とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

読書

フットボール風土記

宇都宮徹壱が地方のサッカークラブを回って取材を重ねていることは知っていた。Jクラブを目指すチーム、あくまでアマチュアの企業スポーツであり続けるチーム。色々なチームがあることは理解している。しかし、コロナ禍が続く中、サッカークラブのあり方も変…

ワカタケル

「ワケタケル」、すなわち第21代雄略天皇の物語。この小説がどれだけ古事記や日本書紀をなぞらえ、また創作が加わっているのか知らない。ただ、魅力あふれる人物として描かれる。時に短慮で人を殺め、また大王になるために兄弟や従妹を容赦なく殺す。一方で…

フットボールクラブ哲学図鑑

先に読んだ「フットボール批評issue31」に対して、「コンセプト」という言葉の意味が不明確だと批判したが、本書では「哲学」。正直、その言葉に惹かれて読み始めたが、まえがきの6行目で「書き始めてみると哲学というよりDNA(遺伝子)という方がしっくりく…

日本習合論☆

「習合」をコトバンクで検索すると、ブリタニカ国際大百科事典では「人類学用語。文化接触によって生じる2つ以上の異質な文化的要素の混在、共存のこと」、日本国語大辞典では「哲学上または宗教上で、相異なる諸種の教理や学説が融合すること」とある。普通…

不寛容論

「寛容論」ではない。「不寛容論」である。こういうタイトルにした理由が「あとがき」に書かれている。すなわち「寛容」と「不寛容」は地続きのものであり、明確に線が引かれるべきものであった。少なくとも、「寛容/不寛容」が実質的に議論となったアメリ…

フットボール批評issue31

今号のテーマは「コンセプト」。でも、サッカーにおけるコンセプトって何だ? チーム経営のコンセプトなのか、サッカー内容についてのコンセプトなのか。どういうサッカーを目指すかというのは、フロントが決めるのか、監督が決めるのか。本書を読んでも、よ…

株式会社の世界史

「『病理』と『戦争』の500年」という副題が付いている。第1部「株式会社の500年」では、東インド会社に代表される株式会社の誕生(16世紀末)からリーマンショックとグローバリズムに至る株式会社の歴史を描く。南海泡沫事件(1711年)の発生に伴う株式会社…

愛と性と存在のはなし☆

読み始めてすぐ、次のような文章に出会う。 ○男が女の感覚をわからないこと、それはただの自然である。女が男の感覚をわからないのも。/ちがう身体を持った人への想像力を、わたしたちはほとんど持てない。まして異性の身体の内実は、想像することさえむず…

災間の唄

東日本大震災が発生した2011年から、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大した2020年までの「災間」に、コラムニスト小田嶋隆がツイッターに投降したツイートを、フリーライターの武田砂鉄が選定し、年ごとの論評を加えて、列挙したもの。各年の初めには年…

コロナ黙示録

海堂尊はここ数年、いわゆる評伝小説を多く書いている。一昨年出版した「氷獄」は、久しぶりに「桜宮サーガの復活」と騒がれ、私自身もそれを楽しく読んだが、一方で、現政権等に対する批判に満ちていた。本作品も同様、ほぼ最初から最後まで、出版当時はま…

脳は回復する

脳梗塞の後、高次脳機能障害となった鈴木大介氏と、臨床心理士である山口加代子氏が対談した「不自由な脳」を先に読んだ。鈴木大介氏は別途、単著で、自らの障害とその回復の状況について書き著した本を出している。その中でも、より回復が進んだ状況の中で…

恥ずかしい人たち

「恥ずかしい人たち」について書いたと言うのだが、読み終えて、何が、誰が「恥ずかしい人」だったのか、判然としない。本書は「週刊新潮」での連載コラムをまとめたものだが、ただただその時々の世間の状況をネットニュース編集者という第三者的な位置から…

中流崩壊

格差拡大が言われる中で、「総中流社会」という言葉が使われることは少なくなった。それでも2015年の衆議院本会議で当時の安倍首相は「国民の中流意識は根強く続いている」と言ったそうだから、今でも「自分は中流」と思っている国民は多いのだろう。しかし…

民主主義とは何か

宇野重規と言えば、日本学術会議で任命を拒否された6人のうちの一人ということで、どんなことを書いているのかと多少の興味もあったが、案の定、ごく普通の、学問的内容の本だった。中日新聞には定期的に論説が掲載されているが、浜矩子に比べれば、はるかに…

コモンの再生

「コモンの再生」というタイトルに惹かれ、図書館が休館になる前に、あわてて本館まで受け取りに行った。でも本書は「コモン」について集中的に述べられた本ではない。「GQ JAPAN」で連載中のエッセイを本にしたものだ。エッセイの内容に応じ、大きく4つの章…

