とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

おカネに釣られない―今どきの金銭感覚

 娘は昨年秋に職場からほぼ強制されて、マイナンバーカードを作成した。今年の4月までにマイナンバーカードを作成すると、25%のマイナポイントが付与される。先日、娘が加入するカード会社から、マイナポイント取得を促すDMが届いたので確認すると「手続きが面倒くさいから、今までやってこなかった」と言う。勿体ないとも思うが、確かにマイナポイントのサイトを見ても、わかりにくい。

 先日、床屋へ行ったら、主人が「マイナンバーカードを作成しないと青色申告の特別控除が10万円減額される」とぼやいていた。国税庁のサイトを見ると、基礎控除の増額もあるので、実際は「マイナンバーカードでe-TAXを利用すると、控除額が10万円増額になる」ということで、e-TAXを利用しなくても納税額が前年よりも増えるわけではない。だが少しでも納税額が減るとなれば、マイナンバーカードを作成しようと思う気持ちは理解できる。

 一方、一般消費者にとっては、マイナンバーカード作成によるポイントの付与は結果的には出費額の減少になるわけだが、そのための手続き等を考えると、わざわざ不要なカードを取得してまでポイントをゲットしようという気にはならない。たぶんここには行動経済学的な問題があるような気がする。

 そもそもマイナンバーカードの作成を進めるために、ポイント付与なんて特典をぶら下げることが怪しい。マイナンバーカードが便利だと思う人は自ずとカードを作成する。作成しないのはマイナンバーカードに利点を感じないからで、それをポイント付与といった方策で進めようとすること自体がおかしい。一昨年の消費税増税の際も、キャッシュレス決済のポイント還元制度が実施されたが、よっぽど今の政権は、キャッシュレス決済の諸会社と結託しているのだろう。

 最近、群馬県が若者のワクチン接種を進めるために「抽選で車が当たる」なんてキャンペーンを始めた。応募が殺到しているそうだが、これも「何だかな?」という気がしてならない。車や旅行券のためにワクチン接種をするのではないだろう。誰がこうしたキャンペーンを発案したかわからないが、県民の健康への意識をバカにした施策のように感じる。カネをちらつかせれば、大衆は踊る。為政者の多くはそんなふうに考えているのだろうか。だが、娘を見ていても、今の若者は必ずしもカネで動くわけではないように感じる。

 今の為政者の年代はバブル景気を経験し、あふれるカネを求める気持ちが強いのかもしれないが、今の若い世代は経済的に切羽詰まった状況にはなく、しかしバブルのような蕩尽も知らない。情報が溢れ、多くのストレスに囲まれる中で、少しでもストレスのない生活を望んでいるように見える。わずかなカネの増減で神経を苛立たされたくない。だから多少のカネには釣られない。そんな意識が垣間見える。最近の政府の政策は、どこか間違った方向、間違ったセンスで運営されているような気がする。国民の多くは、カネに煩わされず、心豊かに暮らせる社会の実現を望んでいる。