とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

日本代表監督は当面、暫定でいい。

 日本代表監督の選考が難航している。その前にアギーレ監督の解任について驚いた。八百長疑惑については、勝った側の監督だし、口座に振り込まれた金はチームオーナーが操作したものというから、アギーレ監督がなぜ問題とされるかよくわからなかった。
 先日読んだフットボール批評issue03によれば、「不自然な金の流れから八百長の実施を知りながら、それを阻止しなかった罪」というが、自分に振り返って考えても、銀行通帳を数週間も打ち出さないことはざらだし、アギーレ監督の口座には普段から大金が積まれていたと思われるから、八百長買収用金銭の出入りに気付かなかった可能性は高い。
 それでも万が一、有罪とされた場合に備えて、または訴訟中の身では監督業に身が入らないといったことを懸念して解任すべきという意見もあったが、この問題が発覚以降も、アギーレ監督は選手選考やゲーム運びなど、3年後のW杯に向けて着実にチーム作りを前進させてきており、多くの評論家の間でも代表チームの成長を評価する声は高かったと感じている。一方で、一般のマスコミはまるで芸能ニュースのようにこの問題を取り上げており、サッカーファンとの意識の相違を強く感じていた。
 サッカーをよく知る人たちの間では、違約金の問題もあることから監督解任はないだろうという推測が多かったと思うが、サッカー協会は突然解任を公表した。違約金はないという発表であり、アギーレ監督にもこんなことで大騒ぎする日本への嫌悪の気持ちや、いつ解任されるかわからないという不安定な状況の中で代表監督を続けるよりも、八百長疑惑に左右されず実力を見込んだオファーを待った方が得策という思いがあったかもしれない。
 いずれにせよ、アギーレ監督は解任されてしまい、次の代表監督探しが霜田技術委員長の下、精力的に進められている。
 私自身がアギーレ監督解任の報を受けて最初に思ったのは、「日本代表チームも数多あるチームの一つに過ぎない」ということだ。いまや日本の代表チームは、かつてのクラマー・コーチの時代のように、一から選手の育成をすることはできない。日本や欧州のチームで活躍する選手を短期的に集めてゲームをこなし、勝利を目指す。ある程度、強豪といわれる代表チームでは当たり前のことだ。だから、代表監督は「セレクター(選ぶ人)」と呼ばれる。
 3年後のW杯が本当の勝負で、その時に的確な選手選考と戦術を駆使できる監督が就任していればよく、それまでの間の監督をどうするかは3年後を見据えて選定する必要がある。じっくりと日本人選手の実力を見極め、様々な戦術を試しながら、最高の体制で本番に臨む。そのために3年間の期間が必要という監督もいれば、協会が主導してある程度固まった戦術でゲームを重ね、その情報を的確に伝えることで、本番だけ、若しくはラスト1年間だけ、戦術眼にすぐれた監督に委ねるという方法も考えられる。
 ザッケローニ監督の4年間とW杯の結果を見ると、4年間が長すぎて、最後の本番で気の緩みや飽きがあったのではという気もする。現時点では、当面2年間、ラストの1年間につなげられる監督という視点で監督選定を行い、本番も任せられると判断すれば、さらに1年間契約を延伸するという方法もあるのではないか。
 W杯後のゲームを見ると、本田も香川も清武も所属チームでは必ずしも代表チームと同じ役割のプレーをさせてもらえない。しかし、それぞれのチームで必要なプレーをし、起用され続けることが、W杯に向けても必要なことなのは、ブラジル大会の香川の不調などを見てもわかるところである。
 だからこそ、代表監督はセレクターであり、所属チームと代表チームは全く別のチームなのだ。選手にはそれぞれの所属チームで結果を出すために全力を尽くしてほしいし、その上で代表チームでも求められる役割を果たしてほしい。ポジションや役割は異なるかもしれないが。
 代表監督の選考も現時点で血眼を上げて最高の監督を招聘しようと思わないほうがいい。欧州のリーグが終わる6月には、今はクラブチームの監督をしている人材も選考対象に加わり、より理想的な監督を見つけやすくなるのではないか。それまではつなぎの監督でいい。U23の手倉森監督がしばらく代表監督を兼任するというのもありじゃないかな。あせってババをつかむ愚だけは避けてほしい。