とんま天狗は雲の上

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数学が歩いてきた道

 志賀浩二氏については「大人のための数学」シリーズで初めて知り、この新シリーズの新書の最初の1冊として発行されたのを見て、すぐに購入した。「大人のための数学」では、無限概念や抽象数学の入口で挫折した感が強いが、本書はその手前の微分積分解析学の触りまでを範囲に、数字や記号の始まりから、ギリシア哲学における数学の捉え方、そしてニュートンライプニッツにより、時間や変化の概念から微分積分が創造され、さらに解析学へと展開していくまでの数学の歩みを描き出している。
 数や量を実感的なものとして扱っていた時代から、ニュートンライプニッツ(並記しているが、両者の哲学とアプローチは全く異なると言う)により、それらが抽象的な「数学」として理解され、関数やグラフなどが認識されるに至るまでには、飛躍的に大きな溝があった。先日何気なく見たNHKスペシャルでは、素数と物理原理との不可思議な関係を取り上げていたが、高階微分や無限概念、集合論などが我々の現実世界といかにつながるのか。いや、つながらなくとも、数学の発展の歩みとその向かう先をかいま見ることは、非常に興味深い。もっともほとんど理解できないけどね。

数学が歩いてきた道 (PHPサイエンス・ワールド新書)

数学が歩いてきた道 (PHPサイエンス・ワールド新書)

●計算は紙の上でするものというごく当たり前のことが、800年前にはなかったことが不思議に思えます。(P018)
●数学が変化する世界の実相に積極的に立ち入って、それを解明しようとするようになったのは、ニュートン力学微分積分という方法を数学が手にしてからのことです。これ以降、数学は、イデア的なものをふりきって、多様な実存世界へ目を向け、数学の新しい方法と、未開拓な問題を見出していく方向に動いていくことになりました。(P140)
●こうして、ニュートンライプニッツがヨーロッパ数学の誕生にあたって、新しい数学の対象として捉えた私たちを取り巻く変化する世界像は、2つの方向へと数学という学問を導いていくことになったのです。/微分は、数の世界を実数から抽象的な複素数へと広げていくことにより、因果律が成り立つような関数の世界を実現しました。/一方、積分は、変化を波へと分解して、動く世界像を数学のなかで表現することを可能にしました。(P194)