とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

読書

主権者のいない国

第1章最初の論考は「安倍政権の七年余りとは、何であったか。それは日本史上の汚点である」という痛切な文章で始まる。本書は2017年以降、各種の雑誌や新聞等に寄稿した論考を集めたものである。「国体論」で戦後の75年を、それまでの国体としての「天皇」を…

アフターバブル

昨年最初のコロナショックが襲った時、国民一人10万円の定額給付金が支給され、持続化給付金等の施策が始まった頃、筆者はそれらの施策に対して批判的な議論を展開していた。私も当時「今、するべきことは生活困窮支援。ハローワークを活用すべき」という記…

女の答えはピッチにある

2021年のサッカー本大賞を受賞した。エッセイストとあり、本書がデビュー作と言うが、次作は既に出版されているのだろうか。読んでみたいが、本書を上回る本はなかなか書けないかもしれない。それほど面白い。会社員として、既婚女性として、サッカープレー…

オオカミ県

多和田葉子の新作は「絵本」。溝上幾久子氏の版画がすばらしい。でも、子供に読ませられる類の本ではないかもしれない。だって最後には「オオカミになろうぜ」と社会への反抗を煽る内容のものだから。 オオカミ県で静かに暮らすオオカミたち。そこへ都会(東…

フットボール批評issue32

今号の特集は「J2」。グランパスがJ2に降格していた時にはよく観たが、最近はすっかり観ていない。だが、リカルド・ロドリゲスがヴォルティスにポジショナルプレーを持ち込んで以降、J2のサッカーは大きく変わったと言う。そして今季の注目はアルベルト率い…

時間は存在しない☆

時間とは何か? 尽きない疑問だ。アインシュタインが相対性理論を唱えて以降、時間は速さと共に変化するということは理解した。しかし、そもそも時間とは何か。相対性理論や量子論などの本を読んでもなお、質量や物質の存在とは存在とは別に、「時間はある」…

ヘディングはおもに頭で

2021年の「サッカー本大賞」の候補作にノミネートされていた。西崎憲という作家は聞いたことはあるような気がするが、読んだことはない。ライトノベルという雰囲気。でも、落ち着いて、淡々として、読みやすい文体は好感が持てる。調べてみると、もう65歳を…

日本語を、取り戻す。

最近の政治家の言葉には本当にげんなりする。「日本語を、取り戻す。」というタイトルはもちろん、安倍前首相の「日本を、取り戻す。」をパロディったものだが、モリカケ問題を始めとして、国会で語られる言葉は、「いかに揚げ足を取られずに、逃げ切るか」…

フットボール風土記

宇都宮徹壱が地方のサッカークラブを回って取材を重ねていることは知っていた。Jクラブを目指すチーム、あくまでアマチュアの企業スポーツであり続けるチーム。色々なチームがあることは理解している。しかし、コロナ禍が続く中、サッカークラブのあり方も変…

ワカタケル

「ワケタケル」、すなわち第21代雄略天皇の物語。この小説がどれだけ古事記や日本書紀をなぞらえ、また創作が加わっているのか知らない。ただ、魅力あふれる人物として描かれる。時に短慮で人を殺め、また大王になるために兄弟や従妹を容赦なく殺す。一方で…

フットボールクラブ哲学図鑑

先に読んだ「フットボール批評issue31」に対して、「コンセプト」という言葉の意味が不明確だと批判したが、本書では「哲学」。正直、その言葉に惹かれて読み始めたが、まえがきの6行目で「書き始めてみると哲学というよりDNA(遺伝子)という方がしっくりく…

日本習合論☆

「習合」をコトバンクで検索すると、ブリタニカ国際大百科事典では「人類学用語。文化接触によって生じる2つ以上の異質な文化的要素の混在、共存のこと」、日本国語大辞典では「哲学上または宗教上で、相異なる諸種の教理や学説が融合すること」とある。普通…

不寛容論

「寛容論」ではない。「不寛容論」である。こういうタイトルにした理由が「あとがき」に書かれている。すなわち「寛容」と「不寛容」は地続きのものであり、明確に線が引かれるべきものであった。少なくとも、「寛容/不寛容」が実質的に議論となったアメリ…

フットボール批評issue31

今号のテーマは「コンセプト」。でも、サッカーにおけるコンセプトって何だ? チーム経営のコンセプトなのか、サッカー内容についてのコンセプトなのか。どういうサッカーを目指すかというのは、フロントが決めるのか、監督が決めるのか。本書を読んでも、よ…

株式会社の世界史

「『病理』と『戦争』の500年」という副題が付いている。第1部「株式会社の500年」では、東インド会社に代表される株式会社の誕生(16世紀末)からリーマンショックとグローバリズムに至る株式会社の歴史を描く。南海泡沫事件(1711年)の発生に伴う株式会社…

