とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

読書

問題はロシアより、むしろアメリカだ

昨年の6月に発行されており、また、収録されているエマニュエル・トッドと池上彰が対談してから既に1年以上が経っている。そしてウクライナ戦争はいまだ終わっていない。昨年秋にはイスラエルのガザ侵攻があり、両者の戦闘も、一時ほど詳細には伝えられなく…

<きゅんメロ>の法則

「ザ・カセットテープ・ミュージック」(BS12)は欠かさず見ている。本書も放送で紹介していたが、なんと地元の図書館の新書リストに掲載されていたので、思わず予約してしまった。タイトルの<きゅんメロ>は、「F→G→Em→Am」と続くコードのことで、洋楽ではあ…

街場の成熟論

いつものように、さまざまな媒体に寄稿した文章を集めたコンピレーション本である。多くは、いつか読んだような内容である。でも、読みやすいし、まあ面白い。ウクライナ紛争に対する見方には賛成しないけどね。 でも、中でも興味深く読んだのは、「セックス…

孝明天皇毒殺説の真相に迫る

中村彰彦氏は直木賞も受賞している歴史小説家である。ということを、私は本書を手にするまで知らなかった。明治維新の裏で、いろいろな陰謀や画策があったという話はよく聞く。孝明天皇が若くして逝去した裏にも何かあったのではないか。明治以降の時代背景…

競争闘争理論

だいぶ前に「スポーツはすべて記録型と対戦型に分けられる?」という記事を投稿したことがある。本書ではまず、すべてのスポーツを「競争型」と「闘争型」に分ける。ほぼ私の分け方と同じだ。本書ではさらに、それぞれを「個人」と「団体」に分け、さらに「…

未明の砦☆

久し振りに、太田愛の新作が出た。前作の「彼らは世界にはなればなれに立っている」がなんとファンタジー。もちろんいい小説だったが、今度の新作はいつもの社会派ミステリー。やはり太田愛にはこうした小説を書いてもらいたい。 今回のテーマは、非正規社員…

日本が滅びる前に

先に読んだ「政治はケンカだ!」は面白かった。その後も、泉氏は何冊も本を出しているが、とりあえず本書を読んでみた。でもまあ、普段、Xなどで主張していることと同じことが書かれている。多少、目新しかったのは、「子ども施策は経済政策でもある」という…

人は違和感が9割

芸人やタレントで、リベラルな立場からしっかり主張し、コラムなどを書いているのは、ラサール石井と松尾貴史くらいか。もっとも二人のコラムは、Xの投稿などを辿って、新聞に掲載されたものを読むだけで、まとめて本になったものを読んだことはなかった。…

ジダン研究☆

体調を崩して、娘に図書館へ行ってもらった。借りてきた本を見てびっくりした。厚い! 815ページもある。六法全書か。でも、ことサッカーのことであれば、それほど苦労せずに読める。1週間で読み終わった。 冒頭の「はじめに」にこう書かれている。 ○これは…

なぜ気象学者は間違ったか☆

「地球温暖化論争の疑問を追う」という副題が付いている。地球温暖化理論については、これまで疑問を呈する側の本を多く読んできた。たとえば、「『地球温暖化』神話」や「気候変動の真実」などのように、IPCCの報告書には偽造があるとか、政治的思惑で決め…

ザイム真理教☆

これまで森永卓郎は庶民派の経済評論家として好意的な目で見てきた。しかし、著書を読んだことはない。新自由主義的な政策には批判的というイメージはあったが、実際のところ、どんな経済政策を支持し、提言しているのかは知らなかった。財務省の「財政均衡…

堤未果のショック・ドクトリン

「ショック・ドクトリン」は、本書でも紹介されているように、アメリカの同時多発テロやハリケーン・カトリーナによる災害などが発生した後の2007年に、ナオミ・クラインにより執筆され、刊行された本のタイトル。同時多発テロの際に、世界貿易センタービル…

なんかいやな感じ☆

武田砂鉄の本はデビュー作の「紋切型社会」以降、ほとんど読んできた。言葉はわかりやすいが、ある事柄に対してねちねち・ぐるぐるとあらゆる角度から批評しようとする。はっきりした結論に至らず、結局、何が言いたいのかわからなくなる。そんな文章も多く…

新しい戦前

「新しい戦前」というのは2022年末に、タモリが「徹子の部屋」で述べた言葉だけど、「言い得て妙」というか、今の状況をうまく表現した言葉だと思う。そしてさっそく、本書でタイトルとして使用された。これって、タモリの了承は得ているのだろうか? まあ、…

私労働小説

「リスペクト―R-E-S-P-E-C-T」は昨年読んだ本の中で最も心に残った。それで、続いて発行された本書も読んでみた。扉裏に自伝的小説と書かれている。すべてがフィクションではなくとも、近いことはいろいろ経験したのだろう。 本書の中でもっとも心を打たれた…

