とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

医学のつばさ

 「医学のたまご」の続編。でもどうやらひと月先に出版された「医学のひよこ」の続編らしい。道理で「医学のひよこ」の予約数が多い割に、「医学のつばさ」の予約数が少なかったわけだ。おかげで本書を先に読む羽目になってしまった。でも、本書だけ読んでも断然面白い。「医学のひよこ」が面白くなくなる? それはどうかな?

 でも「医学のたまご」がどういう内容だったか、もうすっかり忘れている。それだけじゃない。本書は「ジーン・ワルツ」「マドンナ・ヴェルデ」の続編でもあり、「モルフェウスの領域」「アクアマリンの神殿」の続編でもある。いずれも田口医師とは少し離れたところで進む別の世界だが、しかし桜宮サーガはどこまでも繋がっている。

 そして単なる少年の探検ものではなく、現政権やメディアへの皮肉が籠められている。自主規制と忖度にまみれた時代に反抗できるのは今や少年・少女だけかもしれない。偉そうな人に言い放った美智子の言葉は、そのまま筆者が社会に対して言いたいことに違いない。

 

 

○『敵』はそこら中にはびこる『組織』という名の厄介もので、自分勝手なアメリカ大統領とその取り巻き、その太鼓持ちとして世界中から笑い物になっている口先首相が加われば完璧にサイアクだ。それはまさに、『軽薄鈍感エゴイズト、世にはびこる』状態だからねえ」(P68)

○IMCの創設者ケロッグ博士は『地位が保証されると二流の人物が自分よりも凡庸な人材を集め、一流の人間を駆逐する』と言いまシタが、まさにファイヤー・ガールの組織は、そんな風になり果てているようデス」(P110)

○「行き止まりかどうかは、突き当りまで行っていなきゃわからないだろ」/けだし名言だ。きっと歴代の探検家が難局を突破してきた知恵の言葉に違いない。/けれどそれと同じくらい、多くの探検家を破滅させた言葉なんだろうけど。(P215)

○「首相案件」で、「かの国の意向」だから「自主規制」しているんだということを知っていたぼくは、どれほど悪しざまに言われてもへいちゃらだった。/お偉いさんにソンタクして真実を報道できない意気地なしのテレビや新聞なんてちっとも怖くない。あの人たちは弱い者は責めるけど、強い相手にはてんでだらしないということが、今回の騒動でよくわかった。権力者に媚びて市民を叩く。それが居間の報道のルールらしい。(P250)

○「あたしたちがここでお話したのは、全部本当のことです。今の日本では本当のことが報道されず、なかったことにされてしまうのかもしれませんが、ひとりひとりの記憶のまでなかったことにはできません。そんなことをできると思っている人たちに迷惑を掛けたのだとしたら、あたしたちは反省なんて、するつもりはありません」(P253)