愛と性と存在のはなし☆

読み始めてすぐ、次のような文章に出会う。 ○男が女の感覚をわからないこと、それはただの自然である。女が男の感覚をわからないのも。/ちがう身体を持った人への想像力を、わたしたちはほとんど持てない。まして異性の身体の内実は、想像することさえむず…

災間の唄

東日本大震災が発生した2011年から、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大した2020年までの「災間」に、コラムニスト小田嶋隆がツイッターに投降したツイートを、フリーライターの武田砂鉄が選定し、年ごとの論評を加えて、列挙したもの。各年の初めには年…

コロナ黙示録

海堂尊はここ数年、いわゆる評伝小説を多く書いている。一昨年出版した「氷獄」は、久しぶりに「桜宮サーガの復活」と騒がれ、私自身もそれを楽しく読んだが、一方で、現政権等に対する批判に満ちていた。本作品も同様、ほぼ最初から最後まで、出版当時はま…

脳は回復する

脳梗塞の後、高次脳機能障害となった鈴木大介氏と、臨床心理士である山口加代子氏が対談した「不自由な脳」を先に読んだ。鈴木大介氏は別途、単著で、自らの障害とその回復の状況について書き著した本を出している。その中でも、より回復が進んだ状況の中で…

恥ずかしい人たち

「恥ずかしい人たち」について書いたと言うのだが、読み終えて、何が、誰が「恥ずかしい人」だったのか、判然としない。本書は「週刊新潮」での連載コラムをまとめたものだが、ただただその時々の世間の状況をネットニュース編集者という第三者的な位置から…

中流崩壊

格差拡大が言われる中で、「総中流社会」という言葉が使われることは少なくなった。それでも2015年の衆議院本会議で当時の安倍首相は「国民の中流意識は根強く続いている」と言ったそうだから、今でも「自分は中流」と思っている国民は多いのだろう。しかし…

民主主義とは何か

宇野重規と言えば、日本学術会議で任命を拒否された6人のうちの一人ということで、どんなことを書いているのかと多少の興味もあったが、案の定、ごく普通の、学問的内容の本だった。中日新聞には定期的に論説が掲載されているが、浜矩子に比べれば、はるかに…

コモンの再生

「コモンの再生」というタイトルに惹かれ、図書館が休館になる前に、あわてて本館まで受け取りに行った。でも本書は「コモン」について集中的に述べられた本ではない。「GQ JAPAN」で連載中のエッセイを本にしたものだ。エッセイの内容に応じ、大きく4つの章…

わかりやすさの罪

世の中は複雑で「わかりにくいこと」が多いが、一方でそれを「わかりやすく」整理して提供しようとする言説にあふれている。また、人々も「わかりやすこと」をいいこととし、求めてもいる。しかし「わかりやすく」することで漏れることも多いし、漏れたこと…

私たちはどんな世界を生きているか

筆者の西谷修という人を私はこれまで全く知らなかった。フランス思想の研究者。ネトウからすれば、かなり左寄りの学者ということになるだろうか。日本学術会議の名簿に掲載されたら、任命拒否にあうような。それでも「はじめに」で披露される現在の社会状況…

朝鮮戦争の正体

1950年に開戦し今も休戦状態が続く朝鮮戦争については、軍需景気により日本が敗戦後の壊滅状態から経済的復興を遂げる契機になったという程度のことしか知らない。ソ連とアメリカの代理戦争という認識ではあったが、ソ連やアメリカ、そして中国はどう関わっ…

彼らは世界にはなればなれに立っている☆

待望の、太田愛の新刊が出版された。「天上の葦」などに登場した3人が活躍する社会派ミステリーではなく、何とファンタジー。 序章で提示される1枚の写真。楽しいパーティーの一幕に登場する11名の運命が、その後、わずかの間に大きく暗転する。それを4人の…

2020年、私が読んだ本ベスト10

今年読んだのは65冊(他に、都市・住宅関係の本が12冊。これも少ない)。今年は妻の病気もあり、年の後半以降は落ち着いて読んでいることができなかった。来年予定している仕事の準備に時間が取られたことも一因。中でも、面白いサッカー本に巡り合うことが…

Iの悲劇

昨年、図書館で予約して、ようやく順番が回ってきた。ところでどうして僕はこの本を予約したのだろう。どこかの書評で高評価だったのだろうか。読み始めてみたが、大して面白くもない。「Iの悲劇」の「I」とは、「Iターン」の「I」だと気付いたが、Iターン者…

フットボール批評issue30

今号の特集は「プレミアリーグ」。それもBIG6ではなく、それ以外の、最近、BIG6を脅かして奮闘しているレスターやエヴァートン、アストンビラ、リーズ、シェフィールド、ウルブズなどのチームを取り上げる。確かに今季のプレミアリーグはアーセナルやマンCが…