とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

異能の人バロテッリが吹き払った悪夢。マンC、ロスタイムの奇跡で44年振りの優勝を掴み取る。

 優勝するということはこれほどまでに大変なことなのか。まさかロスタイムに入るまでリードされていたチームが、その後の逆転で優勝を掴み取るとは。マンUの、ファーガソンの執念は、マンCの勝利をここまで阻むのか。プレミアリーグはまるでマンUの呪いがかかっているように、マンCはリーグ優勝できない運命なのか。
 その暗雲をやぶったのは異能の人バロテッリだった。もうシーズン中は起用しないとマンチーニ監督が言った、そのバロテッリの出場がようやく暗雲に一条の光を射しかけ、そしてそのわずかの細い隙間を辿ってアグエロがシュートをゴールにねじ込んだ。44年振りのリーグ優勝。だがそのための90分間はまさに苦闘、まさに苦悩の時間。産みの苦しみとはまさにこのことだ。
 序盤からマンCが圧倒的に攻めまくる。4分、アグエロのスルーパステベス。6分、アグエロのクロスにテベスのシュートは当たりそこね、Y.トゥーレのシュートは枠を外す。11分、ナスリのミドルシュート。16分、D.シルバのシュート。だがどうしてもゴールに入らない。クイーンズパークがゴール前に鉄壁のブロックを作って守る。マンCの動きが硬い。縦パスがことごとく弾き返され、次第にシュートも打てなくなってくる。24分、シセのFKはあわやGKハートがセーブする。そしてまた守る。
 33分、Y.トゥーレからナスリ、テベスがポストに入ってD.シルバのミドルシュートは枠を外す。Y.トゥーレが太腿の裏側を押さえ膝をつく。ハムストリングの故障。それでも緩慢ながらピッチを走る。そして39分、サバレタからテベスの縦パスにY.トゥーレが前に入り、サバレタにパスを送る。と、サバレタがDFの間を通すシュート。GKケニーが弾くが、ボールはファーサイドのポストに当たってゴール内に転がる込む。ようやくマンCが先制点を挙げた。喜ぶサポーター。これで守り切れば優勝だと安堵の雰囲気が流れる。45分、Y.トゥーレを諦め、デヨングを投入する。
 前半、残留を争うボルトンがリードしているという情報が入り、クイーンズパークが得点を挙げる必要に迫られた。後半開始早々の1分、テベスのキープからスルーパスクリシーが走り、クロスにアグエロがシュート。DFがブロック。相変わらずマンCが攻めていく。
 ところが3分、後方からのフィードをライトフィリップスが前に送ると、レスコットがヘディングしたボールにシセが追い付き、そのままドリブル、シュート。クイーンズパークに同点に追い付いてしまう。レスコット痛恨のミス。
 マンUがリードする中、どうしても勝利が必要なマンCが攻め立てる。5分、テベスが反転から強烈なシュートを放つも、GKケニーの正面。7分、D.シルバのグラウンダーのCKにテベスとデヨングがかぶってしまう。こぼれ球をサバレタがシュートするが、アグエロを直撃。シュートはコントロールし切れず、枠を外す。
 次第にイライラが募る中、テベスの進路をバートンがふさぎ、その直後に肘打ち。テベスが大袈裟に倒れる。スローを見ると確かに肘打ちしているが、その前にどんなやり取りがあったのか。バートンが異常に興奮していたのはテベスが何か言ったのかもしれない。バートン一発レッドで退場。一人少なくなったクイーンズパークは14分、FWシセに代えてトラオレを投入。
 マンCは攻めるしかない。15分、テベスショートコーナーから強烈なシュート。GKケニーが弾いたところをバリーがヘディングシュート。オヌオハの手に当たるがPKは取らず。落ちてきたボールにアグエロがシュート。だがGKケニーがライン上で掻き出す。ついていないマンC。
 すると21分、カウンターからトラオレが左サイドを駆け上がり、クロスにマキーがヘディングシュート。何とクイーンズパークが勝ち越しゴールを挙げる。泣き出すサポーター。44年振り優勝から一番遠ざかった瞬間。天国から地獄へ。
 マンCは24分、バリーに代えてジェコを投入。25分、クリシーのドリブルからナスリがシュート。DFがブロック。27分、D.シルバのCKにテベスがヘディングシュート。GKケニーがナイスセーブ。直後、テベスのCKもGKが弾くと、サバレタのシュートはDFがブロック。クイーンズパークは全員がPA内に入ってブロックを固める。シュートを打てども打てども、ことごとくクイーンズパークの選手に当たる。いら立つテベス
 すると30分、そのテベスに代えてバロテッリを投入した。これで少し雰囲気が変わってくる。PA内でゴリゴリとドリブルしてゴールを狙うバロテッリにクイーンズパークのDFが数人惹きつけられる。33分、アグエロのクロスにジェコがシュート。だがGKケニーがナイスセーブ。34分、バロテッリの強烈なシュートはGKケニーの正面。40分、ナスリのクロスにジェコがヘディングシュート。これもGKケニーがセーブ。
 だが、次第にシュートがDFを突破してGKに届くようになってくる。ロスタイムは5分。ロスタイム1分、D.シルバのCKにバロテッリが高いヘディングシュート。だがこれもGKケニーが止める。いよいよ追い詰められたマンC。ロスタイム2分。D.シルバのCKにジェコが合わせ、ヘディングシュート。ついに同点に追いつく。だがまだ1点足りない。
 クイーンズパークのキックオフはマンC陣地深くボールを蹴り込む。追わずに守備を固める。引分けで終われば残留決定のクイーンズパークは無理をしない。そしてロスタイム4分、ゴール前でボールを持ったアグエロが縦にパスを入れると、バロテッリがDFに囲まれ倒れながらボールを前に送る。アグエロが走り込み、DFをかわしてシュート。ゴール!!! 何とロスタイム4分で逆転ゴール。マンCが勝利の劇的ゴールを挙げた。得点後のキックオフもクイーンズパークはマンC陣地深く蹴り込むだけ。そしてタイムアップ。
 マンC、44年振り奇跡の優勝。走り回るマンチーニ監督。抱き合う選手たち。シセがナスリに祝福を送る。サポーター席が揺れる。サポーターがピッチに流れこむ。感涙にむせぶ人。抱き合う人。飛び上がるひと。人、人、人。見る見るうちにピッチがサポーターで埋まる。何と言う感激、何と言う奇跡。前節ニューカッスルに勝利した時点ではもうマンCの優勝は確実だと誰もが思ったはず。それがこの結末。プレミアリーグは簡単には優勝チームを祝福してくれない。だからこその喜び。誰がこの筋書きを書くのか。人々の狂ったように喜ぶ姿に44年の歳月を思う。
 圧倒的に独走した序盤。アウェイでマンUに6-1で勝利したときはこの強さは本物だと思った。ところが年明けから途端に勝てなくなり、引分けが続く。勝ち続けるマンUに逆転され、一時は勝ち点差を8まで広げられる。マンチーニ監督の敗北宣言。しかしそこから甦った。ホーム、エティハド・スタジアムでのマンU戦勝利で勝ち点を追い付き、得失点差で追い越す。その後の負けられない2ゲーム。しびれるニューカッスル戦で勝利し、楽勝のはずの最終戦クイーンズパーク戦でロスタイムまで追いつめられての逆転勝利。まさに奇跡。まさにドラマ。けっしていいゲームではなかったけれど、感動のこのゲームは保存版で録っておこう。マンCの勝利が当たり前になるその時まで。マンC、本当におめでとう。