2023年、私が読んだ本ベスト10

今年読んだのは54冊。昨年より少し多いが、都市・建築系の本も含めて65冊はほぼ週1冊のペース。まあそんなもんか。でも例年よりも面白い本が多かった印象。そうでもないかな。まあ来年もボチボチと本を読んでいこう。 [第1位]リスペクト―R-E-S-P-E-C-T (ブ…

うどん陣営の受難

津村記久子は「ディス・イズ・ザ・デイ」から読み始めたが、その後は出るたびに読んでいる。今年の夏には「つまらない住宅地のすべての家」がNHKでドラマとして放送されていた。けっこう津村ファンっているんだなと思った。 今年読んだ「水車小屋のネネ」も…

スピノザ☆

先月読んだ、國分功一郎の「目的への抵抗」は面白かったとはいうものの、講演録で、イマイチ掘り下げが足りないと感じた。その前に読んだ「資本主義の次に来る世界」で、デカルトから始まる機械論哲学が現代の資本主義を招き寄せたとして、「スピノザの思想…

外来種は悪じゃない☆

これまで何冊か、外来種駆除を批判する本を読んできた。「外来種は本当に悪者か?」、「池の水ぜんぶ”は”抜くな!」など。本書もその類の本多が、これが一番わかりやすいのではないかな。 第1章、第2章で、ミシシッピアカミミガメやアメリカザリガニ、ブラッ…

ニホンという病

これまで養老孟司の本は読んだことがない。と何度も書いてきたが、対談本はいくつか読んでいた。改めてその感想文を読んでみると、意外に「面白い」という感想が多い。「意外に」と書いたのは、本書はそれほど面白いとは思わなかったから。それは対談相手の…

科学と資本主義の未来

2019年に出版された「人口減少社会のデザイン」、2021年に出版された「無と意識の人類史」に続く3部作として執筆したと言う。前2冊も難解、というか、広井哲学はどこへ向かうのかと思ったが、集大成の本書では、さらに整理され、科学哲学史としての筆者の構…

リスペクト―R-E-S-P-E-C-T☆

先々週の中日新聞の書評に本書が載っていて、これは読まねばなるまいとすぐに注文した。そう思ったのは、本書がイギリスで実際にあった公営住宅占拠事件をモデルにした小説だから。でも期待以上に面白い。いや、文芸作品としての評価はどうか知らないが、「…

政治はケンカだ!☆

泉房穂氏が明石市長を退任した翌日に本書は発行された。その後、泉氏自身の手で何冊も本が発行されているが、まずは本書を読んでおこうと思った。でもタイトルがよくない。「政治はケンカだ!」。これは政局好きな人にも面白いかもしれないが、「政局より政…

目的への抵抗

久し振りに國分功一郎の本を読んだ。「スピノザ」も買ったが、こちらの方が薄かったので先に。コロナ禍の2020年と2022年に実施した二度の講義(講話)を収録したもの。 前者(第1部)は、コロナ危機に伴う外出禁止等の制限に対して異議を申し立てたアガンベ…

所有とは何か

「資本主義の次に来る世界」の中で、資本主義的所有観はロックから始まったという記述があったように思う。斎藤幸平の本を読んでも、「所有」の始まりが資本主義の始まりのように感じる。所有とは何か。そんな疑問にまさに答えてくれる本ではないかと思って…

帝国と宗教

これまで宗教学系の本は何冊も読んできたが、島田裕巳氏の本を読んだのは初めてかもしれない。名前は知っていたけど、なぜか触手が伸びなかった。本書はタイトルに惹かれた。ローマの時代から多くの帝国は宗教と手を携え、または時に争いながら、盛衰を繰り…

英語は「語源×世界史」を知ると面白い

英語は苦手だった。というか、とにかく出来なかった。就職試験になぜか英語の試験があって、それがなければその後は違った経歴だったかもしれない、とまで思う。そもそも中学1年の時に、「sometimesはソメチメスだ」と言う友人がいて、そうやって覚えたのが…

人口と世界

2021年8月から23年4月まで日本経済新聞に連載してきた記事を加筆・再構成したもの。日本だけでなく、中国もいよいよ人口減少を始め、世界人口も21世紀後半には減少局面になっていく。各国の人口動向と取り組まれている対策などを紹介し、また有識者へのイン…

分断と凋落の日本

読んでいると気が滅入ってくる。確かに日本は凋落した。その原因は、安倍政権にある。ではどうすればそこから抜け出ることができるのか。再生の道はあるのか。筆者なりの提言が書かれた第6章の冒頭で、さまざまな分野の専門家と話をしても結局、「もう手遅れ…

資本主義の次に来る世界☆

資本主義の次に来る世界。それは脱成長による生態系の維持・安定を基本にした民主主義的な世界。本書は大きく、資本主義がいかに世界を壊すかを指摘する第1部「多いほうが貧しい」と、ポスト資本主義のイメージを語る第2部「少ないほうが豊か」で構成される…