済」の意義を認め、ウィズコロナ下において、いかにこれをコントロールし、経済の発展と生活の質の向上につなげていこうかと考えているのに対して、日本の首都・東京では「夜の街」をコロナ蔓延の源として警戒し、標的にしているように見える。そこには「夜の街」が支える経済効果という視点は一切ないようだ。就業機会の創出と経済の活性化に気を配る共産主義国・中国と、繁華街を管理しようとする資本主義国・日本。標榜している国家体制とはそれぞれ、まるで違う方向に向かっているような気がするのは、これもまた、私の誤解に基づくものか。都市計画に多少とも関わる仕事をしてきた私にとっては、非常に興味深い記事だった。