とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

フロンターレはそんなに悪かったのか 確かにサッカーは酷かったが・・・

 ナビスコ杯は大方の予想に反してFC東京が優勝。しかし世間では、MVPを取った米本やGK権田の活躍以上に、表彰式でのフロンターレの態度が悪かったという話題で盛り上がっている。生では見られなかったのでビデオで見直したが、肝心の場面はちょうどCM中で、フロンターレの選手たちが手にメダルを持って降りてくるシーンしかわからない。YouTubeで探すと、憲剛がナビスコ社長から準優勝カップを受け取るシーンなどがあり、その背後で森がふてくされてメダルを早々にはずしそっぽを向いていた。しかし憲剛や続いて5000万円のプレートを受け取った川島は悔しそうな顔ながら、首にはまだメダルが下げられている。そして特別に混乱した様子も見られなければ、関係者に不愉快な様子も窺われない。それよりも酷かったのは、この日のフロンターレのサッカーだ。
 フロンターレはいつものようにカウンター主体で3トップ+憲剛で攻めるが、FC東京が思った以上に前からプレスをかけて攻めた。7分、フロンターレレナチーニョの落しから谷口がミドルシュートを放つが、FC東京も9分に平山のポストプレーから米本が飛び出し、クロスを再び平山がシュートする。
 12分、憲剛のパスから放ったレナチーニョのシュートはGK権田がファインセーブ。20分には谷口のドリブルからゴール前のジュニーニョにパス。ごっつゃんゴールかと思ったがふかしてしまう。そして直後の23分、平山の落しから米本が中盤でフリーになり、思い切った無回転のミドルシュートを放つと、GK川島の手を弾き、ものの見事にゴールを決めた。
 その後、フロンターレがボールをキープしてパスを回すが、FC東京の固い守備の前に攻めあぐねる。37分、45分とジュニーニョミドルシュートを放つが、どこか焦りを感じる。逆にFC東京の方がフロンターレのお株を奪うプレスからカウンターを繰り出す。37分、椋原の頑張りから平山が抜け出し、赤嶺が見せたループシュートは惜しかった。
 後半に入ってもフロンターレにいつもの切れが見られない。逆に2分には、平山から赤嶺を経由して鈴木達也がシュート。直後のCKに羽生がシュート。13分の伊藤のフィードに合わせたチョン・テセのシュートは権田がセーブ。続くレナチーニョのシュートもGKが抑えた。フロンターレが攻めているものの、どこか迫力がないなあと思っていたら、逆に15分、羽生からのパスに鈴木達也がドリブルで抜け出し、クロスを平山がDFと競り合いながらヘディングで追加点を決めた。今シーズンの平山の成長には目を見張るものがあるが、このシュートにも高さだけではない巧さを感じた。
 23分、憲剛のFKも権田がクリア。27分にもジュニーニョのシュートを跳ね返し、さらに憲剛のシュートもセーブする。この時間帯、フロンターレはシミュレーションまがいの転倒を見せるなど焦りが見られ、得点の気配がしない。対するFC東京は、長友、平松、佐原とDFの選手を次々と投入し、攻撃の場面でもマイボールを落ち着いてキープするなど、厚く固い守備を見せる。30分にはカウンターから長友が抜け出し、GKもかわすが、谷口が長駆戻って守備、達也のシュートはポストに当たる。
 それ以降はフロンターレの怒濤の攻めが続くが、FC東京が必死の守備。41分、44分とジュニーニョからのクロスをチョン・テセがヘディングするも、バーに嫌われ、またゴールを外れた。
 結局、ゲームを通してFC東京の動きはフロンターレを上回っていたし、得点を取られてからは焦りから攻撃も空回り。初タイトルを!という意欲が却ってフロンターレの選手たちを縛りつけてしまったようだ。
 悔しい敗戦だったことは間違いない。しかしゲームセット後の選手同士や審判との握手はいつもと違わず気持ちよくお互いの健闘を称え合っていたし、その後のFC東京の選手たちの勝利のパフォーマンスも特段のトラブルもなく行われている。問題は表彰式だ。
 敗戦したにも関わらずメダルを受け取ることは、何も貰わない以上に屈辱を感じたのかもしれない。そもそもフロンターレJリーグ事務局と相性が良くない。ベストメンバー規定でトラブったし、我那覇のドーピング濡衣事件はJリーグ側の完全な失点だ。こうした歪んだ関係の中で、鬼武チェアマンがスポンサーであるナビスコに必要以上に気を使い過ぎて今回の批判になったのではないだろうか。
 確かに森の態度は感心しない。しかし、5000万円もの罰金を受けるほどの事件なんだろうか。いや5000万円の返上と森の出場停止はフロンターレ側が自主的に申し出たことだが、ビデオやYouTubeを見る限りは、不愉快に感じたのは鬼武チェアマンなどJリーグ幹部だけだったように思われる。我那覇問題で恥をかかされた思いの意趣返しの批判ではないかと勘ぐりたくなる。そうでなければ、これ以上の処分をするべきではないし、そもそもフロンターレに対してマナー欠如を指摘する前に、まずマスコミに対して不快感を披露するという行為は、日本サッカーの人気や発展に唾する行為だと思う。真に成長を求めるのなら、叱責は愛をもって内々に行うことが肝要だ。今回の事件は、フロンターレと同程度に、Jリーグ側にも非があると思うのは私だけだろうか。こんなくだらないことで世間の話題になるなんて、なんと哀しいことか。