とんま天狗は雲の上

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軽症や無症状の陽性者の自宅待機を暫定的にも認めることが、現時点の新型コロナ対策として現実的な方策ではないか。

 3日のモーニングショーでは、新型コロナ対策分科会委員である釜萢敏氏がリモート出演し、岡田晴恵白鴎大教授やコメンテーターの玉川氏らと口角泡を飛ばす激論を交わしていた。「政治や経済は政治家に任せ、医学者は専門の医学に専念して話をすればいいのではないですか」という岡田氏などに対して、釜萢氏は「GW中のような厳しい休業・自粛要請をすれば感染は抑えられるだろうが、国民の生活や経済を考慮して、実施すべき対策を専門家として提言している」といった趣旨のことを話していた。

 玉川氏などは「PCR検査をもっと拡充すべきだ」という従来からの主張をぶつけていたが、釜萢氏は「症状があり、医師が検査をすべきと判断した人と濃厚接触者を優先し、医師が不要と判断した人や単に不安だといった人は、別の扱いにすべき」といった意見を述べており、それはそれなりに理解する。ただ、両者の間でそれ以上の意見交換がされなかったため、議論はお互いの主張を述べ合うだけに終わってしまった。両者が明確に述べなかったことが一つある。それはPCR検査の結果、陽性と判定された人の扱いについてだ。

 釜萢氏は、むやみにPCR検査を拡大し、陽性者が増加すると、医療機関での対応が困難になり、医療崩壊が起きることを懸念しているように感じた。一方、玉川氏らは「陽性者は隔離しろ」と言っているのだが、既に自宅待機や調整待ちの陽性者が多くいる中で、さらなる陽性者をどうすべきかという点がはっきりしない。番組的には、一方で「自宅待機者等の増加は問題だ」と言っており、また「家庭内感染が増えている」ことに対して危機感を持って報道している手前、「陽性者は当面、自宅待機でもかまわない」とはなかなか言えない。

 もちろん、自宅待機に代わる軽症者等のための宿泊施設が十分用意されていればいいのだが、こちらも感染が一時的に収まっていた6月にホテルの借上げを契約解除してしまったこともあり、簡単には増えていかない。そうした状況の中で、釜萢氏も「PCR検査を増やした場合、医療機関で対応できない陽性者をどうしたらいいんですか」とは言わない。結局、ここの部分、「軽症や無症状の陽性者をどうすべきか」という点が議論されず、意見は平行線のまま終わってしまった。

 一方で、日曜日のサンデー・ジャポンでは、爆笑問題の太田が「PCR検査も完璧ではなく、7割は間違った結果が出る」と言っていたが、これは、陽性判定の場合の偽陽性の確率と陰性判定の場合の偽陰性の確率を混同しており、大間違い。偽陰性の確率が7割というのはどうやらそうらしいが、偽陽性の確率は99%と言われている(最近はさらに精度が高まり、99.99%とも言われている)。すなわち、陽性と判定されたら、ほとんどは陽性なのだから、隔離すべきなのだ。そして、偽陰性で逃してしまった陽性者も「いつでも、どこでも、何度でも」検査を行うことで、次には必ず捕捉し、隔離をする。そうすることで、なるべく市中に感染者を出さないようにしていくことが、経済を円滑に回すためにも必要なことだ。

 問題は「軽症や無症状の陽性者をどうすべきか」である。「医療機関は切迫」、「軽症者等向けの宿泊施設も十分でない」とすれば、「自宅待機を認める」しか方法はないではないか。自宅待機をすると家庭内感染が増えると言うが、自宅待機させなければ、市中での感染が拡大するのだから、社会に対する影響は自宅待機の方が小さい。一人暮らしの人などは、定期的に食糧等を差し入れれば、自宅待機で何の問題もない。家族は感染をあきらめるしかないが、家族単位で自宅待機し、食糧等も配給すれば、少なくともそれ以上の感染拡大はない。ちなみに自宅待機者への日用品や食料品の配布は既に小牧市などで始めている。

 「自宅待機では家庭内感染が増えてしまう」とか、「軽症者用の宿泊施設を増やすべき」とか、「医療機関への支援を拡充すべき」とか、それらはいずれも正論ではあるが、すぐに対応できるものばかりではない。まずは、自宅待機を受け入れること。そしてそれを前提にPCR検査を拡充することがこれ以上の感染拡大を防ぎ、社会不安を抑え、経済を回していくためにも不可欠な判断だと思う。釜萢氏には専門家としてこうした意見をはっきりと述べてもらいたい。