とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

読書

太陽諸島☆

タイトルを見たときには、「地球にちりばめられて」「星に仄めかされて」に続く3部作の最終編とは思わなかった。Hiruko、クヌート、アカッシュ、ナヌート、ノラ、そしてSusanoo、6人揃って、Hirukoの失われた国をめざし、船で東へ向かう。船の食堂には6つの…

死刑について☆

先に「『死刑ハンコ』辞任騒動に対する違和感」という記事を書いたが、この騒動は、死刑制度について考える非常に良い機会だったと思う。だが、結局、それは辞任ドミノへと政治的に費消されただけに終わってしまった。 平野啓一郎は、その初期に何冊か本を読…

今日拾った言葉たち

2016年春から2022年夏まで、「暮らしの手帖」で連載してきたエッセイをまとめ直したもの。その間に13編のコラムが入る。欄外に「この頃の出来事」が記され、「マイナンバー制度開始」とある。同じページの本欄には「税収というのは国民から吸い上げたもので…

人はなぜ物語を求めるのか

「人はなぜ物語を求めるのか」? それは、人がそういう形式で認知するようにできているから。一言で言ってしまえば、そういうことだが、本書では、多くの事例でもってそのことを示していくとともに、物語化することで安心し、納得してしまうことに対して警鐘…

歴史学者という病

本郷和人は、テレビのバラエティ番組でもよく拝見する。ただ、これまで彼の書いた歴史書を読んだことがなかった。一つの歴史事象について徹底的に調べて解き明かすというよりも、歴史全般を対象に、トリビア的な事柄を披露しつつ、独自の視点から日本史を語…

掌に眠る舞台

小川洋子の最新短編集。劇場や舞台をテーマにした小品が8編。最初、テーマがわからなかった。作品のタイトルの意味もわからなかった。最初の作品は「指紋のついた羽」。町野文化会館で上演されたバレエ「ラ・シルフィード」を観に行った後、妖精「ラ・シルフ…

ミャンマーの矛盾

ミャンマーのロヒンギャに対する迫害やクーデターなどのニュースは聞いてはいたが、その内実まで深くは理解していなかった。本書は東京新聞(中日新聞)バンコク特派員として3年間、現地に滞在してミャンマーを取材してきた記者がその現状と実態をレポートし…

みんな政治でバカになる

「あとがき」の冒頭、「本書は…『オルタナレフト論』を加筆修正したものである……と本当は書きたかったのだが、すぐに更新が滞りがちになり…」、結果的に「『知識人と大衆という古めかしい問題を現代風にアレンジしてみた』に落ち着いた」(P249)と自己評価し…

ヨーロッパ史入門 市民革命から現代へ

「ヨーロッパ史入門」の後編は18世紀から現代まで。フランス革命やアメリカ独立革命以降の歴史については知っていることも多いが、それ以前はあまりしっかりとは頭に入っていない。そもそも神聖ローマ帝国やハプスブルク帝国、オスマン帝国などが隆盛を誇っ…

ヨーロッパ史入門 原型から近代への始動☆

○「ヨーロッパ」とは、地理的にも言語的にも、あるいはいわゆる人種や民族といった点でも、固定したものでは決してなく、多様な物質的・精神的な要素が入り混じってできあがっていったものです。そして広い意味での文化のまとまりとしてヨーロッパが形を整え…

DO YOU SPEAK FOOTBALL? 世界のフットボール表現事典☆

世界中でプレーされてきたサッカー。イタリアではカルチョ・フィオレンティーノこそ現代フットボールの起源だという架空の説が受け入れられ、フットボールと言わず、カルチョと呼ばれるように、各国でサッカー用語やサッカーにまつわる様々な表現が独自に発…

それでも世界はよくなっている

タイトルに惹かれて借りたが、小学生向けの児童書だ。「人はやさしさと共感と希望にみちている」という第1章に異論はない。第2章以降、政治、環境、医療、平等、芸術について、「悪いニュースばかりだと思うかもしれない」でも「少しでも良くなる方向でがん…

フットボール批評 issue37

今号の特集は「[プレーモデル][プレーコンセプト][プレースタイル]を再定義する」。多くの記事で「○○さんはこれらの言葉をどう定義していますか?」と聞くのだが、正直、読めば読むほど混乱する。そもそも私自身がこれらの言葉についてしっかりとした定義を…

現代思想入門

今年の春に発行された時、けっこうな話題となっていた。でも、千葉雅也って誰だ? それで、千葉雅也と國分功一郎の対談本である「言葉が消滅する前に」を先に読んでみた。でも、千葉がどうやら同性愛者だということ以外、あまりよくわからなかった。それで本…

マスメディアとは何か

日頃、とかくマスコミに対しては「マスゴミ」などと否定的に言ってしまうことが少なくない。一方、マスメディアの効果に対してはプロパガンダという言葉に代表されるように過大に評価し、恐れるイメージがある。本書では冒頭の第1章「メスメディアは『魔法の…

