とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

問題はロシアより、むしろアメリカだ

 昨年の6月に発行されており、また、収録されているエマニュエル・トッド池上彰が対談してから既に1年以上が経っている。そしてウクライナ戦争はいまだ終わっていない。昨年秋にはイスラエルのガザ侵攻があり、両者の戦闘も、一時ほど詳細には伝えられなくなり、一段落した感がある。だが、ウクライナ戦争はまだ終わっていない。ではいつ終わるのか。

 エマニュエル・トッドは、ロシアにとって、いまこの戦争をやめることは全く利益がないと言っている。一方、アメリカもいまの状況ではやめられない。ではいつまで続くのか。トッドは「5年」と言う。5年後、世界はどう変わっているだろうか。

 事由と民主主義という西洋的価値観を押し付けようとするアメリカに対して、権威主義でありつつも、あらゆる文明や国家の特殊性を尊重するロシア。日本にとってどちらがいいかと言えば、後者の方がいいと思うけども、池上彰は、それは「フィンランド化」であって、「中国と戦争にならない程度に、中国を刺激しないという形で付き合っていくのは個人的には嫌だ」(P165)と言う。どうなんだろう? 小さくとも、中国からも、世界からもリスペクトされる国家であることは可能ではないだろうか? 少なくともアメリカの腰巾着であり続けることは近いうちに不可能になりそうだ。日本の選択。エマニュエル・トッドは少なくとも池上彰よりは世界の国々の動向をよく見ているように感じる。

 

 

○「ジャーナリスト、メディアが反ロシア感情が始まるスタート地点」というふうにとらえている…。そして…ジャーナリズムという思想のなかでは、自由に対してひじょうに抽象的な考え方があったり、ちょっとエリート主義だったり…そしてロシアに対する敵対心もあったり(P42)

○経済のグローバリゼーションが進んでいくなかで、「生産よりも消費する国=貿易赤字の国」と「消費よりも生産する国=貿易黒字の国」との分岐がますます進んでいるんです。ロシアはインドや中国とともにまさに後者の代表で、天然ガスや安くて高性能な兵器、原発や農産物を世界市場に供給する「産業大国」であり続けています。/一方で、前者の貿易赤字の国とはアメリカ、イギリス、フランスなどです。材の輸入大国としてグローバリゼーションのなか国の産業基盤を失ってきている。(P63)

○ロシアと中国は、いまこの戦争をやめることに対して、全く利益がないわけですね。続けることにこそ意義があるといいますか。逆にアメリカは、自分のしかけた罠にハマってしまったような状態にいます。…ロシアと中国はいま、そんなアメリカを「つかんでやった」と思っているはずなんです。そして、このアメリカ的ヘゲモニーを崩壊させるのはいまだ、これが機会だというふうに考えているはずです。(P85)

ウクライナ戦争におけるアメリカのそもそもの目的は、私からすると「ロシアとドイツを引き離すこと」だったわけですね。…ドイツは、ここまでアメリカにひじょうに従順だったわけです。けれども、アメリカの工業面での弱さというのが本当に表れてきたときに、ドイツがどういった行動に出るかというのは注目していくべき点ですね。…このウクライナ戦争から「抜け出す」ドイツというのも、想像することはできると思います。(P138)

○フランス…は、先進諸国のなかでも経済改革…をなかなか進めなかった国なんです。…子どもを作るということに関しては、経済的な合理主義…からいったん脱することで、子ども…はもしかしたら増えるかもしれない…日本は経済合理性から脱するべきなんですけれども、ぜひ、フランスの非合理主義的な経済政策…をモデルにしてほしいと思います。(P167)