とんま天狗は雲の上

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ブレークスルー感染と中和抗体、ブースター接種

 ワクチンを2回接種した人が新型コロナに感染することを「ブレークスルー感染」と言うらしい。ワクチン効果をブレークスルーという意味だろうが、そもそもワクチンは重症化こそ防ぐが、感染を防ぐ効果は不明と言われていなかったか。また、「中和抗体」という言葉も最近よく聞く。単なる「抗体」と「中和抗体」の違いもわかりにくいが、ワクチン接種をしても、「中和抗体」の低下が感染可能性を高めるので、「三度目のワクチン接種が必要」という文脈でよく使われる。でも当初から、ワクチン接種の効果がいつまであるかは「わからない」と言っていなかったか?

 一昨日、IT mediaビジネスに「感染予防効果はモデルナ76%、ファイザー42%」という記事が載っていた。ただし、これは7月までの研究結果であって、デルタ株の感染が拡大している状況ではこれらの数字は意味がなくなりつつあるという。厚労省「新型コロナワクチンQ&A」では、「ワクチン接種後でも新型コロナウイルスに感染する可能性はあります。」という記述が冒頭に掲げられているが、「感染予防効果」に関する記述はこれだけ。次の段落から「発症予防効果」に関する記述になり、「ファイザー社製で約95%、アストラゼネカ社製でも約70%ある」と記載されている。「感染予防効果」ではなく「発症予防効果」。しかし、読み間違えてしまう人も多いのではないか。

 昨年10月の厚労省の資料では、「感染予防効果は実証しにくい」と書かれている。確かに、ワクチン接種者全員にPCR検査をするとしても、いつ感染するかわからないし、感染とワクチン効果低減の関連も評価が難しい。結局、厚労省が言うとおり、「ワクチン接種後でも新型コロナウイルスに感染する可能性はあります」ということだ。

 そのことは当初から厚労省は言っていた。一方で、菅首相は「ワクチン接種がコロナ感染拡大防止の決め手」と言い続けてきた。本来なら「ワクチン接種は発症は抑えるが、感染する可能性は変わらないので、ワクチン接種者が大半となるまでは、接種後も不要不急の外出は控えてほしい」と言うべきところだが、それを省いたため、あたかもワクチン接種をすれば「何をしても大丈夫」と思った高齢者は多い。実際、高齢者の発症率は下がり、ワクチン接種していない若中年層で感染・発症する人が急増した。ワクチン接種をした高齢者が、東京五輪に伴う4連休などにより動き回った結果ではないのか。

 そして今「ブレークスルー感染」なる言葉が現れた。誰が言い出したか知らないが、「ワクチン接種をしても感染はしますよ」ということを今一度啓発するという点では意味がある。「中和抗体」も同様。ただ「抗体」というよりは、耳新しく聞こえる。最近は「ブースター接種」という言葉も聞かれる。3回目のワクチン接種と言えばいいのに、なぜに「ブースター接種」? これらの言葉にはどこかしら「ワクチン接種を始めた時にはわからなかった事実」というニュアンスを感じる。そんなわけないのに。昨年、小池都知事が「ロックダウン」や「ステイホーム」といった言葉を使ったが、それと同様、目新しい言葉には何か意図が隠されている? 言葉に左右されることなく、真実を見極める努力をすることが必要かもしれない。