とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

読書

私たちはどんな世界を生きているか

筆者の西谷修という人を私はこれまで全く知らなかった。フランス思想の研究者。ネトウからすれば、かなり左寄りの学者ということになるだろうか。日本学術会議の名簿に掲載されたら、任命拒否にあうような。それでも「はじめに」で披露される現在の社会状況…

朝鮮戦争の正体

1950年に開戦し今も休戦状態が続く朝鮮戦争については、軍需景気により日本が敗戦後の壊滅状態から経済的復興を遂げる契機になったという程度のことしか知らない。ソ連とアメリカの代理戦争という認識ではあったが、ソ連やアメリカ、そして中国はどう関わっ…

彼らは世界にはなればなれに立っている☆

待望の、太田愛の新刊が出版された。「天上の葦」などに登場した3人が活躍する社会派ミステリーではなく、何とファンタジー。 序章で提示される1枚の写真。楽しいパーティーの一幕に登場する11名の運命が、その後、わずかの間に大きく暗転する。それを4人の…

2020年、私が読んだ本ベスト10

今年読んだのは65冊(他に、都市・住宅関係の本が12冊。これも少ない)。今年は妻の病気もあり、年の後半以降は落ち着いて読んでいることができなかった。来年予定している仕事の準備に時間が取られたことも一因。中でも、面白いサッカー本に巡り合うことが…

Iの悲劇

昨年、図書館で予約して、ようやく順番が回ってきた。ところでどうして僕はこの本を予約したのだろう。どこかの書評で高評価だったのだろうか。読み始めてみたが、大して面白くもない。「Iの悲劇」の「I」とは、「Iターン」の「I」だと気付いたが、Iターン者…

フットボール批評issue30

今号の特集は「プレミアリーグ」。それもBIG6ではなく、それ以外の、最近、BIG6を脅かして奮闘しているレスターやエヴァートン、アストンビラ、リーズ、シェフィールド、ウルブズなどのチームを取り上げる。確かに今季のプレミアリーグはアーセナルやマンCが…

三度目の恋

伊勢物語が今、脚光を浴びているようだ。先日は「100分de名著」で取り上げられ、「小説伊勢物語」を執筆した高樹のぶ子が指南役として解説をしていた。そして本書もまた、伊勢物語がモチーフになっている。「あとがき」によれば、2017年に「伊勢物語をモチー…

貧乏国ニッポン

テレビ朝日のモーニングショーで経済問題について解説をする姿を今春頃からよく見かけるようになった。話す内容が明晰でわかりやすい。今年5月に発行された本だが、遅ればせながら読んでみた。日本が貧しい国になりつつあることは、内田樹も先日の講演会で述…

武器としての「資本論」

白井聡と言えば、少し前に、松任谷由実を批判してネットで叩かれていたことが思い出される。私も松任谷由実の政権擁護の発言には少しびっくりしたので、白井聡の気持ちはわからないでもない。それはさておき「資本論」である。「おわりに」で書かれているが…

不自由な脳

脳梗塞を患い、退院後、高次脳機能障害を抱えつつも精力的に執筆活動などを続けている鈴木大介氏と、臨床心理士の山口加代子氏との対談集。鈴木氏の経験というのはやはり個人的なもので、それがそのまま他の高次脳機能障害者の症状や経験に重なるわけではな…

日韓が和解する日

「街場の日韓論」に、筆者の論考が掲載されていた。そこには、「徴用工問題に関する韓国大法院の判決は、『日韓請求権協定に基づく請求権は既に満たされている』とした上で、『違法な植民地支配』に基づく請求権という新しい考え方を提示し、請求権を認めた…

人新世の「資本論」☆

この本も内田樹の講演を聞いて、読もうと思った。面白かった。そして、本当に斎藤氏の言うとおりだと思った。人類は、人類に危機と滅亡をもたらす資本主義をすぐにも捨て去り、新たな経済システムに移らなくてはならない。それが「脱成長コミュニズム」だ。…

82年生まれ、キム・ジヨン

韓国でベストセラーになり、日本でも話題になった本だという程度の知識しかなかったが、読み始めてようやく、女性の置かれた過酷な状況を訴える、いわゆるフェミニズム小説だと知った。本書で描かれる女性差別の実態の多くは、日本においても私が母親から聞…

コロナと生きる

コロナ禍も刻々と変化している。本書は5~7月に行われた対談を収録したものなので、どうしようかと思っていたけれど、先日、内田樹の講演を聴いた時に、本書で話された内容が多く含まれているように感じたので読んでみようと思った。もっとも対談集であり、…

『死海文書』物語

キリスト教関連の本を読んでいると、しばしば「死海文書」について書かれることがある。そこには、聖書には含まれなかった聖典などがあり、正統的なキリスト教宗派に対して、批判的な見解の論拠とされることもある。そんなイメージを持っていたが、そもそも…

