とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

フットボール批評issue36

 「参謀」という特集だが、結局、監督ひとりでは強いチームを作ることはできない。社長やGMなどの経営陣はもちろんだが、ヘッドコーチ以下、一丸となって取り組まなくてはならない。どれほど優秀な参謀であっても、監督との良い関係性があって初めて生きる。当たり前といえば当たり前のことである。FC東京の安間ヘッドコーチへのインタビューの中で、フィッカデンティ監督について「レギュラー組とそれ以外の選手をはっきりと分ける」という記述があった。昨シーズン、グランパスでそこそこの成績を残したにもかかわらず解任されたのは、そうした理由もあったんだろうか。

 新しく「成り上がり監督のリアル」という連載が始まった。長野パルセイロのシュタルク悠紀リヒャルトを取り上げているが、これがけっこう面白い。監督はこうしてチーム作りをするのかと目が開かれる。次号もシュタルク監督を追うのか、それとも別の監督になるのか。次を楽しみにしたい。

 また、セカンドキャリアを視野に、神奈川大学サッカー部の取組が取り上げられているが、興味深い。同様に、井筒陸也の「『フットボールとは何か?』を考える⑨」では、「『サッカー』と『仕事的サッカー』は別物である」として、職業としてのサッカー選手がいかにサッカーに向き合うべきかを考察している。重要な視点だと思う。

 ところで表紙に「『未来予想図』を作れない軍師はいらない」とあるけれど、そんな記事があったっけ? いや逆に「未来予想図」に拘る軍師こそ問題だという内容だったような気がする。

 

 

○クラブのスタイルを継承して、人々に愛されるチームを作るのが僕の流儀。そのため…善光寺や温泉などの名所を周り、幅広い年代の人に話しかけると、次第にやるべきサッカーの方向性が見えてきた。…ビジョンが共有できたら、いよいよチーム作りの核心である「24の原則」の理解だ。…「一般的に日本人の特性として、ルールを決めるとそれしかやらなくなる傾向がある…守りすぎると機能しない原則がある。なのでそういうものは削り、長野では24個に集約しました」…「原則が浸透したら、次は相手に応じてどう戦うかがテーマになる。…相手に合わせた戦いの中で、各自が担うパズルは一人ひとり異なっている。…原則×チーム戦略×各自の異なる役割=オレンジフットボール。これがシュタルクの勝利の方程式である。(P15)

○ピッチも含めた「社会」に出た時に、ストレスに負けない人材を育成する。それが、神奈川大学サッカー部の取り組みの狙いだ。サッカー以外の活動に取り組むことは「自分からサッカーを取り上げたら何も残らない」という恐怖の緩和にもつながり、競技活動の安定化も期待できる。(P108)

○生き残っていくためにするべきことは、サッカーではなく、仕事的サッカーを追及することである。…これまで「サッカー」で捉えてきたがために被ってきた理不尽を「仕事的サッカー」という解釈で理解を…する。そうすると、刹那的感情ではなく、もっと深い場所で「本当は、自分はどのようにサッカーをしたいのか」ということを、自問するようになる。そうして、それがゆっくりと定まっていったのち、結局はサッカーのスキルを追及することに戻ってくる。(P127)