とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

正しい顔の洗い方

 ずいぶん前、まだ西田敏行が「探偵!ナイトスクープ」の局長をやっていた時のこと。「顔を上手く洗えない女」という放送があった。「顔を洗おうとすると、肘や床がビチャビチャで水浸しになる。手にすくう水の量など色々試したが、どうしてもビチャビチャに濡れてしまう。どうか、普通の女子のように顔を上手く洗える方法を教えてもらえないだろうか」という依頼に対して、間寛平が探偵となって依頼者宅を訪れるというもの。普段のように顔を洗い、服や床をビチャビチャにした後は、水を洗面台の中に張って顔を漬けたり、美容院のように上を向いて顔を洗ったりと色々な方法を試し、最後は「身体を深く折り曲げて、洗面台に顔を近付けて洗え」ということで終わった。間寛平らしいドタバタを見せて笑いを取るのが目的の放送内容だったが、正直、あまり面白いとは思えなかった。

 何より私自身も顔を洗う時に、手から袖口に滴る水が気になって仕方がない。その後自分でも、この放送で提案した「身体を深く水平近くまで曲げて顔を洗う」という方法を試してみたが、やはりうまく洗えない。依頼者ほど床や服がビチャビチャになることはないが、それでも袖口に滴る水は不快なままだ。困っている依頼者に対して、まともな解決策を示すこともなく、笑いを取るだけで終わってしまったこの内容には大いに不満を抱いた。その後、西田敏行から松本人志に局長が代わり、この種の「人が困る姿を見せて笑いを取る」類の放送が増えるだろうと思うとイヤになり、局長の交代とともにキッパリと「探偵!ナイトスクープ」から卒業した。

 で、顔の洗い方である。最近になってようやく私は「正しい顔の洗い方」を習得した。方法は「手でお椀を作って水を貯め、そこに顔を浸ける」というもの。こうすれば、顔を水に浸けた際に水が飛び散ることもなく、袖口に水が垂れてくることもない。もちろんそのためにはこれまでより多少は身体を深く枉げる必要もあるが、高い位置に手のお椀を維持すれば、番組でやっていたように水平まで曲げる必要はない。なんだ、簡単なことじゃないか。

 「探偵!ナイトスクープ」の醍醐味は、真面目な中で笑いを取る点にあった。笑いが先ではない。松本人志はそのことを理解しているだろうか。あの百田尚樹放送作家を務めているということも観なくなった要因の一つだが、「浪花のモーツァルト」ことキダ・タローは好きだったし、何より時々放送される感動モノは懐かしい。「探偵!ナイトスクープ」を観て、感動して涙を流すのは、いい精神浄化作用だった。今でもこの種の放送はあるのだろうか。局長交代後の評判はあまり芳しくないようだが、最近はどうだろう?