とんま天狗は雲の上

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量子力学の哲学

 「光は粒子でもあり、波でもある」。これは有名な量子力学の成果だが、これをどう解釈するか。この課題に加え、「物理量の非実在性」「非局所性」「状態の収縮」も加えた4つの課題(実はもう一つ「ボルンの規則」もあるそうだが、意味不明)に対する様々な解釈を紹介する。
 GRW理論、デコヒーレンス理論、軌跡解釈、多世界解釈、裸の解釈、多精神解釈、単精神解釈、一貫した歴史解釈、様相解釈、交流解釈、そして時間対称化された解釈。実に多くの解釈があるものだが、これらを系統的に説明しつつ、その問題点等を挙げていく。筆者は「時間対称化された解釈」がイチオシだそうだが、そう説明されればそんな気もする。
 もとより説明されたことの百分の一も理解できない。ただ面白いなあと眺めるばかりである。読みながら、はたして「哲学」って何のことだっけ、と疑問がわいた。
 確かに「存在とは何か」は哲学的なテーマの一つだが、それはあくまで「人間にとって」ではなかったのか。でも量子力学の哲学には、多精神解釈等を除いて、人間は必ずしも必要ではない。人間は介在せず、(量子レベルの)物質の存在とは何かを問う。これを哲学というのか。
 いやこの問題を考えている筆者自身が自身のことを哲学者というのだから哲学なのだろう。ただ量子力学の哲学は、実験や数理解析等の成果によってどんどんその条件が変化していく。その点が面白いし、どこまで解釈していくんだろうと興味がわく。

量子力学の哲学――非実在性・非局所性・粒子と波の二重性 (講談社現代新書)

量子力学の哲学――非実在性・非局所性・粒子と波の二重性 (講談社現代新書)

●1.測定前の物理量は実存しない、もしくは測定前の物理量について議論することは無意味である/2.非局所相関はある/3.射影公理を認める/4.粒子と波の二重性を認める/というのが「標準的な解釈」と呼ばれる解釈である。(P69)
●たとえば光の場合なら光の正体は粒子であり、このガイド波に導かれて光の粒子が動くのである(P114)
●従来の量子力学では、ある時刻tにおけるある物理量の確率は、それより過去の時刻における状態のみから決定される。ところが、/時間対称化された量子力学では、過去における状態のみではなく、未来の状態も用いて確率を求める。(P212)