「大人のための数学 第4巻」は、「広い世界へ向けて―解析学の展開」である。第2巻の「変化する世界をとらえる」では微積分の意味について考えたが、それをさらに押し進め、複素数関数とフーリエ展開に至る。全体は、前者を扱う第一部と後者を扱う第二部で構成されている。
実数の関数に対して微分を繰り返し得られる高階導関数の概念から、指数関数や三角関数も巾級数の形で表すことができることを示す。さらに巾級数で表される関数を複素数に適用し、複素数関数を導く。ところが複素数関数は今までの関数では認識できない不思議な世界であった。さらにその複素数関数を微分した正則関数の理論から、さらに新たな世界が展開するが、さすがにそのあたりで私の理解もかなり怪しくなる。複素数、恐るべし。
一方、第二部で扱うフーリエ級数は、全ての関数をcos nx、sin nxの級数の形で表現する。これにより自然界のさまざまな変化はフーリエ級数の形で表現できるようになる。さらに積分の視点でフーリエ級数を展開していくことにより、無限次元空間への展開を可能とする。これについては第7巻でのお楽しみ。果たして私はそこまで行きつけるのだろうか。
本巻の要に現れるのが、オイラーの公式である。「e^ix=cos x+i sin x」
さらにこれは「e^πi+1=0」と表すことができる。「博士の愛した公式」でも絶賛されていた、「宝石」かつ「数学においてもっとも特筆すべき公式」である。
- 作者: 志賀浩二
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2008/06/04
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●私たちが毎日目にしている万物が流転する世界像を、どのように分析し、解析してみても、そこに虚数が現れるということはない。しかい原子の内部構造を対象とする物理学の分野-量子力学-では、その理論構成のなかに虚数が入ってくる。・・・なぜ原子核や電子の世界を数学を用いて解明していこうとすると、虚数が現れるのか、私にはよくわからないことである。あるいはそこに数学と実在世界との予定調和とでもいうべきものを見ることができるのかもしれない。(P72)
●微分は’より深く’、積分は’より広く’展開する場所を見出した。ここには、カントルの「数学は自由である」という言葉の意味するものが、はっきりと開示されているようにもみえる。(P180)