とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

勇気と感動の2013年皇后杯決勝。真のヒロインはアルビレックス・レディースだ。たとえそれが悲劇のヒロインだとしても。

 今年の皇后杯決勝は4連覇、そして今シーズンの4冠を狙うレオネッサと、ベレーザ湯郷ベルを無失点で破り決勝まで勝ち上がってきたアルビレックスの対戦。レオネッサは準決勝からCFゴーベル・ヤネズが復帰。一方、アルビレックスは準決勝と同じメンバー。中1日の疲れも何のその、キャプテン上尾野辺がチームを引っ張る。
 序盤はレオネッサがパスをつないで攻めていく。大きな展開と個人技による突破を図るレオネッサに対して、アルビレックスは粘り強い守りとカウンターで勝機を窺う。5分、CFマッカーティーがCB甲斐にプレスをかけてボールを奪いゴールに迫る。DFとGK海堀で何とか抑える。9分には左SH佐伯が倒されて得たFKを上尾野辺が蹴り、OH山崎がヘディングシュート。アルビレックスが守備から次第にペースを掴んでいく。
 レオネッサの初シュートはようやく24分。OHチ・ソヨンから右に流し、右SH川澄のスルーパスにCFゴーベル・ヤネズがシュートを放つ。GK一谷がセーブ。26分には左SH高瀬がミドルシュートを放つが枠を外す。アルビレックスはボールサイドに必ず2人・3人と寄せてゆき、ボールを奪えば上尾野辺が局面を展開する長いスルーパス。レオネッサをカウンターで脅かす。
 37分、CH中島のフィードを左SH高瀬が落とし、CFゴーベル・ヤネズミドルシュート。GK一谷がナイスキャッチ。そして42分、CH澤にCH上尾野辺がプレスをかけてボールを奪うとそのまま前へ蹴り出す。CB磯金がボールを追うが、CFマッカーティーが追い抜き、そのままドリブル。CB甲斐もかわしてシュート。何とアルビレックスが先制点を挙げて、前半を1点リードで折り返した。
 後半に入っても同じような展開。4分、CH上尾野辺がボールを奪い、CFマッカーティーのスルーパスにOH山崎が抜け出しシュート。GK海堀がナイスセーブ。9分にもOHチ・ソヨンからCH上尾野辺がボールを奪い、スルーパスを受けたCFマッカーティーが切り返しからシュートを放つ。アルビレックスは速いプレスから積極的に攻めていく。逆にレオネッサはアルビレックスの厳しいプレスの前にパスがなかなかつながらない。
 13分、カウンターからCH上尾野辺がミドルシュート。さらに18分、右SH川澄から左SH佐伯がボールを奪うと、CH上尾野辺が左に展開、CFマッカーティーのクロスがDFに当たりこぼれたところをOH山崎がシュート。だがボールコントロールにやや手間取って、詰め寄ったDFにシュートはポストを叩いた。
 カウンター攻撃が面白いように嵌るアルビレックス。だがなかなかゴールを決め切れない。すると20分、中盤深い位置からのチ・ソヨンのFKに右SB近賀が走り込みシュート。レオネッサがワンチャンスで同点に追い付いた。しかしそれでもアルビレックスの守備の集中力が途切れることはない。お互い伯仲する展開のまま、90分間はスコアレスで終わった。延長戦突入。
 ところが延長前半3分、OHチ・ソヨンのドリブルからCKに逃れると、CH中島が蹴ったCKにGK一谷がジャンピングキャッチ。だがやや被ってしまって、いったんキャッチしたボールを落としてしまう。こぼれたボールを抜け目なくゴールに押し込んだのはOHチ・ソヨン。レオネッサがついに勝ち越した。
 延長戦開始早々で集中力がやや散漫だった。これで気落ちしたかアルビレックスの寄せが甘くなり、延長戦はレオネッサ・ペースで進む。9分OHチ・ソヨン、11分には左SH高瀬がミドルシュートを放つ。
 ところが延長後半に入るとまたアルビレックスに集中力が蘇ってきた。1分、CH上尾野辺の長いスルーパスにCFマッカーティーが走り込み、左に流してOH大石がシュート。さらに2分、CH上尾野辺のミドルシュートがバーを叩く。そして6分、左SB高村のフィードに延長後半から佐伯に代わって左SHに入った平井が追い付くと、クロスをCFマッカーティーが切り返してシュート。これが見事に決まり、土壇場でアルビレックスが同点に追い付いた。すごい!
 さらには12分、左SH平井のスルーパスにCFマッカーティーが抜け出し、ゴールに迫る。CB磯金の手がかかって倒れながらシュート。GK海堀が何とか足に当ててセーブする。しかしビデオで見返せば明らかにファール。完全に倒れていればPKになっていたかも。残念。その後、OHチ・ソヨンミドルシュート、左SH高瀬のミドルシュートとレオネッサが攻め立てるが、堅い守備でレオネッサにゴールを許さず、2-2のままタイムアップのホイッスルを聞いた。
 勝負はPK戦へ。アルビレックスの一人目、上尾野辺が落ち着いて決めると、レオネッサの一人目、ゴーベル・ヤネズのシュートはGK一谷のファインセーブで弾かれる。これでいったんはリードしたアルビレックスだったが、3人目山崎、4人目斎藤と外して、逆にレオネッサに王手をかけられてしまう。レオネッサは二人目以降、チ・ソヨン、高瀬、近賀と決めてアルビレックスを上回ると、最後は5人目川澄が落ち着いて決めて、レオネッサがPK戦を制した。
 レオネッサ4冠・4連覇達成。おめでとう。だがそれ以上に女王をここまで追い詰めたアルビレックスに大きな拍手を贈りたい。常に集中した守備でレオネッサを追い込み、優勝へあとわずかと迫ったが、PKを取ってくれなかったことなどわずかの差で優勝を逃がした。でもその勇気と集中力は賞賛に値する。120分を通じてレオネッサを上回るプレーを見せて、PK戦で泣いた。今年の皇后杯、真のヒロインはアルビレックスだと思う。感動と勇気を感じた120分間だった。