長期腐敗体制☆

「長期腐敗体制」というタイトルからは、安倍政権から現在まで続く自民党政権を批判する本だとは知れるが、単に政権批判の本ではなかった。2012年の年末、衆議院解散総選挙で自民党が大勝し、安部二次政権がスタートしてから現在までの状況を「2012年体制」…

ルポ 誰が国語力を殺すのか

久し振りに石田光太を読んだ。社会の最底辺の人々を取材し、ルポタージュしてきた石田。だが、それは読む者にとっては、少ししんどい。「国語力」というテーマなら多少は気楽に読めるかなと思い、本書を手に取った。でももちろん石田光太が取り上げる現場は…

撤退論

4月に本書が発行された時、すぐに読みたいとは思わなかった。「撤退」という言葉に嫌悪を感じた。10年ほど前なら特に違和感なく手に取っただろう。だがそれからだいぶ時代が変わった。いや単に私が定年退職し、毎日、家で過ごすようになったからだろうか。そ…

アーセン・ヴェンゲル自伝 赤と白、わが人生

Jリーグが開幕し、当然のように地元のグランパスを応援した。開幕当初はガンバ、レッズと並んでお荷物クラブのグランパスだったが、ヴェンゲル監督が就任してサッカーが変わった。Jリーグでは2位まで躍進し、天皇杯を制した。しかし翌年のシーズン半ば、突如…

ほんとうの多様性についての話をしよう

大きな字、わかりやすい表現。借りる前から薄々は想定していたことではあるが、ひょっとしてこれは子供向けの本だったかもしれない。「ドイツ人の父親と日本人の母親の間に生まれ、23歳までミュンヘンで過ごし、その後20年以上に渡り日本に住んでい」(P7)る…

過剰可視化社会

SNSの流行やコロナ禍において、情報を「見せる」ことで国民を操ろうとする傾向や、自らカミングアウトすることで安心を得ようとする傾向が強まったという。そうした状況を「過剰可視化社会」と批判し、人間本来の安心・信頼のある社会を創っていくためには、…

歴史人口学で見た日本(増補版)

本書は2001年に出版されたものの増補版である。筆者の速水融は2019年に90歳で亡くなったが、日本における「歴史人口学」はまさに彼が導入し、発展させてきた学問である。「教区簿冊」を研究することで「歴史人口学」を創設したルイ・アンリの方法に倣い、速…

「日本型格差社会」からの脱却

先に読んだ「逆境の資本主義」でも、資本主義の問題は、格差を拡大してしまうところにあることがわかる。日本においても格差の拡大が大きな問題と立ち現れている。そこで本書を手に取った。筆者の岩田規久男は2013年、黒田日銀総裁とともに副総裁に就任した…

逆境の資本主義

日本経済新聞で2020年1月から始めた連載記事を中心に構成した本だと言う。「逆境の資本主義」「「コロナと資本主義」という二つのテーマの下に、資本主義が直面している問題とその解決策について、世界の著名な経済学者や投資家などにインタビューをしていく…

気候変動の真実☆

筆者のスティーブン・クーニンはカリフォルニア工科大学の教授を長く務め、オバマ政権下ではエネルギー省の科学担当次官も務めたアメリカを代表する科学者の一人だ。民主党はゴア副大統領の頃から地球温暖化対策に積極的に取り組んできた。トランプ大統領の…

フットボール批評issue36

「参謀」という特集だが、結局、監督ひとりでは強いチームを作ることはできない。社長やGMなどの経営陣はもちろんだが、ヘッドコーチ以下、一丸となって取り組まなくてはならない。どれほど優秀な参謀であっても、監督との良い関係性があって初めて生きる。…

コロナ後の未来

「あとがき」に以下のような文章があってびっくりした。 ○2000年代を迎えるにあたって私たちは「ミレニアム」と口にして、新しい時代の訪れを寿ぎました。…世界はつながり、どんどん快適になっていく―。/グローバリゼーションの熱に浮かされた私たちの危う…

ノーベル文学賞のすべて

「ノーベル文学賞のすべて」というタイトルに、その選考における様々なエピソードや選考方法とその偏りなどが紹介されていることを期待した。編著者の中心である都甲幸治が綴る冒頭の「ノーベル文学賞とは何か」でそうしたことが説明される。が、なにせ1901…

ポリコレの正体

女性差別等がしっかり解消されない中で、LGBT等に対する施策ばかりが進んでいく状況には違和感を持っている。まるでLGBT施策に取り組んでいれば、女性差別問題のみならず、障害者や生活困窮者の問題等も解消されるかのようだ。「障害者」と言えば、「害」の…

デジタル・ファシズム

一昨年来のコロナ禍では、台湾や韓国、中国などに比べて、日本のデジタル化の遅れが指摘された。そうした状況の中、昨年5月にはデジタル庁が発足した。マイナンバーカードの普及はそれ以前から強く勧められ、昨年秋からは保険証との連携も始まった。ポイント…