とんま天狗は雲の上

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86年W杯マラドーナの大会の決勝戦

 86年W杯はマラドーナマラドーナによるマラドーナのための大会と言われる。5人抜きドリブルが披露された準々決勝のイングランド戦がそれを代表するゲームとしてよく取り上げられるが、西ドイツとの決勝戦はゲーム後、マラドーナがワールドカップを高々と上げるシーンが最も有名だ。3-2。アルゼンチンが2点先行するも後半に西ドイツが同点に追いつき、さらにアルゼンチンが勝ち越して優勝カップを手に入れた。だがその得点経過ほどにはゲーム自体は感動的ではないし、お互いの長所を消し合う凡戦と言えるかもしれない。
 特に前半はどちらが優勢ともいえない。お互いゴール前まで行くことができない歯がゆい展開で進んでいく。マラドーナにはマテウスがマークに付き、なかなかボールにも触らせてもらえない。23分。右サイドから蹴ったブルチャガのFKにCBのブラウンが豪快にヘッドを決めてアルゼンチンが先制する。これで少しゲームが動き出す。
 27分、マラドーナのドリブルからブルチャガがファールを受ける。33分にもマラドーナがドリブルからブルチャガとワンツーを決めてシュートを放つ。先制されたことでマテウスのマークが若干緩んだのかもしれない。30分にはフェルスタの大きなサイドチェンジからベルソルドのクロスにルンメニゲが飛び込むがゴールならず。しかしドイツはこれが前半ほとんど唯一のチャンスで、ゲームはアルゼンチンがコントロールしていた。
 後半に入り、西ドイツが挽回を狙って攻勢に出るが、逆にマラドーナが何度も決定的なシーンを作るようになる。3分のマラドーナのスルーパスからのブルチャガのドリブルはDFに防がれたが、12分マラドーナから放たれたパスはエンリケを経由してバルダーノに渡り、GKと一対一となって追加点を挙げる。
 これでいよいよ勝利に向けてマリーシアを発揮するアルゼンチン。明らかな時間稼ぎにおちょくるようなボールキープ。23分にはエンリケのクロスにバルダーノがヘディングシュート。26分にもマラドーナとジュスティのパス交換からブルチャガにパスが出てシュート。上手に時間を使いながらカウンターの威力をちらつかせる。
 28分、左からのCKをフェラーがヘッドで流し、ルンメニゲが決めたシーンではまだ余裕があったが、36分にブレーメのCKからフェラーがヘディングシュートを決め、なんと西ドイツが同点に追いついてしまう。
 アルゼンチンにとっては予定外だったろうが、これで慌てるところは一切なく、39分にはマラドーナのスルーパスにブルチャガが抜け出して再度の勝ち越しゴールを挙げて、西ドイツを突き放し、悠々と予定通りと言わんばかりの勝利を挙げた。
 ゲームとしてはそれほど見どころの多いものではなかったが、決定機では必ずマラドーナが絡んでゴールを演出し、終始落ち着いてゲームをコントロールした。イングランド戦だけでなくすべてにゲームにおいてマラドーナの落ち着きとゲームコントロールが際立っていたのだろう。マラドーナの大会と言われる謂われはこのゲームを見てその本当の理由を納得した。