わかりやすさの罪

世の中は複雑で「わかりにくいこと」が多いが、一方でそれを「わかりやすく」整理して提供しようとする言説にあふれている。また、人々も「わかりやすこと」をいいこととし、求めてもいる。しかし「わかりやすく」することで漏れることも多いし、漏れたこと…

私たちはどんな世界を生きているか

筆者の西谷修という人を私はこれまで全く知らなかった。フランス思想の研究者。ネトウからすれば、かなり左寄りの学者ということになるだろうか。日本学術会議の名簿に掲載されたら、任命拒否にあうような。それでも「はじめに」で披露される現在の社会状況…

朝鮮戦争の正体

1950年に開戦し今も休戦状態が続く朝鮮戦争については、軍需景気により日本が敗戦後の壊滅状態から経済的復興を遂げる契機になったという程度のことしか知らない。ソ連とアメリカの代理戦争という認識ではあったが、ソ連やアメリカ、そして中国はどう関わっ…

彼らは世界にはなればなれに立っている☆

待望の、太田愛の新刊が出版された。「天上の葦」などに登場した3人が活躍する社会派ミステリーではなく、何とファンタジー。 序章で提示される1枚の写真。楽しいパーティーの一幕に登場する11名の運命が、その後、わずかの間に大きく暗転する。それを4人の…

2020年、私が読んだ本ベスト10

今年読んだのは65冊(他に、都市・住宅関係の本が12冊。これも少ない)。今年は妻の病気もあり、年の後半以降は落ち着いて読んでいることができなかった。来年予定している仕事の準備に時間が取られたことも一因。中でも、面白いサッカー本に巡り合うことが…

Iの悲劇

昨年、図書館で予約して、ようやく順番が回ってきた。ところでどうして僕はこの本を予約したのだろう。どこかの書評で高評価だったのだろうか。読み始めてみたが、大して面白くもない。「Iの悲劇」の「I」とは、「Iターン」の「I」だと気付いたが、Iターン者…

フットボール批評issue30

今号の特集は「プレミアリーグ」。それもBIG6ではなく、それ以外の、最近、BIG6を脅かして奮闘しているレスターやエヴァートン、アストンビラ、リーズ、シェフィールド、ウルブズなどのチームを取り上げる。確かに今季のプレミアリーグはアーセナルやマンCが…

三度目の恋

伊勢物語が今、脚光を浴びているようだ。先日は「100分de名著」で取り上げられ、「小説伊勢物語」を執筆した高樹のぶ子が指南役として解説をしていた。そして本書もまた、伊勢物語がモチーフになっている。「あとがき」によれば、2017年に「伊勢物語をモチー…

貧乏国ニッポン

テレビ朝日のモーニングショーで経済問題について解説をする姿を今春頃からよく見かけるようになった。話す内容が明晰でわかりやすい。今年5月に発行された本だが、遅ればせながら読んでみた。日本が貧しい国になりつつあることは、内田樹も先日の講演会で述…

武器としての「資本論」

白井聡と言えば、少し前に、松任谷由実を批判してネットで叩かれていたことが思い出される。私も松任谷由実の政権擁護の発言には少しびっくりしたので、白井聡の気持ちはわからないでもない。それはさておき「資本論」である。「おわりに」で書かれているが…

不自由な脳

脳梗塞を患い、退院後、高次脳機能障害を抱えつつも精力的に執筆活動などを続けている鈴木大介氏と、臨床心理士の山口加代子氏との対談集。鈴木氏の経験というのはやはり個人的なもので、それがそのまま他の高次脳機能障害者の症状や経験に重なるわけではな…

日韓が和解する日

「街場の日韓論」に、筆者の論考が掲載されていた。そこには、「徴用工問題に関する韓国大法院の判決は、『日韓請求権協定に基づく請求権は既に満たされている』とした上で、『違法な植民地支配』に基づく請求権という新しい考え方を提示し、請求権を認めた…

人新世の「資本論」☆

この本も内田樹の講演を聞いて、読もうと思った。面白かった。そして、本当に斎藤氏の言うとおりだと思った。人類は、人類に危機と滅亡をもたらす資本主義をすぐにも捨て去り、新たな経済システムに移らなくてはならない。それが「脱成長コミュニズム」だ。…

82年生まれ、キム・ジヨン

韓国でベストセラーになり、日本でも話題になった本だという程度の知識しかなかったが、読み始めてようやく、女性の置かれた過酷な状況を訴える、いわゆるフェミニズム小説だと知った。本書で描かれる女性差別の実態の多くは、日本においても私が母親から聞…

コロナと生きる

コロナ禍も刻々と変化している。本書は5~7月に行われた対談を収録したものなので、どうしようかと思っていたけれど、先日、内田樹の講演を聴いた時に、本書で話された内容が多く含まれているように感じたので読んでみようと思った。もっとも対談集であり、…