とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

MS&AD杯 日本vs.オーストラリア

 東京五輪前最後の強化試合。昨年のシービリーブス杯以降、強い相手とゲームができていない。今年に入っての国際試合はいずれも格下の相手との対戦ばかり。このまま東京五輪に入ってしまうのは怖いと思っていたら、直前にオーストラリアとのマッチメイクが決まった。結果に関係なく、いい経験ができれば、そして今のなでしこの真の実力が見られればと期待した。

 日本の布陣は4-4-2。菅澤と岩渕の2トップに、左SH長谷川。そして右SHには先月のウクライナ戦で代表デビュー、2ゴールを挙げた塩越が先発した。ボランチは三浦と中島。DFは右SBに清水、左SBには宮川が先発。CBは南と熊谷。GKは山下。宮川と塩越以外は五輪でも主戦となるメンバーだろう。対するオーストラリアの布陣は3-4-3。カーをトップに、サイモンとフォードがシャドー・ストライカー。中盤はクーニークロスとエグモンドのダブルボランチに、右WGラソ、左WGヤロップがワイドに張る。CBは右からカーペンター、ボルキホーン、ケイトリー。GKはマイカ。日本を上回るFIFAランク9位の実力が楽しみだ。

 序盤、オーストラリアが速い寄せと強いプレッシングで日本のボール保持者に迫る。これまでのゲームでは見られなかったもの。やはりこの時期にこうしたプレスを経験できるのはいいことだ。日本は右SH塩越が積極的に長いクロスをゴール前に放り込んでいく。こうした速い展開もこれまでの日本にはあまり見られなかったのではないか。当初はオーストラリアのプレスに苦しんだ感のある日本だったが、10分過ぎ位からパスを回して主導権を握り始める。しかしなかなかゴール前までは行けない。

 20分、オーストラリアはCBケイトリーのフィードをCFカーが落とし、FWフォードがシュート。GK山下がナイスキャッチする。26分には右CBカーペンターの縦パスに走り込んだWBラソのクロスにCFカーが合わせるが、強いシュートにはならない。日本は29分、右SB清水のFW菅澤を狙ったクロスがCBカーペンターにカットされるが、こぼれ球を右SH塩越がシュート。だがGKマイカがキャッチした。30分には右SH塩越のパスからFW岩渕が右へ流し、走り込んだFW菅澤がタイミングを外すループシュート。しかしGKマイカがファインセーブで弾き出す。31分にはCH三浦のミドルシュート。34分、右SH塩越のミドルシュートと遠い位置からゴールを狙うが、いずれもDFがブロック。日本はオーストラリアの速いプレスでショートパスを繋いでの攻めの形が作れない中、ロングボールを敵陣の背後に送り込むが、それで決定機を掴むのは簡単ではない。その後お互い決定機はなく、そのままスコアレスで前半を折り返した。

 後半最初にオーストラリアは既定の6人の選手交代を一気に行う。CFファウラー、シャドーFWにギールニクとロガーゾ。カーペンターを右WBに上げて、左WBにはラソが回る。ボランチは変わらず。カーペンターが上がった右CBにはケネディが入り、左CBにはルーイク。GKもウィリアムズに交代した。すると序盤から積極的に攻めてくる。その攻勢を凌いだ日本は9分、左SH長谷川がいったん左SB宮川にボールを預け、スルーパスに走り込むと、PA内に侵入してクロス。これが右CBケネディの手に当たった。ハンド。PKをFW岩渕が落ち着いて決めて、日本が先制点を挙げた。

 しかしその後も攻めるのはオーストラリア。10分、左WBラソのクロスをCFファウラーがミドルシュート。11分、CHエグモンドがミドルシュート。13分にはCHクーニークロスがドリブルで持ち上がり、右縦に出したパスに右WGBカーペンターが走り込み、クロスに左WBラソがシュート。いずれも枠を外してくれた。すると17分、日本も4人の選手交代。前線の攻撃陣を全員交代した。FWに田中美南と遠藤純、右SHに籾木、左SHに杉田。すると18分、FW遠藤が積極的に仕掛けて、シュート。19分にはFW遠藤が遠目から積極的にミドルシュートを狙う。GKウィリアムズがわずかに触って、バーを叩く。22分にはFW遠藤の戻しから左SH杉田がシュート。しかしポスト右に外れた。オーストラリアも24分、右サイドのFKからCHエグモンドがシュートを放つが、枠を捉えられない。

 25分、日本はCB南に代えて宝田。29分には左SB宮川を下げて、北村を投入する。いずれも経験を積ませておきたい若手選手だ。その後は、オーストラリアの運動量が落ちて、日本がパスを繋いで攻める場面が続く。42分、CH三浦の縦パスからFW田中がスルーパス。FW遠藤が抜け出すが、PA手前までGKが飛び出して、遠藤を倒す。FKのチャンスを得たが、右SH籾木のシュートは壁に当たった。45分にもFW田中のスルーパスにFW遠藤が走り込むが、わずかにDFのクリアの方が速かった。しかしこの二人のプレーは武器になる。直後、オーストラリアも左WBラソがゴール前にクロスを入れるが、GK山下が飛び出してパンチング・クリア。結局ゲームはこのまま、1-0で日本が勝利した。

 収穫の多いゲームだった。何より本番前に強いプレッシングを経験できたのは大きい。一方で、そのプレッシングの前に長いパスで攻めようとしたが、うまく行かなかった。FW菅澤は結局ゲーム中、一度もボールに触らなかったのではないか。それほど前にボールが回すことができなかった。オーストラリアが選手を入れ替えた後半はそれでも攻めることができたが、決定機を決めきれない。守備面では最後までしっかり守り切れて、それは自信になるが、課題は攻撃陣。グループリーグの初戦カナダ、第2戦イングランドと続く強豪相手に何とか粘りの勝負ができるだろうか。堅い守備からの速い攻撃。これまでの日本のイメージをとは違うが、そうしたサッカーができれば勝機も見出せるのではないか。怖いような、楽しいような。来週にはなでしこの東京五輪が始まる。