とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

女子サッカー五輪アジア最終予選 日本対北朝鮮

 大会前にはこのゲームがリオ五輪出場の行方を決する最重要ゲームになると思っていた。初戦のオーストラリア戦の敗戦もゲーム内容はけっして悪くなく、ここから次第に調子を上げていけば最後は北朝鮮に勝利して五輪出場も可能になるという思いでいた。しかし2戦目の韓国に終了間際に先制しながら直後に追いつかれて引き分けたゲームが痛かった。続く中国戦は、疲労の蓄積などで集中力が落ちたところを失点し、絶望的な敗戦を喫した。新旧の世代交代ということが言われるが、中1日で続く5連戦というこれまで経験したことがないような大会方式にうまく適応できなかったことも五輪出場を逃した要因の一つではないかと思う。

 それでもやはり一矢は報いてほしい。選手たちは佐々木監督が指揮を取る最後のゲームという意識もあっただろうか。少なくとも相手選手への寄せの部分ではこれまでと違い、高い集中力を感じた。しかし雨の影響でボールが転がらない。北朝鮮はピッチ条件に関係なく前線にボールを放り込んでくる。CB岩清水やCB熊谷、CH阪口が何とか競ってボールをはね返す。阪口の守備意識が高く、いいポジショニングで北朝鮮の攻撃を何度もカットしていた。

 またGK山根もいいプレーを見せていた。山根は長身だが、反応は福元らに比べれば劣るし、判断力の点でも思い切ったプレーがなかなかできない。これまでもこうした欠点を突かれて失点することも多かった。だがこのゲームでは積極的な飛び出しを見せて、北朝鮮のロングボールを封じていた。少しは彼女も目覚め、成長しただろうか。ゲーム後泣いていた。性格的にはすごく優しい彼女らしいが、それでもゲームではこの日のような集中したプレーを続けてほしい。

 もう一人、この大会で覚醒したと感じるのが中島だ。このゲームでも前半はピッチ状態が悪い右SHで積極的に動いていた。右SBに入った近賀の調子がいま一つな中、北朝鮮の左サイドからの攻撃をよく防いでいた。

 それにしてもゴールが遠い。13分、FW横山が中盤を右にドリブルで進み、右SB近賀の落としからCH宮間が縦パス。CH阪口が走りこんだが、GKホンミョンヒが先にボールに触りクリアされた。その後は北朝鮮ペースでゲームが進む。17分、右SBキムウンジュのフィードに左SB有吉が足を滑らせ、FWラウンシムが抜け出してクロスを入れる。GK山根がよく足を伸ばしてコースを変え、右SH中島がクリアした。25分、左SHリエギョンのドリブルからクロスにFWラウンシムがシュート。これはDFがブロックした。

 日本は30分、CH阪口の縦パスをFW大儀見が落とし、右SH中島がミドルシュート。これで得たCKのクリアを左SB有吉が縦に入れて、FW大儀見がヘディングシュート。しかし惜しくもポストの左に外れた。大儀見は澤の10番を引き継いだ重責感があったか。単に北朝鮮のマークが厳しかったということもあるのだろうが、この大会、彼女らしい粘り強いシュートはあまり見られなかった。終盤34分にはFW横山のミドルシュート。45分には横山の落としからCH宮間がミドルシュート。FW横山は前線から降りてきてはドリブルでゲームを作り、また積極的にミドルシュートを放つなど、彼女らしいプレーを見せていた。

 後半開始から鮫島を下げて右SH岩渕を投入した。中島をボランチに下げて、宮間を左SHに上げる。すると次第になでしこらしいパスが通るようになる。2分、左SH宮間のクロスから右SB近賀がミドルシュート。3分、CH中島がドリブルで左サイドを上がり、クロスに右FW岩渕が飛び込む。しかしGKホンミョンヒがセーブした。

 一方、パスミスが目立つのも今大会でのなでしこ。7分には右SB近賀の横パスをCHキムユンミにさらわれ、ドリブルからFWラウンシムがシュートを放つ。10分には右SHキムスギョンのドリブルを止めきれず、FWウィジョンシムにミドルシュートを打たれる。日本も11分、右SH岩渕のドリブルから左に展開し、左SH宮間のクロスにFW岩渕が飛び込むがわずかに届かない。逆に北朝鮮も15分、右SBキムウンヒャンのCKからCBキムウナがヘディングでつなぎ、FWラウンシムがヘディングシュート。しかしこれはGK山根がナイスセーブを見せる。

 19分、21分とFW横山が積極的にミドルシュートを放っていくと、ピッチも次第に乾いてきた。26分、右SB近賀のクロスにゴール前でFW大儀見がDFと競るがうまくシュートは打てない。31分、左SH宮間が戻したボールを左SB有吉がクロスを入れると、CH中島がヘディングシュート。しかしわずかにポストの右。日本が攻め続ける。そして35分、左SB有吉の縦パスをFW横山が落とし、左SH宮間のクロスに右SH岩渕が飛び込む。ヘディングシュート。これが決まり、ようやく日本が先制点を挙げた。

 しかしその後はDFラインが下がり、北朝鮮の反撃を浴びる。37分、キムウンヒャンのCKからCBキムウナがヘディングでつなぎ、FWラウンシムがヘディングシュート。今度はGK山根がいないところへ飛んだが、宮間がライン上にいてヘディングではね返す。39分にはCHキムウンジュのミドルシュート。さらに42分、FWラウンシムの落としから右SHキムスギョンがミドルシュートを放つ。アディショナルタイム2分、CKからCHキムユンミがヘディングシュート。しかしわずかにポスト左に外れていった。最後は危ない場面が続いたが、最後まで気持ちと集中力を切らさずに守りきった。1-0。日本が勝利し、佐々木監督のラストゲームを飾った。

 これから誰がどういうチーム作りを進めていくのだろう。若手との新旧交代が言われたが、では今大会に出場した宮間や近賀、鮫島らを凌ぐ選手がどれだけいるかと言えば、まだまだ心許ない。個人的には猶本や田中美南などすぐにも戦力に加えたい選手がいる一方で、守備的選手の層は必ずしも厚くはない。今回観戦したオーストラリアも北朝鮮も、日本は体格面ではだいぶ劣り、技術面でもそれを補って余りあるパフォーマンスを発揮できたわけではない。なでしこのサッカーが広く世界に知られ、今までと同じサッカーではもうかつてのようには対抗できないようになってきた。まずは誰が代表監督を務めるのだろう。素材は多く揃ってきたと思うので、それをうまく束ねて勝利をつなげる体制の整備が求められる。