熱源☆

今年1月の直木賞を受賞した。図書館で予約していたが、ようやく順番が回ってきた。そして感動した。歴史物語だから、直木賞ということかな。いや、芥川賞でもいい位だ。 厳寒の地、樺太(サハリン)の物語なのに、どうして「熱源」というタイトルなのだろう…

猫を棄てる

「父親について語るとき」という副題がついている。村上春樹が父について語った本として話題になっている。その父は、召集され、中国で人が人の首をはねるという場面を体験し、それを息子に語った。そして日本に帰り、その後の2度の招集も幸運に助けられて生…

「深層」カルロス・ゴーンとの対話

ゴーン氏のレバノンへの突然の不法出国があったのは、昨年の大晦日。まだ9ヶ月しか経っていないのに、もうすっかり過去のことのようだ。一昨年11月に、ゴーン氏の突然の逮捕があって以降、マスコミ的には「ゴーン氏の強欲」話がもっぱらだったが、わが家的に…

「バカ」の研究

「バカ」とは何か。本書は、フランスの心理学者であるジャン=フランソワ・マルミオンが編者となり、多くの学者などに執筆を依頼してまとめた論文・インタビュー集だ。全部で24人の学者等が参加しているが、「バカ」の定義を一義的に定めているわけではない…

リスクの正体

筆者が朝日新聞に2014年から連載してきたコラム、「月間安心新聞」および「月間安心新聞plus」を再編集したもの。このコラムは今も継続されているが、本書では今年2月分までを収録している。本書を手に取って初めて気が付いたが、筆者は神里達博。「文明探偵…

見えないものとの対話

大和書房のホームページで連載しているエッセイを収録したもの。平川克美と言えば、内田樹の幼馴染で、東京下町の町工場の生まれであり、「経済成長という病」など、実業家の立場から新自由主義に対して批判的な論考を多く書いている。しかし本書はそうした…

フットボール批評 issue29

今号の特集は「アーセナル」。これまで、海外のチームをテーマにしたことがあっただろうか。それも徹頭徹尾アーセナル。これまで日本のチームを取り上げた際も、本誌後半の連載物は、特集したチームとは関係なく書かれていることが普通。第一、特定のチーム…

新型コロナウイルスの真実

岩田健太郎氏と言えば、単身、ダイヤモンド・プリンセス号に乗り込み、感染対策が不十分なことを暴露した医師として有名だ。その事件の後、たぶん初めて取材を受け、発行した本だと思う。「新型コロナウイルスの真実」というタイトルがついているが、まだわ…

街場の日韓論

安倍総理の突然の辞任表明。そして今は自民党総裁選の真っ只中だが、各候補者が話した日韓関係に関する方針等がマスコミに大きく取り上げることは少ない。「過去最悪の日韓関係」と「まえがき」に書かれているが、昨年のGSOMIAに至る様々な出来事は現在も何…

フィデル出陣☆

「フィデル誕生」の続編となる「ポーラースター」シリーズの第4部。「フィデル誕生」の読書感想で、「第4部ではカストロとゲバラが出合い、キューバ革命が進行していくのだろう」と書いたが、そうではなかった。本書の最後でようやくカストロとゲバラは出合…

プラヴィエクとそのほかの時代☆

オルガ・トカルチュクの邦訳3作目、「プラヴィエクとそのほかの時代」を読んだ。邦訳は3作目だが、ポーランドでの執筆と発行は最も早く、1996年に出版されている。そして3作の中では最も読みやすい。 プラヴィエクというポーランド西部の架空の土地を舞台に…

真実の終わり

機関銃のようにトランプ批判が乱射される。筆者は全米一の辛口で辛辣な文芸批評家と言われるそうだが、その銃口がトランプ政権に向けられ、嘘とポピュリズムでアメリカの政治を奪い、全体主義へ導こうとしていると批判する。だが、筆者が真実と主張するロシ…

街場の親子論

思想家である内田樹と娘の「るん」さんとの往復書簡集である。「るん」さんのことはこれまでの内田樹の本の中でもある程度書かれていたが、独り立ちして以降のことはあまり書かれていない。高校を卒業した後、離婚した妻(「るん」さんにとっては母親)と一…

動物感覚

○私は動物がどんなふうに考えているかわかるのだが(P9) 書き出しを読んでびっくりした。えっ、そこまで自信を持って、自分は動物の気持ちがわかると言ってしまっていいの? でも読み進めるうちに、確かにそう言っても過言ではないということがわかってくる。…

カササギ殺人事件☆

久しぶりに面白い推理小説を読んだ。2018年秋の出版だが、その後、日本のミステリ関係の賞を総なめにしている。これにはちょっと興味が引かれ、図書館で予約した。コロナ禍もあって順番が回ってくるまで時間がかかったが、ようやく読み終えた。普段ほとんど…