とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

サッカー批評52

 サッカー批評がついに隔月刊になるという。これまで季刊だったので足掛け11年半。僕もよく連続して購読してきたものだ。最近は、欧州サッカー批評も発行され、本家のサッカー批評はややマンネリ化、代表に偏った特集が多い印象を持っている。そんな中での隔月刊。質の維持・確保は大丈夫か。
 と思ったら、今号は面白い。特集の「日本の『バルサ化』は正しいか?」はやや的外れな感があるが、それ以外の記事が面白い。「検証3-4-3」は、ザッケローニがオプションで採用したり、サンフレッチェナポリ、W杯でのチリなど、最近しばしば話題になることが多い3-4-3を取り上げる。
 「海外移籍の真価を問う」という特集記事も興味深い。松田直樹を追悼する記事は、グラウンドで倒れた時刻から分を刻むドキュメント。弔問に訪れた仲間たちの氏名や日時、マスコミ騒動、松本山雅マリノスのサポーターたちの交流など。胸を打つ記述も多い。
 前号からの連続連載である「Jヴィレッジの存在意義」は、Jヴィレッジ東電原発マネーにより造られた施設であることを披露。その是非を問う。
 他にも、メキシコオリンピック下での民主化運動大虐殺を披露する「ジャーナリスト魂」、かつての女子サッカー選手、高倉麻子を紹介する「Hard after Hard」、躍進する栃木SCを取り上げた「栃木SC J1昇格への道」など、興味深い記事が目白押し。
 さすがに隔月刊が決まると内容も気合が入っている。この勢いで次号も期待しているぞ。いつまでも価値ある雑誌であり続けてほしい。

サッカー批評(52) (双葉社スーパームック)

サッカー批評(52) (双葉社スーパームック)

●よく日本のサッカー界では、選手が指示を守りすぎて、型にはまってしまうと言われる。・・・だが風間は“言われたことに取り組む姿勢”にこそ、大きな可能性が眠っていると考えている。「日本人は自分で考えて問題に取り組むのが得意なので、発想さえ与えてやれば、すごく変化を起こしやすい。・・・実は日本人というのは自分たちが気がついていないだけで、すごく発想力があるんじゃないでしょうか」(P011)
●ヨーロッパでイタリアを含めて育成システムに定評のある国は、どちらかというと戦術を教え込んでいます。個を伸ばしていく『日本式』をベースとして大切にして、それを守りながらヨーロッパの良さを加味していくことが大切ではないかと思います。(P030)
原子力は結局、棄民を起こすんです。うちの親父とおふくろがある意味、原子力の棄民なんです。・・・健康被害があっても、あっちゃいけないってことで、ないことにされた人なんです。・・・そしてJビレッジも成立の過程はやっぱり検証されるべきだと思いますね」(P082)
●トラテロルコの大虐殺について言うと、メキシコ政府はオリンピックを成功させるために、学生運動を排除しなきゃいけないと主張した。・・・オリンピックを利用して国際的地位を上げるんだというのが、もう政府側にあるわけで、一方で学生のほうも民主化要求を、このオリンピックの時期にやればね、政府側は弾圧しまいと思っていた。ところが弾圧しちゃった。撃ち殺したわけだから。 (P090)