とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

W杯とJリーグの差

 W杯が終わり1週間。さっそくJリーグが始まった。正確にはACL組は水曜日から始まっているが、昨日、土曜日が本格的な再開。W杯で掴んだファンをJリーグへ引き込もうと、リーグでも色々活動をしているようだが、W杯に慣れた目にはJリーグのゲームがつまらなく見えるんじゃないかと、やや不安な気持ちでアントラーズvsフロンターレ戦を見始めた。
 序盤、アントラーズが攻勢をかける。特に内田のシャルケ移籍で右SBにコンバートされた新井場と、興梠に代わり先発した大迫の積極的な動きが目立つ。18分にはフロンターレのカウンターをあっという間に複数で囲い込み、アントラーズらしいところを見せる。
 フロンターレは稲本がいい。W杯でも見せた読みのいい位置取りと厳しい球際、気持ちのこもった守備でアントラーズの攻撃を最後まで貫徹させない。
 しかしいただけないのはレフリー。レフリーにも、西村さんが決勝戦で第4の審判を務めるなど、W杯を見て期するものがあったのだろう。どちらかといえば厳しい当たりは流す傾向で、うまくゲームをコントロールしようという意図が感じられた。しかし判定が一定しない。岩政を突き飛ばしてイエローカードをもらった稲本も、その前のプレーでは厳しいチェックを流され、やむを得ず当たりに行ったところを、今度はイエローカードをもらった。
 そして21分、先制点は突然アントラーズに訪れる。ジウトンのクロスをマルキーニョスが落とし、大迫が走り込んでクロス。これがDFの足に当たり、ふらふらとゴールに向かって飛んだところを詰めたフェリペがDFともつれながら身体ごと押し込んだ。
 その後31分、FKから野沢のミドル。34分には小宮山のミドルと、それぞれ枠に飛ぶが、GKがファインセーブで得点を許さない。と39分、田坂のスペースへのパスに黒津が走り込むと、トップスピードのままイ・ジョンスをかわしてGKの頭上を襲う強烈なシュート。フロンターレも同点に追いつく。
 しかしこの日のゲームを決めた判定が41分に飛びだした。スペースへのパスにマルキーニョスが抜け出そうとしたところを、稲本が危険を察知して、身体を投げ出したタックル。これをうまく利用してマルキーニョスが倒れ込むと、主審は迷わず2枚目のイエローを掲げ、稲本を退場に追い込んだ。無表情でピッチを去る稲本の心中が察せられる。
 ブラジルvsオランダの笛を吹いた西村主審に対して、欧米のメディアでは、ロッベンのファールをもらうプレーに安易に乗せられファールを取っていたと批判的な見方があるそうだが、この場面でも日本人のそうした律儀でナーバスな面が出たようだ。W杯決勝戦では、2枚目のイエローを出せない主審とそれを逆手に取ったオランダのプレーが話題になっているが、逆に同じ基準だからと簡単に2枚目を出すのも困りもの。ましてやこの日のレフリーは厳しい当たりを流す傾向が強かっただけに、なぜあのプレーで退場させるかといぶかしく思う。マルキーニョスのずるさに乗せられた。
 ゲームは前半43分、野沢のFKに飛びだしたマルキーニョスのヘッドをGK相澤がナイスセーブ。46分、小笠原のクロスもマルキーニョスの先を制してGKが抑え、このまま前半を終えた。
 後半に入るとフロンターレが前から攻撃的に出ていく。気持ちがこもったプレーだ。7分、野沢をポストにフェリペがワンツーで抜け出しクロス、これを大迫が合わせようとするがGKがセーブ。川島がベルギーへ移籍した後のGK相澤はこの日もファインプレーを続発。GKへの不安を払拭し、フロンターレ選手の気持ちを鼓舞する。
 17分には憲剛のサイドチェンジのパスにヴィトール・ジュニオールが左サイドで受けてクロス。これをワンポイントで合わせたレナチーニョがドンピシャ・ヘッド。しかしGK曽ヶ端にセーブされる。そして29分、遠藤のミドルシュートをGKが弾くと、大迫がシュート。これがポストに当たりライン上を転がると、佐々木が空振り。結局ルーズボールフロンターレ選手が抑えると、ゴール前から憲剛がロングフィード。これにレナチーニョが走り、ゴール前でヴィトール・ジュニオールにパスするも、利き足に持ち替えたところでクリア。両者、惜しいチャンスを逃す。
 その後も31分田坂、33分遠藤とミドルシュートがGKにセーブされる。と33分、CKのチャンスに、野沢の蹴ったボールはマークが甘くなったイ・ジョンスに合って、ヘディング・シュート。ついに勝ち越し点を奪われた。
 一人少ない状況をずっと耐え、時に果敢に攻撃に出てアントラーズ・ゴールを脅かした。フロンターレ選手たちの気持ちのこもったプレーに心を打たれたが、勝負は老獪なアントラーズの勝ち。特にロスタイム以降の露骨な時間稼ぎは気持ち良くない。笛が鳴ってもなかなかボールを蹴らない野沢は当然イエローカードをもらうべき。ここにも一定しない主審の姿が見られた。
 これでついにアントラーズが首位進出。しかしこんなゲームで首位に立つのはやはり少し解せない。W杯は勝つべきチームが勝ったが、Jリーグでは主審の曖昧な判断がゲームを壊す。レフリーにW杯とJリーグの違いを感じたゲームだった。