とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

ガンコロリン

 表題作を始め5編を掲載した短編集。健康行政を推し進める厚労省を皮肉った「健康増進モデル事業」。「チーム・バチスタの○○」に続くノルガ王国の王子アガビと渡海征一郎を描く「緑剥樹の下で」。ガン予防薬を巡るドタバタ劇「ガンコロリン」。東日本大震災をモデルに速水率いるDMATの活躍などを描く「被災地の空へ」。そして、自由診療が開始された後の状況を戯画的に描く「ランクA病院の愉悦」。
 いずれも海堂氏の批判精神が溢れている。だが、作品としては正直あまり面白くない。東京からの帰り、わずか2時間余りで読み終えてしまった。時間潰しにはちょうどいいか。その程度の作品ではある。

ガンコロリン

ガンコロリン

●国が滅びては元も子もないではないか」「それは違う。国が滅びても医療は残る。王族が滅びても、住民は困らない。だが、医療が壊れたら住民は大変な思いをする。だから政治と医療を分離しなければ、民が滅びてしまうんだ」(P73)
●公益のため高い理念で始めたことも、欲にまみれた連中がよってたかって利益構造に誘導してしまう。だからいつまで経っても、日本医師会は開業医の利益団体だと揶揄されてしまうのだ。(P110)
●そもそも日本医師会自由診療に異を唱えたのは貧しい市民のためだったが、霞が関とそれに尻尾を振る大メディアは、覇権国家・米国の忠犬として頭を撫でてもらうことが主たる目的だったから、医師会がTPPに反対しているのは既得権益を守るためだと報道させ、市民はそのデマゴギーは信じた。TPP参加を選択したのは行政と政府の二人三脚で、それを黙認したのは今、不利益を蒙っている国民自身だったわけだ。(P155)