とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

社会の抜け道

 28歳、若き社会学者、古市憲寿と39歳、俊英の哲学者、國分功一郎による対談集。第一章では埼玉県新三郷にある大型商業施設「ららぽーと新三郷」と「IKEA」、「コストコ」を見学。第二章では茨城県石岡市のオーガニック・ファーム「暮らしの実験室」、第三章では反原発デモなどの体験を踏まえて。第四章は小平市津田保育園を見学。食の問題から社会や思想を語る第五章、小平市都道計画見直し住民投票運動に関わった経験から住民運動や革命について語る第六章は現地見学はないが、どの対談も生活実感に根差したゆるやかな対談が繰り広げられる。
 家族の成長や日々の生活体験から哲学や思想を語る國分氏の話は実感と親近感があってとっても面白い。もっぱら外食に頼り、栄養さえあればいいという古市氏も現代っ子らしく素直に感じたことをぶつけていく。けれんみのない質問にうれしそうに答える國分氏の様子がとても微笑ましい。
 新自由主義と消費社会、反近代化運動、革命思想、デモと民主主義、保育と社会化、食の問題と自分探し、そして「反革命」。話題はけっこうハードだが、見学の感想を語り合うページも多く、内容はとってもソフトだ。これで「社会の抜け道」がどこにあるのか、わかったかどうかはわからない。というか僕には全然わからないんだけど、國分氏の著作を読むと見えてくるだろうか? これからぜひ読んでみようと思う。

社会の抜け道

社会の抜け道

●うまく遊べないときに、人は退屈する。だから、うまく遊べなかったり、楽しめなかったりすると、人は外から仕事や課題を与えられることを求めるようになる。自ら自由を捨てて、何かに従いたくなる。人間が従属へと向かう契機の一つには、自分で楽しめないことがあると思う。・・・だから俺は、人はきちんと遊べるようになる必要があると思っている。(P119)
●行政の担当の人たちを見ていたら、この人たちだって個人的には道路なんてつくりたくないんじゃないかなって思った。・・・こんなに反対されてまで、どうして50年前の計画を実施しなければならないんだろう。誰の意思なのか全然分からない。・・・実はどんな問題でもそうなのかもしれない。こいつを倒してしまえばあとは大丈夫だっていえる悪者なんて、現代の社会においてはどこを探してもいない。問題はシステムなんだね。(P233)
●僕たちがこの本を通じてずっと話してきたのって、社会は革命的には変わらないってことだと思うんです。何か新しいシステムを導入するとか、新しい政治家が登場するとか、強大な敵を倒すとか、そんなことで社会は変わらない。社会はちょっとずつしか変わらない。(P245)
●僕たちは、「変える」ということの内実を知らないから、安易に「変える」ことを求めてしまうのかもしれません。・・・「社会を変える」なんて大きいことがいえるのは、「社会」が何か分からないからいえることなんでしょうね。(P249)